2021年パチンコ業界7大予測【前編】

2021.01.20 / コラム

新型コロナウイルスが経済に深刻なダメージを与え、人々の生活・行動パターンを大きく変容させる中でスタートした2021年。
目に見えない感染症との戦いはいまだに続くが、明るい材料もある。

春先にはコロナ対策用のワクチン接種が始まり、延期になった東京五輪も今夏には開催される見込みだ。
また、政府による公的支援を受けて急回復する業種や、コロナ禍を逆手に取った商品・サービスも好調だ。

ひるがえってパチンコ業界はどうなのか。
ホール、メーカー、遊技機、設備など7つのテーマ別に今年の予測と光明を探った。


①ホールはどこまで減少するのか

ポイント

・2021年末時点で全国の店舗数8000軒を維持できるか
・金融機関はコロナ前に「今後5年間で6000〜7000店舗まで減少」と予測
・多角経営の1事業としてのパチンコがスタンダードに

ホールは95年をピークに徐々に減少。04年の規則改正(5号機へ)で大きく減少した。
そして、17年の規則改正と20年のコロナの影響により今後さらなる減少は必至。

2021年、パチンコ店舗数は8000軒を維持できるか否か

2021年のパチンコ業界を考える時、その市場規模についてまず考えるべきであろう。市場規模とはすなわちパチンコ店の店舗数といっても過言ではない。

遊技客はパチンコ店に集まり、客が打つ遊技機を製造するメーカーの顧客はパチンコ店であり、周辺機器メーカーや販社の取引先もすべてパチンコ店である。パチンコ店の店舗数の予測こそが、業界の未来予測に直結する。

結論から言えば、2021年12月31日時点で全国のパチンコ店の店舗数は8000店~8300店まで減少すると小誌は予測している。

警察庁が毎年年末に発表する「遊技場店舗数及び遊技台数」を見れば、2018年末で1万60店舗、2019年末は9639店舗となっている。一昨年の1年間で400店舗以上減少している。年末進行で前倒しされている本稿執筆時点では、2020年末の店舗数は発表されていないが、およそ9000店舗前後というのが妥当な見解であろう。
コロナ禍により店舗の売上が大きく減少し、経営難に陥ったパチンコ店も少なくない。

全日遊連を中心とした業界団体が積極的に働きかけ、日本政策金融公庫が扱う新型コロナウイルス感染症特別貸付やセーフティネット保証などをパチンコ店も受けられるようになったことが救いとなったが、本来であれば、もっと多くのパチンコ店が閉店、廃業の苦渋の決断を強いられてもおかしくない状況であった。

しかし、2021年に待ち受ける旧規則機の一斉撤去を考える時、その設備投資に関わる負担は相当重い。コロナの影響により減少した客数が本来の数に戻る保証もなく、過重な投資をしてまで営業を継続しようとする中小ホールがどれほどあるか。4号機一斉撤去を迎えた2007年には約1000店舗減少している。2021年はこれと同等、もしくはこれ以上の減少が見込まれる。2021年末時点でパチンコ業界が8000店舗を維持しているか否かが大きなポイントとなるだろう。

そして店舗数8000というのは「底」ではない。あくまで通過点である。コロナ禍以前の予測においても、今後5年でパチンコ店は6000店舗~7000店舗まで減少するというのが、パチンコ業界に関わる金融機関などの予測である。廃業然り、不採算店舗の閉店然り、店舗数の減少を止めるすべはない。1万8000店舗と言われたピーク時の3分の1である。ここが当面の「底」だ。

ちなみに2500社~3000社あると言われているパチンコ店経営企業数も500社~700社程度にまで減少するともいわれている。パチンコ店は今後5年間、コロナ禍によるダメージの克服に努めながら、いかに生き残る6000店舗の内に入り込むかのサバイバルを強いられることになる。

経営の多角化が進行するパチンコホール企業

店舗数の減少がそのままパチンコホール企業の衰退に直結するわけではない。上位20社の大手企業ばかりではなく、多くのパチンコホール企業が多角経営に乗り出して久しい。今後はよりいっそう、この多角化戦略が採用されていくであろうし、その中で多くの成功と失敗を繰り返しながら企業は強く成長するはずだ。

「パチンコホール企業」ではなく、多角的に経営を推し進める「企業の1事業としてのパチンコ店」という形がスタンダードとなっていく。所有する土地や建物を生かした不動産業や、接客サービスのノウハウを生かしたサービス業が経営の一角を成す。今まではどこかダブついた人材の受け入れ先としての他事業という色合いもあったが、今後は企業全体の収益構造のバランスがより重要視されていく中、本腰を入れた新規事業開発や、業界の垣根を越えたM&Aや資本提携も積極的に推し進めていくことになる。

