ホール企業が直面するリストラ問題

2021.06.23 / コラム
リストラニュースは慣れっこになっているが、パナソニックが先ごろ発表したリストラには驚かされた。

既存の早期退職制度を拡充させた「特別キャリアデザインプログラム」を期間限定で導入し、割増退職金支給の上限額は4000万円に設定されており、破格の大盤振る舞いである。

で、メインターゲットになっているのが、バブル入社組の50代以上。社内では成果の乏しいロートル社員の滞留が戦力人材の活躍を阻むことが問題視されていた。

パナソニックと言えば松下幸之助の「事業は人なり」をモットーに、何より人材育成と雇用維持を重視したが、それも過去の遺産となった。

パチンコ業界では、メーカーでは勝ち組だったセガサミーが遊技機部門を対象にしたリストラを敢行したように、いずれホールにもリストラが行われる時代がすぐそこまで来ているようだ。

「大手ホールも業績が落ちこんでいて、コロナ禍でさらにコスト削減が叫ばれるようになりました。ホールはリストラで人件費に手をつけるところはありませんが、いずれ大卒で50歳になっても表周りをしているケースも出てきそうです」と話すのはシンクタンク関係者。

ホール企業には退職金制度がないケースが意外なほど多い。それは定年まで勤めあげる慣習もなかった名残だが、新卒採用をするようになって福利厚生を整えるようになった。

今やホール企業へ新卒で入社した人たちは50代に達している。

「昔は週休1日だったホールも、今は週休2日は当たり前の時代になったように、業界の地位向上、イメージアップのために福利厚生は充実させてきました。ホワイト企業になったことで居心地が良すぎて、なかなか辞めないので上が詰まっていて、下が育たない現象が起きてきているホール企業もあります。会社としては辞めてもらいたい人が辞めずに、辞めて欲しくない優秀な人材は、辞めていく。元々新陳代謝が激しいのがホールだったのに、福利厚生が良くなって新陳代謝が悪くなった。新卒を大量に採ることを議論した結果、控えるところも出てきています」(同)

新卒を採用するのは優秀な人材を育て、会社を成長させる狙いがあった。新卒1期生が50代になったホール企業が直面するのが、パナソニックのようなケースだ。

「事業は人なり」の松下幸之助の考えをパナソニックが見切ったのは寂しい限りだ。これからは実力主義でIT企業の様に実力さえあれば20代でも役員になれるケースもあるが、日本の風土には合わない。そんなことを言っているからGAFAのアメリカから大きく引き離されるのだろうが。






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