4円パチンコ市場の低迷要因と回復への道筋 - DK-SIS白書2023年版分析

2023.07.25 / セミナー

このところ、4円パチンコの業績低迷がにわかに騒がしくなってきている。その兆候はどの時点で発生していたのだろうか。7月19日にダイコク電機が開催した「DK-SIS白書2023年版(2022年データ)刊行記者発表会」で語られた内容から探っていく。


4円パチンコはどれほど凋落しているのか?

「DK-SIS白書2023年版」が発表された。この白書は、2022年のデータを1冊の本に凝縮したもので、今回の記者発表会ではその抜粋資料が説明された。今、パチンコ業界の内側で何が起きているのか、理解を進めるためにも、まずはDK-SIS白書がどういうものなのかを説明していく。 

まずはDK-SISが保有するデータの規模について。DK-SIS白書2023年版(2022年データ)は、パチンコ・パチスロ合わせて約141万台分のデータを収録しており、シェア率はパチンコ業界全体の39.7%となる。 

高いシェア率を元にダイコク電機が算出した2022年の市場規模14.6兆円となった。2021年に比べると、パチンコは総売上を増加させた一方で、パチスロは低下した。5号機が健在だった2021年と2022年2月までは、コロナ禍の打撃を受けたものの、パチスロはパチンコに比肩する売上規模を誇っていたが、6号機へ完全移行となった2022年はもろにその影響を受け大きく売上規模を落としている。その一方で、パチンコは展開の早く出玉性能が高いハイミドル機が市場を牽引して売上をわずかに拡大させた。

2022年までは、パチンコがパチスロの負担を背負いながら市場を支えてきたが、それは過去の話であり現在は「パチンコ低迷、パチスロ好調」という様相になっている。

現在のパチンコ低迷を語る上で市場全体の遊技機購入費と遊技機利益は重要だ。表5行目の総販売台数を見ると、2021年が171万台だったのに対し、2022年は175万台に増加している。これは新規則機の導入により旧規則機を撤去、ホールが新台を導入しなければならない状況になり、結果として販売台数が増加した。

しかし重要なのは4万台多く売れたという数字ではない。パチンコ業界全体の店舗数でいえば2021年から2022年の1年間で793店舗、市場全体のおよそ9.3%が倒産、廃業、閉店といった形で姿を消したのである。

つまり「お店は減ったが、販売台数は増えた」というねじれが起きているのだ。さらに1台当たりの遊技機価格も物価高騰の影響もあり1万3000円ほど高くなっている。

 

パチンコとパチスロを比較して見てみる

上記資料では、月別でパチンコ業績を掲載している。アウトは対前年(2021年と2022年の対比)で見ると13370から13990となり620個プラスとなり、売り上げは1669円プラス、粗利も268円プラスとなった。この数字だけを見るとパチンコが良くなっているように見える。資料にはないが、2020年と2021年との対比でも数字は上向いており、実は2年連続でアウト、売上、粗利が上がっていたのだ。

しかし、月別にアウトの対前年を見ると、1月から5月まではおおむね+1000個程度で推移しているが、6月以降の下期に関しては伸び率が低下。ちょうど2022年6月頃からパチスロ6.5号機がリリースされ始め、パチスロの人気が高まってきたのだ。 

次は2018年から2022年の4円パチンコの業績推移だ。表の赤枠部分で、アウトも粗利も前年よりも増えているが、遊技時間粗利は80円上がっている。遊技時間粗利とは1時間あたりの1台の利益を意味する。これが高いほど、ファンにとっては苦しい環境となっていく。

6号機初期に射幸性が低くなりすぎたため、パチスロの業績が悪化。パチスロの負担を背負わせるかのように、必要以上に4円パチンコの遊技時間粗利を上げたことが原因と推測される。

この表でチェックしておくべきなのが、コロナ前の2019年の粗利(3,202)だ。ホール関係者はよく、「稼働がコロナ前に戻らない」という話はするが、業界一のビッグデータであるDK-SISでは、4円パチンコはもうすでにコロナ前以上の粗利をとっているとを表しているのだ。

参考までに2023年1月から6月のデータも欄外に挿入されているが、アウトは大きく下がっているものの、粗利は同等。パチンコの稼働が回復しないのはここに尽きる。

パチンコ業界は上期と下期で比べた場合に、下期の方が悪くなる傾向がある。2023年上半期の時点でこの数値であれば「さらに凋落する結果が確実に出てくる」とダイコク電機は予測する。

続いてパチスロの業績を確認しよう。2022年は完全6号機時代となり、アウト、売上、粗利は軒並み2021年を下回った。6月、7月でようやく良い6.5号機が出そろい始め、11月以降は高射幸性遊技機も出たことによって、業績が回復トレンドに向かい始めていく。ちなみに、パチスロの粗利が2000円を下回ったのはDK-SIS史上では初めてのことであるという。

2018年から2022年にかけての20円パチスロ業績推移で、射幸性が高かった5号機が終焉を迎え、6号機が増えていくにつれ、2019年から遊技時間売上が下がっていることだ。面白いのはそれに伴って遊技時間粗利も下がっていること。

5号機に比べて6号機は、ファンから人気のないものとして見られていた。この事実に対して、ホールがとった選択は、薄利で甘くしてでも稼働をさせたいというものであった。パチンコは人気があるから粗利を取り、パチスロは人気がないから薄利にする。これはこれでセオリーかもしれないが、パチンコの人気が下がっている今もなお、パチンコの粗利は高く推移している。 

その状況を如実に表しているのが上記のグラフである。2000年から2022年の22年間での稼働時間と時間粗利の年間推移である。

縦の棒グラフが稼働時間を表し、折れ線グラフが時間粗利の推移を表している。パチンコもパチスロも2000年から比べると大きく稼働時間が低下している。20円パチスロの時間粗利は22年間で大きな変化はないが、一方で2006年頃から4円パチンコの時間粗利は上昇の一途を辿っている。

 

パチンコ業界は現在、多くの課題に直面しているが、パチンコの業績が回復するには少なくとも時間粗利の上昇に歯止めをかけなくてはならない。適切な遊技機の選定や営業戦略の見直しもさることながら、高射幸性機種一辺倒になってしまったメーカーの機種販売のあり方にも、言及する必要がある。「パチンコ業績の柱となるのはハイミドルタイプであることは間違いないが、極端な偏重と台数シェアが急拡大し、さらに遊技時間粗利が高騰し続けていることが、4円パチンコ市場が凋落した2つの要因である」とダイコク電機は結論づけた。顧客のニーズを満たす機種開発が求められる。

ダイコク電機, DK-SIS白書2023年版