コロナ転職者を取材している週刊誌記者から続報が届いた。
その夫婦は九州のホールで15年ほど働いていた。子供がいないこともあって会社の社員寮生活だった。寮費などを差し引くと手取りは、2人併せて35万円だった。
これが多いのか、少ないのか。丸々残るのなら十分だが。
15年前よりも給料は下がっていた。理由は売り上げがガンガン下がっているから。景気の良い頃はミニボーナスが支給されることもあったが、それもない。
店長はオーナーの親族が担当していた。15年勤続は一番長かった。仕事は楽だったが、老後の人生設計が描けなくなった。
将来に不安を覚え、転職するために東京へ出た。コロナが始まる直前だった。で、夫婦2人で働けるところを探した結果、新たに始めた仕事が新聞配達だった。
寮費は1人5000円。給料はホール時代よりも倍近く増えた。自主的に新聞の拡張も始めたからだ。例えば1年契約を取ると3万円が支給された。
販売所には13人の従業員がいるが、奥さんの成績は群を抜いていた。販売所で働いている人はコミュニケーションを取るのが苦手な人が多いのか、拡販も苦手とする人が多いためだ。奥さんの方は、配達は止めて今は拡販1本でやっている。
働く前から分かってはいたことだが、新聞業界にも将来性はない。実際、働いてみて新聞を購読する人がどんどん減っているのが肌で感じられる。
販売所の収入源は折り込みチラシが大きな柱でもあるが、販売所の店主によると昔は毎週、毎週ホールのチラシが入っていたのに、今はほとんどなく、1カ月で1枚も入らない月も出てきている、という。
そこで、店主自らが得意先だったホールへ出向いて他紙に入れているのかを聞いたことがあった。
「パチンコをやる人が新聞を取っていなかったので、メールやLINEに替えた。一番効果があったのはDMだった」(ホール関係者)
で、この夫婦が新聞配達所に入ったかというと、新聞販売所の財形貯蓄制度に魅力を感じたからだ。
毎月給与天引きで1万5500円を2年間積み立てれば、満期額は100万円になる。1万5500円×24カ月=37万2000円が100万円になって戻ってくる。
何と約2.7倍だ。この仕組みは、本人の積立額に加えて勤務する新聞販売店と新聞社がそれぞれ負担して、この金額を実現している。他にも4年間200万円、500万円のプランなどがある。
夫婦はこれでおカネを貯めて、それを元手に移動販売の焼き鳥屋を目指している。旦那さんの方は、ホールで働く前は焼き鳥の串刺しをやっていた。1本100円の焼き鳥の原価は10~15円ということも分かっている。後はタレと肉の仕入れルートさえ押さえれば比較的簡単に開業できる。
「ホールはイジメのない業界でした。だから居心地も良くて、仕事も楽で働きやすかった」と振り返るが、今は独立開業の夢に向かって新聞配達で汗を流している。