街中などにある飲料水の自販機は、夏場は水分補給のためにある程度売れるが、冬場は厳しくなる。それがコロナ禍による在宅勤務が増えたことで、夏場でもオフィス街の自販機に打撃を与えた。
第3波による感染拡大で1都3県には緊急事態宣言が再発令され、時短営業の他、在宅勤務によって人の流れの7割減が求められている。
これで自販機飲料水の売り上げ減に拍車をかけることになる。
「冬のボーナスは2割減ですよ。人通りがある駅周辺は兎も角、住宅街にある自販機ともなると1日10本も売れません」と語るのは都内のベンダー会社に勤務するAさん。
自販機による飲料ビジネスに、大きな転機が訪れている。近年、コンビニの店舗拡大の影響から、自販機での飲料の売り上げは減少傾向にあったが、コロナ禍による影響が拍車をかけている。
飲料総研の調べによると、自販機での飲料の売り上げは、前年同期比で4月は33%減、5月は37%減と、大きな落ち込みが続いている。在宅勤務の普及などにより、オフィスや駅での販売量が減少していることが原因と考えられている。
自販機の飲料水が売れないということは、空き缶拾いのホームレスの収入源も奪っている。
そんなベンダー業界にあって前出のAさんは「一番のお得意様はパチンコ店です。街中の自販機の3~5倍の売り上げがありますが、繁盛店でも売り上げが3割減です」と顔を曇らせる。
かつてベンダー業者はホールでの陣取り合戦のために、1台設置するだけで1000万円単位のおカネが飛び交った時代もあった。それほど上得意だったホールの売り上げも右肩下がりだ。
会社でホールの売り上げ減を究明した結果は「勝てなくなっている」と結論付けた。勝てないからホールでの滞在時間が短くなり、必然的に短時間ではドリンクも飲まなくなる。滞在時間が長くなれば、喉も乾きドリンクも飲みたくなるというものだ。
ベンダー業界の頼みの綱だったホールの売り上げまで減ったりすれば、踏んだり蹴ったりだ。
自販機のライバルでもあるコーヒーのワゴンサービスも青息吐息の状態が続いている。
「もう何年も前ですが、ピーク時には1時間当たり30杯売ることもありました。1人のお客さんが5~6杯買って友達に振る舞ってくれた時代です。今は1時間で3~5杯。これでは女の子の時給も出ない。ワゴンサービスもこれ以上続けられません。節約するお年寄りのお客様の中には水筒にコーヒーを入れて持って来ているぐらいです」(ホール店長)
人が動かない、パチンコで勝てなくなったことがベンダー業界を苦しめている。