100年安心って誰が言った?年金神話の真実②【FP王子の知っトクお金の秘密】

2020.01.29 / 連載

年金問題に消費増税。膨らみ続ける金融不安や悩みなど〝お金のアレコレ〟に人気ファイナンシャルプランナー高橋成壽が斬りこむ!

ハリボテの年金神話を作り上げる「数字のマジック」【後編】
定年退職がなくなっても老後資金貯められる自信ある?

世間を騒がせた「老後資金2,000万円問題」。先月の連載ではこの問題の解説と自分たちでできる準備についてお伝えしました。
「老後資金2,000万円問題」を自分の事として捉えるときに欠かせないのは、将来自分は年金をいくらもらえるのかという点です。そして、将来いくらもらえるのか?を考えるときに参考にすべき資料があります。それが5年ごとに発表される財政検証という仕組みとその結果です。

今回はその「財政検証」について、また将来に向け政府が検討する年金改革についてお届けします。

 

財政検証・最悪のシミュレーションはどうなっているの?


2019年の財政検証で経済成長が最悪パターンの見通しを知りたい方もいらっしゃると思うので解説いたします。

まず現在の平均は現役男子の手取り収入が35.7万円、夫婦の老齢基礎年金が13.0万円、夫の老齢厚生年金が9.0万円。現時点での所得代替率は61.7%となります。
これが最悪パターンの場合は、2043年において現役男子の手取り収入が39.3万円と微増。しかしながら夫婦の老齢基礎年金の合計は11.6万円、夫の老齢厚生年金額が8.0万円と下がり、所得代替率は50.0%となります。

その後2052年には現役男子の手取り収入が40.7万円、夫婦の老齢基礎年金の合計が11.1万円、夫の老齢厚生年金が7.6万円で所得代替率は46.1%と減少。以降も状況は悪化していき、所得代替率は36~38%程度になる見込みです。

年金は本当に「アテに出来ない」?自分の身は自分で守る時代

若者の多くから「年金はアテにしていない」と耳にすることがありますが、実際はかなりの確率で老後のアテになるのが年金です。しかし今の若者が老後を迎えるタイミングでは、自分たちで指摘した通り、老後のアテにできない程度の額しか年金を受け取ることができない可能性が高いでしょう。とはいえ手取りの4割は受け取れ、残りの足りない分は自分たちで上乗せすることを考える必要があります。

ただし政府も何もしていないわけではありません。
どんな手立てを考えているのでしょうか。2つあります。

1つは、年金保険料の支払い対象者を増やすこと。
(1)週20時間以上働くパートアルバイトを対象に、年収100万円となる場合に社保加入を義務付けるパターン
(2)学生や短期間労働者などを除く、週20時間以上労働者に適用を義務付けるパターン
(3)年収70万円をめどに全てのパートアルバイトに社会保険加入を義務付けるパターン
以上3パターンのどれかを採用し、保険料収入を増やすのです。どれくらい納付対象者が増えるかというと、(1)で125万人、(2)で325万人、(3)では1,050万人の計算です。納付人数が増えた結果として保険料収入が増えます。

もう1つは保険料の支払期間を延ばし、年金の受け取り開始時期を選べるようにすることです。
(1)国民年金の加入期間を5年延ばす
(2)厚生年金を75歳まで加入できるようにする
(3)年金受け取りは75歳開始を可能とする
こちらの施策では受け取るタイミングを遅らせつつ、年金保険料の支払期間を延ばすことで保険料収入を確保することができます。

このようにして、年金の財源となる保険料を支払う対象者を増やし、かつ保険料の支払い期間を延長することで、年金財源を安定化させる狙いがあるのです。

いかがでしょうか?皆さんは75歳まで働くことがほぼ確実になってくるのです。
それまでにしっかりと老後資金を貯めることができそうですか?
もし、この記事を読んで将来が恐ろしくなった人は、少額でも構いませんので将来に向かって積立投資を始めてください。自分の身は自分で守る時代です。


著者プロフィール

高橋成壽

慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、金融系のキャリアを経て2007年にFP事務所を設立。
超富裕層向けの資産保全サービスを提供する寿FPコンサルティング、富裕層向けの資産運用サービスを提供する寿アセットマネジメント、現役世代を応援するライフデザインセンターを経営。無料のライフプラン相談サイト「ライフプランの窓口」、無料のマイホーム相談サービス「住もうよ!マイホーム」、保険見直しサービスの「保険チョイス」を運営している。

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