「焦って業界を捨てぬが吉!」2.0 現役エージェントに聞いてみた、最新業界外転職事情

2022.01.13 / その他

ついに、旧規則機の完全撤去が目前に迫ってきた。これから業界は、文字通り「新時代」に突入することになる。一方で、この時代の変わり目を「一区切り」として、パチンコ業界を去る決断をする人も多くいるという。どうして、彼らは長年親しんだ業界を捨ててしまうのか?

今回の記事ではその背景にある「他業種からの甘い誘惑」を分析し、そして、「それでも『パチンコ業界に残る』べき理由」を、2000人以上のパチンコ業界人のキャリアプランをサポートし続けたシニアコンサルタント・大木祐司氏(パック・エックス)に伺っていく。

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活性化する採用市場の落とし穴

業界外転職が増えている背景には、そもそもさまざまな業種で求人が増加傾向にあることがあげられる。オミクロン株の猛威を除けばコロナ禍がひと段落したといえる今、企業は人材を確保する必要に迫られているのだ。とにかく人が欲しいため、求人広告の中には「未経験可」の文字も多く見られるようになっている。しかも、末端の従業員ではなく、管理職クラスの求人でも、である。パチンコ業界から離れる、という選択肢が頭の中でちらついている人にとっては、魅力的な環境だといえるだろう。

しかし、世の中は甘い話ばかりではない。チャンスと思って飛び込んだ新しい仕事が、求人に書かれた通りのものではないこともあるのだ。例えば、以下のようなケースである。

ケース1:

パチンコ業界大手チェーン店で管理職を務めている30代後半のKさん。自店舗の閉店が決まったことをきっかけに転職活動を始める。同地域のホール企業の話もあったが、最終的には人材派遣会社への「業界外転職」を決める。マネジメント経験があれば業界未経験でも可であったことと、「管理職」としての採用だったことが決断の大きな要因だった。

しかし、入社後数か月して、暗雲が立ち込めてくる。「イベント現場に人材を派遣する」のが仕事のはずなのだが、派遣スタッフも人手不足であり、無断欠勤などでしばしば欠員が生じる。クライアントを納得させるために、Kさん自ら穴埋めとして作業に入ることも増えていった。もちろん、その状態でもスタッフの管理業務はしないといけないため、現場から帰ってきた後、オフィスで夜遅くまで仕事をすることも……。

 

「人材マネジメント」や「施工管理」はパチンコ業界からの転身先として人気がある。管理職の求人が多くあるのに加え、パチンコホールで培ったノウハウを生かすことができるように見えるのがその理由だろう。しかし、募集が多くあるということは、なんらかの理由で「人が定着しない」ということでもありうる。

同様にパチンコ業界からの転身先として選択されるケースが目立つのが不動産や保険などの営業職だ。こちらも求人が比較的多いということと、「固定給+インセンティブ」という給与形態をとっていることが多いためパチンコホール時代の年収を維持することが可能、というのがアピールポイントである。しかし、もちろんインセンティブの額は成績に応じて決まるため、「こんなはずではなかった」と思うこともあるだろう。

採用市場が活発化するということは、人手不足解消を目的とした求人が増え、選考ハードルが下がる傾向にあるので他業種転職は実現しやすい。その反面、ミスマッチも起こりやすいというわけだ。その一方で、これまで身を置いてきた、酸いも甘いもよくわかっている「パチンコ業界内」での転職であれば、現実のギャップに悩む、という事態は避けやすい。


「パチンコ業界に残る」べき理由

では、転職をしてでも「パチンコ業界に残る」べき積極的な理由はあるのか? シニアコンサルタント・大木祐司氏は「誤解を恐れずにいえば『ありません』という回答になります。その人の年齢や目指すところ、置かれている状況や環境によって判断は変わってくるものです」と述べる一方で「しかし、あたり前のことですが『やりたいこと』より『できること』を選択した方が成功率は高まるものです」と指摘する。

「私どもでは、パチンコ業界未経験の方からのご応募も承っておりますが、その問い合わせは多くなってきています。また、いったん業界を離れたけれど、「やっぱり」と思い直してご連絡をいただくケースも同様に増えています。『他業種に転職をしたけど、やっぱりパチンコ業界に戻りたい』という方が、とても多いんですよ」

しかし「他業種を経験したあと、パチンコ業界へ再度転職」というケースだと、条件面で妥協が必要になる。例えば以下のようなケースである。

 

ケース2:

大手優良チェーンで働いていたBさん。年収が800万円ほどあったが、会社全体の業績は悪化、自店舗の撤退が決まったタイミングで早期退職を打診される。同じエリアで年収500万円のホール勤務の話がいくつかあった。しかし、希望年収を下げず、将来性も見込んで他業界へ転職した。だが、新天地では営業のノルマが厳しく、パチンコホールのほうが好待遇だったと思い直す。

二度目の転職では妥協ラインである年収500万の求人であっても、書類選考すらなかなか通らず、転職活動は行き詰ってしまう。

 

 

大木「業界内で転職する場合であっても『採用時の年収額が前職より上がる』ケースは稀です。しかし、例えば、コロナ禍によりボーナスが満額出ていない法人もございますが、そこから転職した先ではボーナスが出るため、その差を考えると総額では年収アップしたというケースはありました。近年、条件提示の多いパターンとしては、即戦力を期待しながらも過度な負荷とならぬように、生活基盤を考慮しつつ、ワンランク、ツーランク下のポジションや業務範囲からスタートし『新しい環境に馴染みながら本来の実力を発揮していただく』という内容です。前職の経験を生かし、一定期間を経て昇給、昇格を実現された方は多くいらっしゃいます」

一昔前は希望年収額を出す一方で、就任後に業績を残せなければ減給や降格処分など早期離職や風土悪化の要因にもなっていたという。今時代のパチンコ転職市場は企業(採用)、人材(転職)の双方がwin-winとなるように、『経験を生かし実力を発揮できる』ことを重要視した条件提示が増えているようだ。

Bさんのように他業種へ将来を期待して転職し、その後に業界復帰を希望する元業界経験者はコロナ禍以降ますます増えているというが、それだけ他業種も厳しい状況であるということが伺える。


メリットとデメリットを把握し、冷静に考えて転職を

大木「たしかに、他業種の求人は魅力的に見えるでしょうし、他業種への転職、チャレンジを否定したいわけではありません。しかし、他業種から業界復帰の相談を受けると『もっと早く相談して欲しかった』ということが本当に多いのです。具体的に申し上げると、ご自身の経験スキル理解や業種理解、適性理解が曖昧なまま、求人情報の視覚的に得られる内容だけで決めてしまい、メリットとデメリットを客観的に比較できておらず、いたずらに経歴を増やしてしまったというケースです。

業界外へ転職しようと考えているが不安がある、など、まずは相談だけでも私どもにいただければお力になれることがあるかもしれませんし、業界内での良縁を見つけるお手伝いも可能です」

新規則機時代を迎える業界。今こそ、あなたも新しいスタートを切るときかもしれない。


取材協力:大木祐司
株式会社パック・エックス シニアコンサルタント
15年間で2000人の相談に答えてきたキャリアコンサルタント。複数地域で展開する中堅ホールでの管理職経験も持つ。
https://www.pac-ex.com

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