25年間のパチンコ収支は▲3500万円

2021.07.09 / コラム
無人化で人を減らす業種の一つに高速道路の料金徴収がある。ETCの普及率は今や93%台に達していて有人のゲート数も激減している。会社としても人件費の削減のために無人化を推し進めている。

長年高速道路の料金所で働いていたAさんは、将来のことを考えて再就職したのが関東のあるホールだった。

で、1月から時給1000円で店内清掃の仕事を始めた。

「料金所は深夜勤務もあったが、深夜はほとんど車が通ることもなく暇で、暇で仕方なかった。パチンコはこれまでやったこともなく、騒音がうるさいけど、毎日体を動かしているので体重が5キロも減った。料金所と違って動き回って変化があるので1日が経つのが早い。料金所の仕事に比べたら本当に楽しい」(Aさん)と店内清掃の仕事にも満足している。

店内清掃の仕事を始めて気づいたのが、ホールスタッフよりもAさんに声を掛けてくることだった。年配者にすれば同世代のAさんの方が声も掛けやすいのかも知れない。

「今日は○○円負けた」というようなことをきっかけに、特に親しくなったのが70過ぎのおばあちゃんだ。

ほぼ毎日ホールにやってくるおばあちゃんは、4円専門で低貸しコーナーは見向きもしない。で、毎日の収支を大学ノートに書き溜めている、という。

日々の収支はつけているものの、トータルのプラスマイナスまではつけていなかった。そこでこれまでの収支をAさんに計算して欲しい、と持参したのが12冊に及ぶ大学ノートだった。

それは25年分だった。

ノートには小さな字がビッシリと埋め尽くされていた。
何月何日、どの台でいくら突っ込んで、いくら負けた、勝ったが細かく書かれていた。

気の遠くなるような分量だったが、トータルの収支を出してみた。

その結果、25年間でのトータルの収支は-3100万円だった。

その事実をおばあちゃんに伝えると、一番驚いたのは本人だった。

「トータルで500万円ぐらいの負けかなと思っていた」

パチンコファンは得てして勝った時の記憶ははっきりしているのに、負けたことはすぐに忘れてしまう。そうやって負けたことは忘れるから、負けてもパチンコを続けることができる。

で、3100万円の負けを知ると、あれだけ毎日のように通っていたおばあちゃんが翌日から姿を見せなくなった。

常連客の間では「おばあちゃんの姿が見えないけど、最近病気でもかかったのかな?」と話題になり始めたが、おばあちゃんが来店しなくなった本当の理由を知っているのはAさんだけだ。

おばあちゃんが月ごとの収支計算までしていたら、どのぐらいの期間で我に返ったかが気になるところだ。








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