キャリアアドバイザー大木が教える 「パチンコ業界的に転職を考えるなら"今年は"12月がベストな理由」

2021.12.15 / コラム

年明け1月末の大量入替を機に廃業を検討する企業も…

12月と1月。パチンコ業界だけではなく、一般的な傾向としてこの2か月は、転職活動には向かない時期だとされている。というのも、求職者も人間なので、年末年始の休みがあるこの時期には動きを控えがちになるし、それに応じて企業側も求人数を減らす傾向があるからだ。

特にパチンコ業界に話を限れば、年末年始は激しい商戦があるタイミングである。職を探すにしても求人を出すにしても「12月や1月はちょっと…」と尻込みをしてしまうのだろう。毎年この時期になると転職のペースが減るというのは、月の満ち欠けのようにつねに繰り返されてきた規則的なパターンなのである。

しかし「今年に限っては」転職市場は違う動きをする可能性が高いと見られている。普段は冷え込むはずの12月の転職市場に何が起こっているのか。この道15年、2000人以上のパチンコ業界人のキャリアプランをサポートし続けた株式会社パック・エックスの大木祐司さんに、今冬の転職市場に起きている「異変」について話を伺った。

 


 

 

――今年の12月、1月に転職市場が例年とは違った動きをするというのは、なぜですか?

大木:主な要因は、1月末にある遊技機の入れ替えです。これを区切りにして次の道を探し始めるという方がやっぱり多いですね。特にここ最近感じていることですが、長年1社で勤めてこられた方が転職を考えて動き出しています。お店がなくなってしまったり、続けたくても厳しい現状があったりと、辞めざるを得なくなったというケースが増えています。

これまでは基本的に「現職で悩みを抱えている」方から相談を受けることが多かったのですが、今は悩む時間もなく、切迫した状況から少しでも早く抜け出すため動き始める方など、動くしかなくなっているというのを肌で感じます。

それだけではなく、採用する企業側にも新しい動きが生まれています。最近、採用活動がすごく積極的なんです。採用背景や目的はさまざまですが、コロナ禍で抑えていた反動の影響が強そうです。これまでは先の方針が見通せないということで、不足しているポストや適正人員を割っても採用を控えていた企業が多くありました。しかし、コロナ感染症の急激な収束と社会経済活動の活発化を受け、年末年始以降の施策や方針に伴い、人材不足の企業がほぼ同時期に動き始めたということです。

ただ、その一方で、大量採用する法人はまだ少数派です。求める人材層は幅広いものの採用枠が多いという状況ではないという点に注意する必要があります。求人が増えたと言っても、どの法人も基本的には1人か2人決まれば充足するという状況です。いわば「早い者勝ち」という図式が強まっているというところでしょうね

  
――そうなると、年末の転職戦線はどういう風に推移していくでしょうか?

大木:今年に限っては先ほど話したように、市場が活発に動くと予想されています。年末の業務の忙しさといった例年の要因を打ち消して、さらに少し上乗せするというところでしょうね。ただ、僕はこの盛り上がりは一時的なものだと考えています。特に遊技機の納期などで不透明なところが出てくると、企業も先行きを警戒するムードに戻ってまた採用を止めるのではないでしょうか。

求職者サイドから言うと、今年の冬に転職を考えている人はできるだけ早く始めたほうがいいと思いますね。もちろん、年末年始は忙しいとか、年が明けてから考えたいとか、ボーナスの額が見たいとか、そういう考えは否定はしませんが(笑)。

早く始めたほうがいい理由は3つあります。1つ目はさっきもお話しましたが、今の求人状況が一時的なものだと考えられることです。2つ目は当然ですが単純に早く動き始めている方ほど、チャンスがたくさん回ってくるということですね。企業側もずるずると採用活動を続けるわけではありませんから、何名から書類が来た段階で受付をストップする、ということになります。「いま書類選考している人で終わりにします」というように、突然締め切られるケースは少なくありません。

特に私たちのようなエージェントを通じた採用活動はその傾向が強いですね。自社で求める人材層が集まらない場合や、人材不足を解決したい場合にご依頼をいただくのですが、この困っている状況を「早急に解決したい」あるいは「一定時期までに確保したい」といったケースがほとんどで、採決を早くする傾向にあります。時間的余裕はなく、締切はシビアになってくるのです。

