メーカーは市場調査会社の業界予測データを購入して、将来に備えている。
で、メーカーが気にしているのは10年後、20年後の市場規模だ。最新のデータによると、10年後のホール軒数は5400軒で、20年後は3800店舗だった。設置台数に関しては現状を100とすれば、10年後は60%、20年後は50%だった。
当たるも八卦当たらぬも八卦だが、一つの目安だろう。
市場規模が縮小すれば、上場メーカーは株価を維持するだけでも大変なことになる。となると遊技機専業では生き残れないので、平和がゴルフ場を経営したり、セガサミーは韓国のパラダイスシティーで学んだノウハウを基に、日本でのIRカジノを目指す。
オーイズミは居酒屋チェーンを運営しているが、昨年は蒟蒻ゼリーの下仁田物産を子会社化して食品製造の分野にも進出した。
上場メーカーではないが山佐は航空機172機、船舶16隻を所有し、大手航空会社や船舶会社にリースしている。コロナ禍で航空会社は青息吐息だが、航空機は毎年1000億円も投資していたというから凄い。飛行機を担保におカネを借りられるので資金調達は比較的容易のようだ。ダイナムも2019年から航空機リースに進出、現在は3機所有している。
メーカーもホールも市場が縮小するとなれば、色々な事業に手を出していかなければ、生き残っていけない、ということだ。
市場規模の話に戻ると、10年後のホール軒数が5400軒とすれば、今後のホールの動きで注目されるのがM&Aとグループ化である。
たとえば、ダイナムは1000店舗構想を掲げているように、5400軒の規模で1000店舗となるとメーカーに対しては相当強い立場になれることは容易に想像がつく。
M&Aとは事業拡大のための「時間」を買うものでもある。一から事業を起こしていたのでは何十年も時間がかかる。それをおカネで解決するのがM&Aでもある。M&Aによって、ダイナム、マルハンに対抗する一大勢力が登場するかも知れない。
オーイズミは下仁田物産を子会社化した理由をグリーンベルトで次のように述べている。
「グループ全体として年商500億円を一つの目標にしてきた。その中でこれから新しい事業をゼロから育てていくには時間もかかり、M&Aを検討していたところ、食品事業として『蒟蒻ゼリー』を製造するこの会社が候補にあがった。こんにゃくをベースにいろいろな展開ができると考えた」
ホールの巨大グループができることで考えられるのがこんな妄想だ。
「将来はホールが版権を買って、メーカーに作ってもらう時代が来るかも知れません。例えば、鬼滅の刃の版権が取れたとして、それをメーカーにPB機として作ってもらい、グループホールにしか納入しないとなると、他店との差別化にもなります」(業界事情通)
市場が縮小することでホールのグループ化が進めば、メーカーとホールの立場が逆転することも起きる?