売却を1年先延ばしにしたオーナーの真理

2021.08.04 / コラム
店舗は2店舗。大型店と中型店。オーナーは後継ぎはいるようでいない状態のため、赤字にならないうちに売却を考えた。

資産価値を評価してもらったところ、オーナーの思惑よりも2億円も低かった。この金額が妥当なのか、それとも騙されているのか判断が付かなかった。そこで腹を割って話ができる第三者に意見を求めた。

こうした話は極秘裏に行われる。

売却話が洩れれば、たちまち顧客の間に広がり、「あの店は倒産する」と変な噂が立ち、今いる客が逃げてしまう恐れもある。従って売却話は身内にも、従業員にもまだ話はしていなかった。

後継ぎはいるようでいない、と書いた。オーナーには30代の2人の息子がいるのだが、高校を卒業してからは、大学へ進学することもなかった。

一般企業に就職するでもなく、さらには家業を手伝うわけでもないままに、無駄に年だけを重ねてしまった。

これが後継ぎがいるようでいない、と書いた理由だった。

オーナーの育て方が悪かった、といえばそれまで。

第三者に相談した後日、息子に売却話を打ち明けた。

すると息子の顔色が変わった。

ホール経営を止めれば今までのように何不自由なく生活できることに危機感を覚えたようだ。

「表周りから、一から勉強するので店は売らないでくれ」と懇願した。

ここでオーナーの売却の決心が鈍り始める。

業界が30兆円産業を謳歌していた時代は、店を増やしても、増やしても客はどんどん来た。たいして経営の勉強をしなくてもやってけたが、今は経営のことから社員教育まで勉強しても大変な時代に、遊んで暮らしてきた2代目に経営をバトンタッチするのは無謀とも思える。

それでもオーナーは「息子が改心したので、ダメとは分かっているが、もう1年頑張ってみることにする」と売却はペンディングになった。

1年で結果が出るような甘いご時世でもない。1年先延ばしした程度で終わってしまいそうだ。

で、ホールも含めてどんな業種にも当て嵌まることだが、社員のやる気を奮い立たすことが業績アップにつながる。

そのためには、給料を上げることが社員のやる気を起こすことではない。給料が安くても残業が一切ないとか、有休100%消化とか、社員食堂が安くて美味しいので昼休みが待ち遠しいとか、福利厚生などで待遇を改善することで社員のモチベーションは上がって行く。

社員の満足度が低いとすぐに行き詰る。

表周りから勉強するよりも社員の満足度を高めることを勉強することをおススメする。

で、売却話は考えていただけなので、まだ買い手はついていない。

ただ、買い手候補があっての1年先延ばしは、資産価値を下げることにもなる。買い手がいるうちが華である。




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