「回しているのに稼働が上がらない。うちでは比較的稼働が良かった甘デジコーナーも稼働が下がっている」と頭を抱えるのは地域一番店の店長だ。
絶対的な地域一番店を堅持していたのに、回してもダメでは成す術もない。
これは恐らく地元のパチンコユーザーそのものが、消えてしまったことが遠因ではないだろうか。一つにはコロナでお年寄りが来店しなくなったこともあるだろうし、6号機でスロットの客離れが進んでいることもある。
今年4月、シーズリサーチがエンビズ総研およびAPJと共同で実施した「パチンコ・パチスロプレイヤー調査2021」によると、遊技人口は前年より200万人減少の813万人と推計している。この1年で一気に2割も減少しているように、それが地域一番店の稼働へも影響しているものと思われる。
コロナの影響で職を失い、給料が下がればパチンコどころではないので、遊技人口は700万人~600万人、と下降線の一途を辿ることになりそうだ。
コロナの影響以外で考えられるのは、水産資源が枯渇している乱獲と同じだ。要するにパチンコ業界の遊技人口が減少したのは、お客さんから取り過ぎた結果である。
漁業を管轄する水産庁は乱獲による水産資源の枯渇を防ぐため、新たにブリやマダイ、カタクチイワシ、ヒラメ、トラフグなど計15種に漁獲規制を設けた。今後は一定の漁獲量を確保しつつ繁殖能力のある親魚を長期的に増やす手法に切り替える。
日本人が大好きな魚が獲れなくなれば、監督官庁は漁獲規制を設けたり、稚魚を育てて放流するなどの対策を講じるものだが、パチンコ業界を管轄する警察庁は風営法違反の取り締まりはするが、産業を育成することはしない。
同じ取り締まりをするなら、40玉交換を強制力を持って実行することだ。それぐらいの指導がなければ、ギャンブルから遊技への回帰はできない。
遊技人口の減少は危機的状況を迎えているが、技術力の“枯渇”でスマホ事業から撤退したのが韓国のLGだ。
2013年には「世界三大スマホメーカー」の一つと言われたものだが、2020年の段階では、世界シェアは2%程度だった。同じ韓国のサムスンは世界シェア1位で20%、年間2億5500万台以上を製造販売しているのに対し、LGは2470万台に過ぎない。
LGは2015年度以降、スマホ事業は赤字で、長期低落傾向にあった。特に2019年は台数を30%も減らしている。
この現状を招いた原因は、中国メーカーとの競合に敗れたことだ。特に中位モデル以降では、中国メーカーの生産力との競合が厳しい。技術力があれば上位機種でサムスンやiPhoneに対抗できたかも知れない。
資源の枯渇、技術力の枯渇によって起こるのは衰退しかない。
機械代の高騰が結果的に客離れを起こしていることぐらいメーカー自身が分かっていることである。上位メーカーの中には廉価版のパチンコ台の販売を計画しているところもあるようだが、パチンコ業界の難しさは安くしたからいいというものではない。安い機械でも思わず客が打ちたくなるような機械が求められる。