カメラメーカーに部品を供給していたメーカーをこのほど定年退職したAさんが、今だからこそ話せる話を明かしてくれた。Aさんの会社は、カメラがデジタルになってからカメラメーカー各社との取引が始まった。
「デジカメが出始めたこと、カメラメーカーにはフィルム時代の技術者がまだ幅を利かせていたので、デジカメのことを『おもちゃ』と呼んでいましたね」
日本でデジカメが普及する先駆者となったのはカシオが1995年に発売した「QV-10」だ。画素数は25万画素。世界初の液晶モニター付きで発売時の価格は6万5000円。
銀塩カメラメーカーにすれば、25万画素はまさにおもちゃのレベルである。ところが、その場で画像がチェックできたり、パソコンに画像が取り込める利便性とインターネットの普及が後押しになり、当初月産台数を3000台としていたが、いざ蓋を開けてみると1年間で20万台も売れた。1カ月平均で1万6600台が売れるヒット商品となった。
カシオの成功でコンデジブームが起き、さらに高画質なデジタル一眼へと市場のニーズは変化していく。子供の運動会できれいな写真を撮るためにキャノンのEOS Kissが一眼レフ初心者層を開拓した。
2000年代は薄型テレビ、DVDレコーダー、デジタルカメラが「デジタル家電の新・三種の神器」と呼ばれた。
ケータイにもカメラ機能が搭載されると、やがては高画素数競争を始めるが、デジカメの脅威になるほどの存在ではなかった。
これがiPhoneの大ヒットでスマホ時代になると情勢は一気に変わる。コンデジ並みの画質はもはやデジカメを必要としない。SNS時代は撮った写真をすぐにアップする利便性が求められる。
カメラ映像機器工業会によると、デジカメ市場は縮小の一途をたどっている。2019年の世界総出荷台数は1521万台。ピークだった2010年(1億2146万台)の8分の1に縮小している。リコーが事業を縮小したりペンタックスがカメラ部門を投資会社に売却したりと見切りを付けている。
「デジカメをバカにしていたカメラメーカーが、スマホの台頭でデジカメ市場そのものを駆逐されていますよ。今、カメラメーカーの30代の技術者は『カメラは終わった』と言っているぐらいです。プロ用は別として一般の人はカメラを持たなくなる。スマホできれいな静止画も動画もすべて完結する。50年後の子供たちはカメラと言う言葉を知らない、と思います。今でもカメラで撮るではなく、スマホで撮るですから」
カメラの需要は自動運転のカメラや防犯カメラ、ドローン、ドライブレコーダーなどではまだあるが、ニコンやキャノンなどのカメラ専業メーカーの守備範囲とも違う。
「パチンコ業界はデジカメ市場を他山の石としなければいけない」とAさんは警告する。
パチンコ好きのAさんは、かつては週2~3回はホールに足を運んでいたが、等価になってからやらなくなった。
「パチンコ業界はぬるま湯に浸かっている。今はパチンコに替わるものがないから生き残っているだけ。デジカメ市場がスマホに奪われたように、パチンコより楽しいものが出てきたら一気に市場は萎む」
パチンコ業界が復活するにはどうすればいいのか?
「パチンコをスポーツにしなければならない。パチンコは攻略法がなくなって衰退した一面もある。ゲームは攻略するためにやるように、パチンコにも攻略のために腕を上達させる要素が必要。パチンコの目的は打ち止め。そしてそれが最後はおカネになる。パチンコを単なる暇つぶしにしたらダメ」
パチンコをスポーツとはこれまた新しい発想である。既に対戦型のゲームをeスポーツとしてプロ化も進んでいる。日本でも2018年に一般社団法人日本eスポーツ連合が設立されている。