ホールオーナーが後継ぎのいない葬儀会社を買収したのは、コロナ禍が始まる前年の2019年のことだった。葬儀業は粗利が高いので利回りもいいということから門外漢の業種にチャレンジした。
といっても、投資活動の一環で、運営は番頭格に全て任せている状態だ。
葬儀業は始まったばかりだが、昨年の業績はコロナ禍に直面して惨たんたるものだった。売り上げはコロナ前の1/3に激減した。理由はお年寄りの葬儀が減ったことにある。コロナ禍で外に出歩かなくなったこともあり、肺炎やインフルエンザで亡くなる人がデータ的にも減った。
加えて、コロナ禍で三密を避けるためにも一気に家族葬が増えたことが要因だった。会葬御礼の商品が在庫の山となっている。もっとも腐るものではないので、在庫を抱えても心配はいらない。
ホールオーナーは、お年寄りが外に出歩かなくなって、亡くなる人が減った、ということとパチンコ業界を重ね合わせた。
2月の年金支給日も1パチの稼働が上がらなかった。外に出歩かなくなった影響はコロナ禍ではずっと続いている。
葬儀会社の責任者は葬儀とレジャーの違いをオーナーにこうアドバイスした。
「三密を避けるためにも200~300人も集まるような葬儀は、今年1年は望めないと思います。親族は別として葬儀に行きたい人は本音でいえばそんなにいない。関係が薄ければ付き合いで列席するわけです。その点、レジャーや遊びは自ら行動したいので、パチンコへ行きたくなる方法を考えたらいいと思います」
ホールのお年寄りの中には、持参した消毒液で自らがハンドル周りを拭いている光景を見かけることがあった。
そこで、思いついたのがパチンコに健康をくっつける戦略だ。
ホールへ来ることが健康にもつながる。
健康管理のために血圧測定器を置いているホールは珍しくないが、健康器具を充実させることも一つの方法だと思った。
景品には健康食品とかサプリを充実させる。
その一環で思いついたのが早朝のラジオ体操だ。街の公園などにお年寄りが集まってラジオ体操をやっているが、これをホールの駐車場で行う。子供の夏休みのラジオ体操のようにスタンプカードを作り、1カ月休まずに参加した人には皆勤賞のようなものを渡す。
これはホール営業とは関係ないので風営法で縛れることもない。
健康パチンコと言えば、2012年1月19日と2018年9月9日のエントリーでも取り上げている。
去年から禁煙化になって環境は整いつつあるから、そろそろ業界でも健康パチンコを本腰で取り組む時期だろう。