パチンコ業界とは無縁だったが、今から20年以上前に2法人10店舗を買収してホール経営を始めたオーナーがいる。場所は関東。
経営は営業本部長にすべて任せていた。
ホール経営を始めた頃は「誰がやってもこんなに簡単に儲かるのか!」と自分の判断が間違いではないことを喜んだ。
ところが、10年ほど前から業界の先行きがおかしいと思い始める。元は回収している。設備が古いので新たな投資もできない。懇意にしている遊技機販社の社長からは「手仕舞いした方がいい」とアドバイスを受けた。
加えて、全幅の信頼をしていたホール経営の責任者の不正が発覚したことにも心が折れた。今は店を売却する決心も付いたが、店舗も古くホールとして買い手はなかなかつかないのが現状だ。
遊技機販社の社長自身も潮時だと感じている。
「投資の割に見返りが少ない商売になってしまった。機械代が高い割にお客さんもおカネを使ってくれない。機械代は高止まりして今後も安くなることはない。射幸性が落とされて余計お客さんはおカネを使わなくなった」とため息を漏らす。
ホールが何とかやっている新台価格をはじき出したところ25万円と算出された。現状は理想価格の倍近くしている。
射幸性を落として本来の遊技に戻るとすれば、40年以上前の経営感覚にならなければならない。要はフィーバー前のパチンコ業界ということになるが、当時は子供にホールを継がせたいと考えるオーナーは少なかった。
で、理想とする遊技機価格25万円と現状価格のギャップそのものが、今のパチンコ業界の歪さを物語っている。
ホールの利益はどんどん下がっているにも関わらず、機械代だけは上がり続ける。このギャップを是正しないことにはパチンコ業界は、大手だって生き残れなくなる。
上場メーカーは株主のこともあり、売り上げ第一主義なので価格を下げることは期待できないが、非上場メーカーにここは踏ん張ってもらい、ホールがやっていける25万円の新台を発売してもらいたいものだ。
メーカーに言わせれば「どんなにいい機械を提供してもホールの使い方が悪すぎる」。ホールにすれば「機械代が高いから早期回収に走る」と責任のなすりあいの堂々巡りばかりが続く。
こんなことばかり続けているから客離れが加速するわけだが、信用のある店はコロナ禍でもしっかり海コーナーなどにお年寄り客を付けて高稼働営業を続けている。
機械代に端を発して業界そのものがお客さんから信用を失っている。
ユーザーは少しでもおカネを増やしたくてホールに足を運ぶわけだが、増えると思える営業に邁進すればいいことだ。