知らないと損する確定申告のキホン②【FP王子の知っトクお金の秘密】

2020.03.25 / 連載

年金問題に消費増税。膨らみ続ける金融不安や悩みなど〝お金のアレコレ〟に人気ファイナンシャルプランナー高橋成壽が斬りこむ!

税金を知らないと損する
年末調整と確定申告の知識

【後編】

自営業だろうと会社勤めだろうとも毎年やってくるのが確定申告。会社員であれば自分で手続きを行うケースは少ないが、その代わりに年末調整という形で会社から申告書類を書かされることがほとんど。
会社から提出を求められて仕方なく記入している人が多い一方、所得税の還付や節税効果を期待して楽しく記入する人もいます。

その差は税金の知識があるかどうか。
あなたはどちらですか?

 

賢い資産形成につかえる所得控除


前回は、年末調整に含まれない3種類の控除についてお伝えしました。
人生設計をするうえでお金を効率的に準備することが必要ですが、税金の知識も必要です。今回は所得控除の中でも知っている方も多いであろう項目について解説しますので、正しく理解して活用できているかを確認するとよいでしょう。

 

●生命保険料控除

生命保険や共済に加入している方は多いので、聞いたことがあると思います。年末調整でも最も多く記入される控除枠の1つでしょう。

この生命保険料控除は対象となる保険に応じて実は3種類に分かれています。

  1. 生命保険料控除(遺族保障等)
  2. 介護医療保険料控除(介護保険、医療保障)
  3. 個人年金保険料控除(老後保障)

この中で生命保険を活用した積み立てを実施する場合に力を発揮するのが、生命保険料控除(遺族保障等)です。

例えば、終身保険や養老保険など貯蓄性のある死亡保険に加入して、学資や老後資金など将来のための積み立てを行っている人は多いでしょう。
もし保険に加入していないという人で、銀行での自動積み立てをやっている場合は一部を生命保険で積み立てた方が節税効果によりお金が増えやすい場合もあります。

また、掛け捨ての生命保険の保険料も生命保険料控除に該当します。

生命保険料控除の控除額は、保険料を年間8万円以上支払っている場合で一律4万円となります。

 

●個人年金保険料控除

生命保険料控除のうちの1つなのですが、あまり活用されていない所得控除です。
個人年金保険に加入し、所定の条件を満たすと一定の所得控除が活用できます。年末調整や確定申告の際、生命保険料控除の枠が空いているような場合は、加入を検討されてはいかがでしょうか。

個人年金保険は生命保険と異なり途中解約した場合の資金の目減りが抑えられるため、使い勝手が良いのが特徴です。

個人年金保険料控除の控除額は生命保険料控除と同様に、支払保険料が年間8万円以上の場合で一律4万円です。


●小規模企業共済等掛金控除(iDeCo控除)

まず、小規模企業共済等掛金控除とは個人事業主が事業を廃止した場合に退職金に代わる共済金を受けるために払い込んだ掛金などを対象とした控除を指します。その中で今注目のiDeCo(イデコ)、つまり個人型確定拠出年金に加入した場合につかえる控除があります。

勤務先によって控除額の上限が異なり、公務員は月額12,000円、会社員の場合は月額12,000円〜23,000円、専業主婦(夫)は月額23,000円、自営業は月額68,000円が上限となります。
一般的な会社員であれば一年間で約14万円、自営業となると約80万円もの所得控除が可能です。

ちなみに、iDeCoの最低投資額は5,000円から。まずは最低額からスタートするのもいいでしょう。

ただしこの所得控除を受ける上で注意すべき点があります。
例えば所得控除を最大限に受けた場合に、住宅ローン控除の効果が減少する場合などがあるのです。

住宅ローン控除は節税効果という意味では確かに所得控除と同じです。ですが、所得控除は税額計算の対象となる所得の金額は下げる一方、住宅ローン控除は算出された税金額を下げる税額控除にあたります。
計算の順序としては所得控除→税額算出→税額控除となります。つまり、所得控除を最大に受けたことで税金が減ったものの、住宅ローン控除の効果を受けられない金額まで減ってしまう可能性もあるということです。

またiDeCoについては途中解約ができませんので、しっかりと将来設計を考えたうえで無理のない金額で積立をすることをお勧めします。

 

いかがでしょうか。前編「いざというときの税金を減らすための仕組み」で紹介したものは控除の対象とならずに、使う機会がない方も多いかもしれません。しかし、知っておいた方が確実に得になることは間違いありません。
一方で、今回紹介した賢い資産形成につかえる所得控除たちは知らないと損をしますし、知っている人と知らない人では資産形成の効果も大きく変わってきます。

ファイナンシャルプランナーよりもお金に詳しい人はたくさんいます。しかし、実際にお金の知識を駆使して資産形成ができる専門家は多くはないのです。

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