3つ目は盲点になりがちですが、「同じ会社の方で、応募先が重なるケース」というのがあります。主任、店長クラスの年齢になって、ご自宅を購入したり、ご家庭の事情などでどうしてもこれまでと同じエリアで優先的に転職先を探したい、という要望になります。そこに閉店や事業縮小などで同じ法人から、同時期に転職者が出るという状況になると、「同じエリアで、同じ法人出身者が、同じ求人に応募する」ということが起こります。

企業にとって中途採用の目的の1つに、新しいナレッジ、新しいカルチャーを自社に取り入れたい、ということがありますので、同時期に同じ法人出身の方を何人も入れるよりは、いろいろな環境で経験している方を迎え入れたいということにつながります。要は、転職においては同法人の仲間が競合相手、ライバルとなる可能性が多分にあり「早く転職活動を始める」ということは、そういう競争に勝って「一枠」を手に入れやすくするということなのです。少なくとも「○○法人出身の方はすでに複数名採用しているからどうするか……」など、転職者ご本人の素養や経験スキルとまったく関係ない不本意な減点をされるリスクは減る、ということになります。

 


「自分なりに調べてみる」はあまり当てにならない!

  
――これまでと違った環境で、転職を希望する人たちには何が求められるのでしょうか?

大木:まずは情報収集です。ご自身には、どんな強みがあって、どんな実績をあげてきたのか。また、どんな法人が、どんな目的で、どんな人材を採用したいと考えているのか。

ただ、一口に情報収集とまとめてしまうのも落とし穴です。例えば、実際にご相談を受けているとこういうケースもあるんです。「自分なりに調べてみます」とおっしゃるのですが、一週間後にもう一度「どんな感じですか?」と聞いてみると何もしていない。時には「どう調べたらよいかわからない」ということも……。

情報収集といっても、「知人や友人に聞く」とか「関連業者さんに聞く」とか、我々のような「転職アドバイザーに聞く」など、方法はさまざまで、どれか1つにとらわれることもありません。情報は多ければ多いほど判断材料になります。ただ、「情報元の特性」や「ご自身と情報元の関係性」「情報元とリサーチしている企業との関係性」を正しく理解しておくこと、「客観的であるかどうか」は重要で、このようなことも踏まえて、仕入れた情報を精査することがポイントです。そして、精査した情報を元に「その企業から直接話を聞く」こと、すなわち、選考に進み面接で気になる点を確認する、雰囲気を感じ取ることで悔いのない選択につながっていくはずです。

あとは、何社もあるうち1社しか受けないといったケース。もちろん、ご本人のご事情やご希望にもよるのですが、1社だけで転職先が決まることは稀です。事前によく調べて、本命の1社を絞り込んでも、内定・採用とならないケースは多分にあります。希望とする企業の内定を狙っていくためには、転職活動を計画的、戦略的に行う必要があるわけですが、ポイントは「最初から選択肢を絞り込まずに幅(候補複数をあげておく)を持たせておくこと」と「本命の選考に進むタイミング」です。特に転職が初めての場合は「選考慣れ」しておくことも大切で、ご自身の課題を明確にし、修正していくことで可能性がぐっと広がります。


――12月・1月での転職を考えている業界人に向けて、ひとことメッセージをお願いします。

大木:手早く、手広く、ということを伝えたいですね。「12月だし、一山超えてからでいいか」と考えるのではなく、この瞬間動くとちょっと得かもしれないですよと。あとは、やはり転職することをネガティブにとらえてほしくないですね。「転職することは負けだ」と思って欲しくないです。逆を言うと、「辞める」と思えるくらいの気持ちがあればなんでもできると思います。綿密に情報収集したり、どこに行こうか考えたり、他のことにチャレンジすることを考える時間もあるわけですから。

転職には裏技というのはそうそうないです。前向きに考えて頑張る、というのが一番の王道で一番の近道なんじゃないでしょうか。すぐに転職をする気がなくてもまったく問題ありませんので、もし情報収集をしたいなら弊社を訪ねてみてください。

 

取材協力:大木祐司
株式会社パック・エックス シニアコンサルタント
15年間で2000人の相談に答えてきたキャリアコンサルタント。複数地域で展開する中堅ホールでの管理職経験も持つ。
https://www.pac-ex.com

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