ホール経営から撤退で浮き彫りになった事業用定期借地権の課題点

2021.08.09 / コラム
事業用定期借地権制度が施行されたのは平成4年(1992年)8月のことだった。フィーバーブームに乗り、この制度を使ってパチンコ業界でも多くの郊外店舗が乱立した。

定期借地権とは、目的や借地存続期間の制限等を満たせば、借地人にとって不利な以下の特約を有効とした借地契約をいい、
特約とは ① 契約の更新をしない ② 建物再築による期間の延長をしない ③ 法 13 条の規定による建物の買取りの請求をしないであり、これらを公正証書などの書面で契約することで成立する。

定期借地権制度は、地主に配慮して契約更新を前提としない制度となったが、地主が望むのであれば再契約を否定する法制度ではない点に留意する必要がある。

さらに、当時の時代背景と異なり、現在では更地価格が最も高い土地価格を意味するとは必ずしも限らない。

特に昨今の不動産価格の判断基準としては、収益性が重視される傾向にあることから、期間満了後も継続して借地関係を続けることが地主及び借地人双方にとって最良の選択であるならば、再契約を選択する方がむしろ自然な考え方である。

事業用定期借地権は法施行から20年以上が経過しており、期間満了を迎えた不動産や期間満了が近づいた不動産が多く存在する…。

地主にとって、事業用定期借地権で土地を貸すことは、長期に亘って不労収入が入ってくることが何よりの魅力だった。

あるホールが事業用定期借地の地主を集めて説明会を開いた。期間は満期を迎えていた。

パチンコ業界の昨今の厳しい状況に加えコロナ禍に見舞われたことで、「これ以上ホール経営を続けて行くことが困難である」と会社の現状を説明した。

地主はホールが閉店することを覚悟せざるを得なかった。

ということは、毎月の賃料収入が入ってこなくなる、ということを意味するものだった。地主とすれば再契約で延長を望んでいたのに、会場は重い空気に包まれた。

おもむろにオーナーは、「会社ごと同業者に売却することになりました」と発表すると地主の表情が一気に明るくなった。継続して賃料収入が入ってくることに安堵が広がった。

一難去ってまた一難。

現在のオーナーとの定借契約は一旦切れて、次のオーナーと再契約となるのだが、オーナーは定借契約を結ぶときに、地主に対して気前よく賃料の24カ月分の敷金を支払っていた。

つまり、出ていくので支払っていた敷金を地主はオーナーに返還しなければならない。郊外の大型店なので地主は何人もいた。貸している広さによって敷金も違うが、数千万円単位の敷金を返さなければならない。

現金がなければ、土地を担保に銀行から借りてでも返さなければならない。

これでホールが完全徹底で更地になれば、不労所得が入ってこなくなるだけでなく、敷金も返さなければならないが、M&Aで事業を継続するとなれば話は別だ。さすがに今度のオーナーは24カ月分の敷金を払うことはないが、差し引きで18カ月分を貸すことになっただけでも、地主は「ラッキー」と心の中で叫んだ。



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