コロナ禍で稼働が持ち直せないホールが大半だ。それは毎日のように報じられる閉店情報で分かるが、中小も大手も関係ない。
最近連絡を取っていなかったホール店長から久しぶりに着信があった。
「報告があります」と切り出された。
着信があった時点で、良い電話ではないことはすぐに察しがついていた。
「3月一杯で店を閉めました。だから寄ってもらっても店はない」
あ~、やっぱりそういう話か…
稼働が急激に下がり始めたのは昨年12月から。昼間の稼働はコロナ前と比べて少し上がった程度だったが、夜の稼働がついに一桁になった。
原因は飲食店が時短営業で早仕舞いするので、夜打っていたら、晩飯が食えなくなるので、夜の客が激減した、と分析していた。
夜の稼働が下がった分が赤字になってきた。
「11月の撤去までぐらいと予想していたんですが、閉店が早まりました。私はもう少し頑張らせて欲しいとお願いはしたんですが…」
200台クラスの小さな店で家賃は110万円。家賃交渉で120万円から10万円しか下がらなかった。
ここが撤退すれば後入るテナントもない。それなのに家主は強気だった。
閉店予備軍の店舗は予想以上に多い。稼働が下がればこれまでの従業員数も必要ではなくなる。アルバイトを切り、正社員だけでも十分に回せる。
そこで店長の頭を悩ませているのが、稼働が戻らず、正社員でも多すぎる人員で、やる仕事がない焦りだ。まず、店長が思いつくのは店内の清掃だ。やることがなければ清掃でもしていないと会社に申し訳もたたない。
稼働が戻らないのはコロナだとしても、会社から言われる前に、何かしないといけないと思ってはいるが考えが浮かばない。
そんな折に産経新聞で面白い記事を見つけた。
以下引用
ホテル従業員1人何役も
専門職ごとの分業が一般的だったホテルで、1人が複数の仕事を並行してこなす「マルチタスク」が広がり始めた。関西では、神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ(神戸市)やロイヤルホテル(大阪市)が昨年導入。背景には、新型コロナウイルス禍による従業員の一時帰休が増え少数で運営する必要に迫られたことがあるが、縦割りの弊害がなくなり、サービスの質向上にもつながっている。
「お客さまとの距離を縮められるし、一日の中で違う職場をめぐると気分転換にもなる」。そう笑顔を見せるのは、ホテルニューアワジに昨年4月入社し、傘下の神戸ベイシェラトンホテル&タワーズに勤める木邨(きむら)華歩(かほ)さん(23)だ。
彼女の主業務はフロント係だが、レストランで準備や接客をしたり、館内の温泉施設を清掃したりとさまざまな仕事をこなす。フロントでは朝食の利用客の混み具合などを客によく尋ねられ、「現場を見ているからすぐに答えられるし、その日のお勧めメニューなどを伝えると喜ばれる」という。
ホテルニューアワジは淡路島(兵庫県)のグループ施設に先行導入した。グループ全体で新卒社員の約半数がマルチタスク職として施設で働いている。「部門の壁が消え、ホテル全体のサービスに従業員の目が行くと、かゆいところに手が届くような先回りしたおもてなしができるようになった」と広報担当者は効果を話す。
旅館には「仲居」というマルチタスクと同様の働き方があるが、洋式ホテルは客室やレストラン、宴会など部門が明確に分かれ分業する形となっている。
こうした事情から、神戸ベイシェラトンも以前から検討を進めていたが完全に移行できていなかった。だが、コロナ禍で売り上げが激減し、人件費を抑える必要に迫られる形で始め昨年4月にマルチタスクを導入。6月、完全に移行した。
以上引用終わり
ホテル業界は業務が分業化しているが、ホールの場合、そこまで細分化していないので1人何役というわけにもいかない。
コロナ禍でホール店長がすべきことは、社員全員に集客や稼働を上げるためのアイデアを1人100個ぐらい出してもらい、それをディスカッションしながら最善と思われたものを一つずつ実践していくことだろう。
コロナ禍で度重なる自粛要請に国民は、ストレスが溜まっている。
それなのに、ホールはストレス発散の場であることを業界は忘れてしまっている。そりゃ、遊べないホール環境にしているから仕方ない。
負けたけど「遊ばせてもらって楽しかった」と思えることが復活のキーワードである。