自分の仕出かしたことは棚に置いて、示談に応じたことを悔しがる…。
地方で3店舗を経営している。
いずれも300台クラスの小型店舗で、建物は建て替え時期をとっくに過ぎていた。コロナとは関係なしに業績は下がり続けていたが、コロナの影響でさらに下り坂を転げ落ちていた。
歯止めがかからない業績悪化にオーナーの怒りは、店舗責任者である店長に向かう。
この時期に業績を上げるには、よほどの資本力があり、出し続けるしかないが、そんな余力はなかった。
初老のオーナーはワンマンだった。もっとも、ホール経営者で超が付くほどのワンマンも珍しくもない。むしろ、ワンマンぶりが店舗展開の原動力になっていた。
オーナーから店長には、「稼働を上げろ!」と毎日のように怒号が飛んだ。
その一方で「粗利も取れ」。もはや数えるぐらいしか客がいない店舗では、店長の能力では成す術もなかった。
追い詰められる日々が続き、精神的にも病み始めた。実際に精神科へも通うようになった。
このままでは、自分自身がどうなるか分からなくなり、弁護士に相談した。
ここから店長の逆襲が始まった。
オーナーをパワハラで訴えることにした。
そのために、オーナーの厳しすぎる“指導”はすべて録音した。
証拠が固まったところで、弁護士を伴ってオーナーと対峙した。
「パワハラで警察に被害届を出します」と口火を切った。
パワハラの意味も理解していないオーナーは、「警察に訴えられる」ということに慌てた。
厳しい指導をしていたことを本人は認めたが、それがパワハラになるとは思ってもいなかったようだ。
警察沙汰になるのはまずいと思ったオーナーは、示談に応じることにした。
で、示談金は248万円だった。
退職金制度のないホールだったので、これが退職金代わりになり、店長はホールを辞めた。
ホールでパワハラ教育が必要なのは管理職だけではなく、オーナーも受けておく必要がある。
