岡野陽一のパチンコ人生訓 Vol.11「岡野陽一が井の中の蛙だった頃」

2022.05.03 / 連載

「借金芸人」岡野陽一が送るPiDEA新連載!
パチンコを打っていく中で岡野陽一がたどり着いた人生の境地を、月替わりの金言とともに語る。


今月の金言

岡野陽一が

井の中の蛙だった頃

 

:岡野陽一

岡野が井の中の蛙だった頃、言い換えれば調子に乗っていた頃といえば、23歳〜24歳くらいのパチプロ生活をしていたときです。消費者金融で借金を150万円こさえて「兄ちゃんこれ以上借りたら首吊らなあかんで」と言われてからパチスロに真剣に向き合うようにしました。

前日凹んだ台を絶対に6にするというすげー分かりやすい店を見つけたことで、月70万〜80万くらい安定して稼ぐことができ、それまであった借金はなくなり、金銭的にも困るようなことは一切ありませんでした。

1年くらい経つと勝つことが当たり前のようになってきて、私はもはやパチスロを打つマシーンになっていました。負けている人をバカにしていましたし、「初任給の倍以上もらえているぞ」とか「コンビニで値段を見ずになんでも買うことができる」といったチンケな優越感に浸っていたのでした。

そうすると、お金は儲かるけどなんかキモいな自分と思い始めるわけです(笑)。私は京都のパチプロ生活に終止符を打ち、次のステップ(福井の工場)へと歩みを進めることになりました。芸人になるための活動をする2年くらい前のお話です。


乗っていい調子と
乗ってはいけない調子がある

「調子に乗る」という言葉は難しくて、良い意味でも悪い意味でもありますよね。

それこそ私が本業とする芸能界、特にテレビに出ているような人たちは成功者ぞろいなわけです。語弊のないように書きますが嫌味とかではなく、芸能界は調子に乗っている人しかいないと思っています。調子に乗っていなかったらそもそも芸能界なんて入れないと思うんです。

芸人になる動機で一倍多いのってクラスで一番面白いから「もしかしたら俺って日本で一番面白いんじゃないか」と考えることなんです。女優さんにしてもそうです。「私可愛い。芸能界いったら絶対成功する」で入ってくる。これって、調子に乗っている人しか入ってこないってことではないでしょうか。

それが養成所とかの段階から、徐々に現実を知るというか、調子に乗るのをやめるんです。私も高校くらいから芸人になりたいと思っていて、26歳くらいに養成所に入ったのですが、それまでは何でもできると思っていました。でも、意外と始めてみると何にもできませんでした。

以前組んでいたコンビでは、6年目くらいでキングオブコントの決勝まで進めました。その辺までは「俺たちのネタは面白いんだ」という部分の調子乗りはあって、それこそ毎日ネタづくりに励んでいました。結局はそういったショーレースに出続ける限りは調子に乗れるのですが、ある時気付きます。「どうやらテレビってネタだけでは食えねんだな」と。

今にして思えばネタづくりは芸の基礎になっていたのかもしれません。逆に今は、自堕落な生活をしていたら、ぽっとクズブームが沸いただけみたいな運だと思っています。それでも私はもう少しクズ界にいると思います。かわいそうじゃないですか、みんなクズを卒業しちゃったら。クズ業界にも恩義がありますしね。

少し話が脱線しました。調子に乗ることは必要ですが、乗ってはいけない調子もあります。パチンコで勝つということもパチンコ屋さんが営業をしてくれているからだし、意外と1人でできることってないんですよね。スタッフさんとかテレビ局の人とか、感謝しないといけない。そこは忘れちゃダメです。「調子に乗れているのは、決して貴様だけの力ではないんだぞ」ということを自戒しながら日々過ごしております。

 

調子に乗ったまま死ねれば
それが一番幸せじゃない?

ところで、最近の頭の良い人たちはなんでもかんでも数値化するでしょう。芸人になることを人に話した時に、「やめとけ」という人は何人もいました。そりゃあそうです。芸で飯を食える芸人なんて、数値にすると0.何パーセントの世界だと思います。確率だけみると誰もやりませんよね。それでも調子に乗り続けて諦めなかった人たちがいつか売れていく世界です。

YouTubeとかでも「効率よく生きる方法」とか、そういうのをあげる頭のいい人がいるじゃないですか。たしかに賢い選択かもしれないけど、ああいうのを信じて小学生、中学生、高校生が調子に乗れなくなることが一番良くないと思いますけどね。

そもそも「井の中の蛙、大海を知らず」という言葉は悪い意味で捉えられがちですが、別に広い世界を知らないまま死んでいっても良くないでしょうか。私は大海を知る必要がまったくないというか、知ろうと思っちゃったこと自体が不幸だと思うのです。井の中の蛙でいれれば良かったのに、受ける必要のないショックを受けて調子に乗れなくなってしまうことの方が可哀想なことだと思うんですけどねぇ。

どっちかというと調子に乗って生きていた方がいい。特に子供って、自分の欲に忠実に生きていられるじゃないですか。たしかに調子に乗っていたなと後で気付けばよくって、なんなら調子に乗ったまま死んでもいいと思うんです。私の理想は目をつぶったまま死ぬことです。ずっと調子に乗ったまま「あー楽しかった」と死ねれば、それって幸せじゃないですか。

 

「調子に乗れているのは、
決して貴様だけの力ではないんだぞ」と

 

岡野陽一, 岡野陽一のパチンコ人生訓