ホールで働く人の数は、総務省の経済センサス活動調査で約22.9万人(2016年)という数字が公表されている。今から5年前の数字でホール軒数も相当減っている。
警察庁の発表では、2016年は10986軒だ。一方、一番新しい全日遊連発表の2021年4月末時点で7979店舗となっている。これには全日に加盟していないホールは含まれていないので、もう少し増えるが、就労人口は20万人を割っている。1店舗20人で単純計算すると16~17万人台が推計できる。
これだけの数が働いているとLGBT問題とも無縁ではない。
大手ホールに勤務する女性社員の心は男だった。
女性ということでカウンター業務などを経験した後、本社へ異動となったが、女性だからという女性社員研修や職務が辛くなって、上司に相談した。
それは会社全体へ自分がトランスジェンダーであることをカミングアウトすべきかどうかという悩みだった。
会社としては本人の不利益にならないように対応するようだが、かつて、トランスジェンダーの女性を取材したことがある。
小柄で短髪、いつもスーツを着ているが、「ひょっとして女性?」と思えたが、男性として生きていた。
会社もトランスジェンダーであることを承知の上で採用した。だから前出のケースのように悩むこともなく、ホール現場では主任としてバリバリと働いていた。
ホールで働くことについては「接客は自分の天職だと思っている。接客が得意なので、接客を通じて会社に貢献したい」という思いから、自らが志願して社内の接客トレーナー研修(全9回)を受講して、認定トレーナーとなった。
「負けたお客様に笑顔で帰っていただくには如何にすればいいか。それには日頃から感謝の気持ちを伝えることです。お客様がサンドに入れるおカネがわれわれの給料になっているわけです。だから、接客を通じて感謝の気持ちを伝えなければなりません」
パチンコは出玉が一番で、接客では稼働は上がらないと言われ続けている。しかし、接客によって店の雰囲気が変わると、という強い信念を持っていた。
「スタッフの気が利くので気分よく遊べるね、と言ってもらうことが大事。接客ができるホールは悪いお客様もスタッフもいなくなるので、入りやすい環境になります。それによって女性客が増えます」
特に新人に厳しく教え込むのはあいさつと礼儀。それはできて当たり前のことが、出来ていないと出だしからマイナスになるからだ。そこに妥協は一切ない。厳しさに耐えかねて辞めていくものも出てくる。
派遣スタッフが毎日主任から叱られた。この仕事は自分には向いていないと派遣会社に退職の話を進めていたが本人から「ここで自分を磨きたいのでいさせてください」と申し出があった。それからは見違えるように成長していった。
「誰かお父さん役のように叱る人がいないと仲間は育ちません。この会社を辞めてどこへ行っても通用するような人材を育てたい」
男性として生き生きと働いていた姿が印象的だった。