「ぱちんこ」はアナログな娯楽である。客はパチンコ店に赴き、遊技台を直に操作し遊技をする。それは古き良き伝統あるものであるが、同時に進化する時代からは年々取り残されていくものでもある。

デジタル化が進み、遠隔化(リモート化)が進む現代社会において、パチンコは法律との難しい折衝を繰り返しながら進化しなくてはならないが、しかしどこかに業態としての限界もある。オンライン化やキャッシュレス化などがどれだけ進められるのかが1つの試金石になるであろうが、今後5年で解決できる問題ではない。やはりパチンコは、企業の収益の柱の事業にはなり得るが、唯一無二の事業として継続させていくのは困難であると言わざるを得ないのではないか。
2021年は、パチンコ業界が今後どのように舵を切っていくべきかが問われる1年になる。

コロナ禍が業界を変えたわけではない。コロナは変わらざるを得なかったパチンコ業界の背中を押しただけだ。コロナがあったこれからの未来。コロナがなかったもしもの未来。どちらも行きつく先に大差はない。栄枯盛衰は社会の摂理でもある。現状に甘んじることなく、変化を恐れることなく、進んだ先に未来がある。


②業界をリードしていくメーカーはどこか

ポイント

・海とジャグラーの設置台数推移がパチンコ店の未来を占う1つの指標
・メーカーによるeコマース事業が新たな可能性を開く
・6号機の実績で頭1つ抜けている大都を中心に回る

6号機の「雄」難攻不落の大都技研

不遇の6号機という評価が定着するなか、唯一気を吐いているのが大都技研のパチスロ機である。6号機の黎明期にムーブメントを起こした「Hey!鏡」や「Re.ゼロから始める異世界生活」。高射幸性回胴式遊技機の撤去が推し進められる中、安定した稼働でその穴をカバーした「吉宗3」など、大都技研のパチスロ機なくして6号機市場は語れない。ホール現場からも「現状で結果を残しているのは大都」と言われるほど信頼度も高い。

今後の6号機にある程度の規制緩和などが見込まれているが、大都技研の難攻不落の信頼の牙城を切り崩すのは至極困難に思われる。最後までメインとして設置されるであろう旧規則機は「番長3」であることも含め、6号機での販売がまだない本流の番長シリーズや秘宝伝シリーズに加え、Re:ゼロという強力なコンテンツも持っている。演出の圧倒的な爽快感も他社の追随を許さない。2021年のパチスロ市場は、間違いなく6号機の実績で頭が1つ抜けている大都技研を中心に回るだろう。

海物語シリーズとジャグラーシリーズの転換点

この15年、パチンコ店の経営の根幹には三洋物産の海物語と北電子のジャグラーがあり続けた。どのパチンコ店にもマリンちゃんやサムやピエロが装飾されており、パチンコをまったくしない人は、外壁や幟にマリンちゃんが描かれているのを見て、日本中のパチンコ店が1つのチェーン店企業だと思ったという話も。この2シリーズの功績を否定するパチンコ店はどこにもないであろう。

しかし今、海物語もジャグラーも大きな転換点を迎えている。どちらも分かりやすい遊技性ということで、主に年配層をメインターゲットにしてきたが、このコロナ禍によってそのメイン顧客の来店頻度が急激に下がっている。コロナ禍がもたらしたこの客層の変化が、パチンコ店側の購入意識に影響を与えている。このまま継続的に海物語やジャグラーの島を維持していくのか。

新規則機では海物語もジャグラーも1回の獲得出玉数は大きく減らされた。遊技機のトレンドは、小さな出玉をいかに連続させて大きく見せるのかに移っている。2021年、海物語とジャグラーの設置台数の推移がパチンコ店の未来を占う1つの指標といっても過言ではないだろう。

©︎長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活製作委員会 ©︎DAITO GIKEN,INC.
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京楽産業.とユニバーサルの逆襲

パチンコでいえば京楽産業.の復権が待たれる。北斗、慶次、牙狼、ヱヴァ、ルパンといった定番のロングラン版権に匹敵するほどに、仕事人やまどか☆マギカ、ウルトラマンや仮面ライダー、韓流系やアイドル系等、多彩な版権で京楽産業.はスマッシュヒットを飛ばし続けてきた。

一時期は「京楽島」なるものが構成されるほどであったが、近年はその勢いは失われつつあった。しかし「安定の海物語」の対極であり続けた「楽しい京楽」のパチンコ機に寄せる客の期待感は大きい。京楽産業.の復権を待望するホールやファンは少なくない。

