独立開業のラーメン屋がホールへの出店を断ったワケ

2021.03.13 / コラム
ファーストフードチェーンでラーメンチェーンも運営している会社で、商品開発部門に勤務していた人が、独立してラーメン屋を始める計画を立てていた。開業資金2500万円を元手に店舗も飲食店の居抜き物件を抑えていた。

独立を考えるきっかけは、商品開発を担当していて会社が求める味と自分がやりたい味に乖離が生まれ始め、方針の違いから会社を辞めて自分が追及する味で勝負するには独立するしかなかった。味には絶対の自信を持っているので、成功する自信はあった。

今年は独立開業している予定だったが、コロナ禍での外出自粛が求められ、特に飲食店の新規出店は厳しい、と読んだため諦めた。それでなくてもラーメン屋の世界は年間1万店がオープンしたら1万店が閉店するような厳しい世界でもある。

で、計画を先延ばしし、定年までの後3年間は会社に留まることにした。

ラーメン店を開業した暁には、ホールで副店長をしている息子も手伝う予定になっていた。そのため、息子には秘伝のレシピも教えていた。

開業を先延ばしにした矢先に、息子がテナントの話を持ってきた。

息子が勤務する会社の大型店でテナントの空きが出たために、そこで開業しないか、という提案だった。

父親はこう即答した。

「パチンコ店に入るとパチンコ客がメインになるので無理。パチンコ店に寄生している店はパチンコ客が減ったら売り上げも減る」

さらにファーストフードチェーンの会社なので、自身の会社がショッピングモールにも多数出店していて、緊急事態宣言下でショッピングモールが閉店したため、売り上げがゼロになった経験があるので、単店に拘っていた。

「飲食店で勝負するには一般の人が来てくれる立地でなければだめ。美味しいラーメンを食べるお客さんはパチンコ店に併設しているところには来ない。ラーメン党に入っているので受けるラーメン屋も分かっているが、ラーメンだけでやるには個性が必要。色々勉強しているからパチンコ店には出店しない」と持論を展開した。

確かにパチンコ店に併設している飲食店は冷食を出しているケースが少なくない。冷食の味は向上していることも事実だが、冷食以上でも冷食以下でもない。

「飲食店の場合は清潔でオープンキッチンの店が入りやすいが、パチンコ店はパチンコ客ありきの店づくりなので新規の客が入りにくい。パチンコをしない客のための店づくりをしていない」

この言葉の中に含まれていることが示唆に富んでいる。






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