無情の抽選トラブルを乗り越えて〜P店店長の一番長い日〜

2021年4月某日、横浜市のホール「シーサイドプラザ」の前には期待に満ち溢れた300人以上の遊技客が並びを作っていた。ホールの営業を任せられるようになってから5年、営業努力を積み重ね、少しずつ稼働を伸ばしてきた同店店長にとっては、この上なく嬉しい光景だったに違いない。しかし、そんな晴れの日にまさかの抽選トラブルが……。シーサイドプラザ店長が、パチンコホール店長として過ごした一番長い1日のことを振り返ってくれた。

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神奈川県横浜市金沢区。八景島シーパラダイスで有名な海沿いのこの地区に「シーサイドプラザ」はある。多くの商業施設が入居するショッピングセンター内部という珍しい場所で、34年の間、営業を続けているホールだ。店長が営業を任されるようになったのが5年前のこと。パチンコ・パチスロ計308台と大規模な店ではなく、目立った集客手段をとることは難しい。経営者の理解もあり、良い営業ができているという手応えもあっただけに、「打ちに来てくれれば分かるのに」と悔しい思いをすることも多かった。

それでも徐々に稼働は上向きになり、初めは2〜30名だった朝の並びも、気付けば7〜80名に伸びていた。そして2021年冬には、影響力のある配信者に「優良店」として紹介された。「その後は、会員カードの入会が増えたり、今までとは違う層のお客さまの姿が見えたりと、変化は感じていました」と店長。そんな中で迎えたのが4月の集客日だった。

「足りなくなるかもしれないと思って、当日の朝は早く来て、抽選順をお伝えする仮順番券を手書きで作っていました。でも270番目まで作ったところで、『何やってるんだろう俺、今まで100人並んだこともないのに、こんなに来るわけないじゃん』と思ってぐしゃぐしゃにして捨てちゃったんですよ」

その日、シーサイドプラザの前には330人の遊技客が期待に胸を膨らませて列をつくっていた。

 

 

抽選システムは上限100人　台を回って1人ひとり謝った

「抽選が始まると、出てくるのは1ケタか2ケタの良番ばかり。しばらくしてなにかおかしいと気づいて、血の気が引きました」

シーサイドプラザの抽選システムは機械に強い前任の店長が自作したものであり、システムが出力できる乱数が99までに限られていたのだ。並びが100人を超えなかったこれまではそれでも問題なく動作していたが、100人を超える抽選には対応できない。結局、100人目以降は並び順入場をお願いするという対応となった。しかしそれには、当然不満を感じる遊技客も出てくる。その日は台を一台一台回って謝罪をしたという。

「お店はほぼ満台という状況でしたが、稼働のことなんて考えられず、ミスをしてしまったことの悔しさ、お客様に対する申し訳なさでいっぱいでした。朝5時から深夜までお店にいましたが、疲れたと感じる暇もなく、『早く1日が終わらないかな』と燃え尽きたような気持ちでした。『自殺しようかな』とも思ったほどです」

 

客からの差し入れもあった　P店長の一番長い1日

そんな店長の心の支えになったのが、周囲の暖かい支援だ。社長はミスを責めるのではなく、「こんなにお客さんが入るなんて、すごいじゃない」と店長には労いの言葉をかけ、遊技客には一緒になって謝罪してくれた。早番が終わったスタッフは「仕事が終わったら飲んでください」とビールを手に戻って来てくれたという。「大変だったね」とエナジードリンクやお菓子などを差し入れてくれたお客さんもいたという。

「『抽選を受けられなかった人に何かできないか』と社長は親身になって考えてくれました。いい意味で普通のパチンコ店のオーナーとは考えていることが違うな、と思います。そのおかげでこのお店もやってこれています」

その社長はパチンコ店の営業についての知識があるわけではないのだが、かなりの切れ者で、今回のトラブルの報告を受けた際にも、数秒考えただけでその場でできる解決策を思いついたという。（99番までの抽選システムでどうやって300人を捌くのか？　記事下部に社長の導き出した解決策を記載したので、ぜひ読者の皆さんも、自分だったらどうするか考えてみてほしい）

「正直あの日のことはまだ今でも吹っ切れたという気持ちではありません」と店長は語る。

「ホールを取り巻く情勢は厳しいですが、店舗の営業でまだやれることは残っています」

シーサイドプラザの営業はこれからも続いていく。トラブルを乗り越えて、シーサイドプラザ店長は、理想のお店を実現すべく一日一日、営業を積み重ねていく。

 

 

 

 

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（社長の導き出した答え：抽選を3回行う。そうすると1〜99の各番号をもらった人が2〜3名ずつできるので、1番だった人から順に3名ずつ横並びになって入店してもらう）