A子さんが九州の実家を離れ、東京の大学に進学したのが2020年春のことだった。都会でのキャンパスライフに胸膨らませながら上京したのに、コロナ禍の真っただ中で入学式は中止。講義は暫くするとオンラインで始まった。
去年は感染防止対策からキャンパス立ち入り禁止で、通学を味わうことすらなかった。もちろん、サークル活動で新しい友達を作ることもできず、孤独な生活を送る日々が続いた。
そんな彼女が去年の初夏、街中でトイレを借りたくて、ふらりと入ったのがお洒落なホールだった。生まれて初めて1人でホールに入ったのは、少しは都会の雰囲気に慣れたい気持ちもあった。トイレがデパート並みにきれいなことに驚いた。
トイレを使ったお礼にと初めてのパチンコを体験することにした。店内を見回すとお年寄りで賑わっているコーナーがあった。お年寄りが遊んでいるから大丈夫だろうと思い、おばあちゃんの横の空いていた台に座った。
1パチコーナーだった。
どうやって遊ぶのか分からない。隣のおばあちゃんに声を掛けてやり方を聞いた。
千円札を入れて、言われたように玉貸しのボタンを押すと、1回で200円分の玉が出てくることを知った。
千円使い切る前にビギナーズラックは訪れた。大当たりが何回も続き、最終的には4200発出た。
出玉をどうしていいか分からないので、再びおばあちゃんに訊いた。
「会員証を作って貯玉しなさい。そしたら、次来た時おカネを使わずに遊べるよ」
都会での孤独な生活からパチンコで一つの楽しさを見出した。
ビギナーズラックからホールに足を運ぶようになった。貯玉はそのうちなくなった。
パチンコを始めて1年…。トータルではもちろん負けているが、最高に出した記録が3万発。出玉は全部貯玉するので、換金はまだ1回もやったことがない。たまにお菓子や生活雑貨などの一般景品を交換することはある。
ホールに行く頻度は始めた頃に比べると落ち着いたが、それでも週1回はホールに足が向く。
「東京へ来て友達もできないので、孤独で寂しさに押しつぶされそうになったけど、パチンコに出会えて、気晴らしになっています」とA子さん。
トイレを借りてパチンコを始めるパターンは少数だが実際にあることを証明してくれた。