オークラHDは2017年5月に香港市場に上場して話題にもなったが、店舗数は17店舗で小が大を食う形になった。この件でオークラHDを取材した業界誌PiDEAでは、次のように報じている。
「今回の買収に関しては代表の山本個人がパラッツオの株式を取得したもので、会社(オークラ)としては直接の関係がありません。ですから弊社からは特に公表できるような情報がないのです」
パチンコ業界はコロナ禍とは関係なく、市場規模は遊技人口、店舗数、売り上げなどが年々減少していた。昨年はコロナ禍と全面禁煙が一緒くたに来たものだから、業績悪化は拍車をかけた。
そうした状況で新基準機との入れ替えで機械負担は余儀なくされている。
後継ぎがいないオーナーともなるとこれ以上ホール経営を続ける意欲は薄れるばかりで、もう暫くはM&Aは続くものと思われる。
M&A時代が到来することを予見して、6年前に宅建の資格を取得したAさんは、これまでに20案件ほどを取りまとめた実績がある。
「最大のポイントは銀行が損切りできるかどうかにかかっています。特にパチンコ業界に貸し付けてきた銀行は損切りしませんね。リスケで逃げている、という感じです。だから銀行関係者には損切りのできない案件は持ってこないで、と言っているぐらいです」
Aさんの役割は売り手を探すことも重要だが、買い手を探すことが主な仕事となる。
「ホール経営を止める側もプライドがありますから、買ってやるんだという態度はいただけません。売り手と買い手の本音を聞きながら、売買価格の落としどころを探していくのが私の役目です」
あるM&Aが成立した後のことだ。売却したオーナーはこれで完全にホール経営から去ることになった。
オーナーはガラケーを取り出すとAさんの目の前で、業界関係者の連絡先を消去し始めた。
「次はええ機械が出るからと何度もその口車に乗せられて機械を買い続けたワシもバカやった」とメーカーの連絡先を消去する時は憎しみが込められていた。ガラケーをへし折る勢いだった。
Aさんは思わずオーナーに叫んだ。
「設備関係は消さないでください! 後々のメンテのこともありますから」
メーカーの営業マンがこれほどオーナーから憎まれていることが浮き彫りになった。
従って、オーナーはメーカー営業マンに腹を割って相談することはなく、M&A案件を持ってくるのは本音が話せる設備関係や中古業者ばかりで、メーカー営業マンからは一件もないと言う。