一方、パチスロでは、5号機の覇権を取ったユニバーサルの逆襲も楽しみだ。6号機のバジリスク絆2の安定した支持率は圧巻の一言であるが、やはりミリオンゴッドシリーズのイメージは強烈で、ユニバーサルのパチスロに寄せる期待感は大きい。大都技研1強の様相を呈している6号機ATパチスロ市場の中、その対抗の最右翼は間違いなくユニバーサルである。また同メーカーのAタイプも5号機市場での貢献度は秀逸で、過去の名機のリメイクを含め、今後の開発陣の奮闘に期待したい。

サミーのeコマースが照らす業界の未来

2020年のメーカー関連ニュースにおいて、サミーのeコマース戦略は、今後の新たな遊技機販売の形を明示したものであった。2020年2月よりホール関係者専用サイト「777EC」内に製品ECサイトを開設し、部品のみならず、遊技機本体も販売するというもの。常に新しいものを追求するサミーのこの取り組みは、2021年以降の各メーカーの遊技機販売戦略に大きな影響をもたらすであろう。

メーカー各社がeコマース事業に本格的に乗り出したとき、その販売管理費や人件費の大幅な削減が、遊技機価格の低減に直接反映されるのかは予断を許さないが、遊技機を介したホールとメーカーの関係性が大きく変化することは間違いない。

コロナ禍がeコマース市場を急速に拡大させた時代の潮流にも乗っている。パチンコ業界の古き慣習にくさびを打ち続けるサミーの新しい提案は、パチンコ業界の未来を大きく変える可能性をはらんでいる。


③パチンコ機はどう変わっていくか

ポイント

・設定により確変突入率に変化を持たせられれば面白い
・管理遊技機でホール環境とイメージが大きく変わるチャンス

「遊タイム」でセブン機のバリエーションが増えた

新しい機能「遊タイム」を付加したパチンコ機が市場に出回った2020年を日工組の渡辺圭一技術担当理事が振り返る。
「日工組としては一昨年くらいからパチンコ機の解釈基準に関する10数項目の要望を行ってきました。その中で、セブン機に関わるb時短とc時短の要望が通りました。この新たな機能によって、ゲーム性が広がったのは間違いありません。お客さんにしたら遊べるようになったし、やめ時の目安にもつながるので依存対策にもなっていると思います」

そのゲーム性ついては「MAX機があった時のように同じタイプばかりに偏ってくるとその機種の寿命も短くなってきます。今だと遊タイム(b時短)搭載機ばかりが目立ちますが、最近はc時短いわば突然時短を活用した機械もあり、ゲーム性が広がってきています。何がいいのかは市場が決めてくれるでしょうが、以前よりセブン機のバリエーションは増えてきたし、新たに羽根モノなどが加わってくればもっと広がりが出てくるでしょう」と期待を寄せる。

そして、今後のパチンコ機についてこう話す。
「現行の規則のままという前提で言えば、セブン機の確変仕様は限界までいき、時短もこれ以上の広がりは見込めません。できるのはどれだけバリエーションを広げるか。個人的には、設定機能をもっとうまく使えるようになれればと思います。具体的には現行の規則ではムリですが、設定により確変突入率に変化を持たせることができれば面白いと思います。それと、高確率時の確率を全設定で同じにしたい。規則改正については旧規則機がなくなるのは来年11月で、すべてが入れ替わった再来年の市場を見た上で、規則改正という話になるとしても、この先、3〜5年は難しいでしょう」

管理遊技機で生きる羽根モノや権利モノ

では2021年のパチンコ機は具体的にどうなっていくのか。
「現行機のゲーム性をさらに高める努力をする一方で、本格的に管理遊技機に向かっていきます。管理遊技機は相応のメリットをつけていかなければ、新たな設備投資をしてまで購入してもらえませんから、今よりは性能がよくなるのは明らかです」

管理遊技機の玉はステンレス製なので磁石などにくっつかない(ゴトができない)ため、「まず昔のような羽根モノや権利モノで復活させたかった」という渡辺理事。しかし、V入賞でラウンドを自力継続させていくタイプの羽根モノは最近ほぼ出ていない。今のユーザーに対して、パンクするという部分が強調される可能性も否定できない。「パンクに慣れるには時間がかかることが予測され、まずはセブン機が出てくるでしょう。21年春ごろには筐体は出せるでしょうが、発売はしないと思います。現行機より優位性を持たせるために、行政と交渉したり、内規を考えたりしなければいけませんから」

遊技機の性能以外でも渡辺氏はこんな可能性を示唆する。
「長期的にはコスト面のメリットはあります。通信費などに関しては使用年数やチェーン店割引などが起こると予想しています。また、管理遊技機によって島がなくなり台の間隔が開いた時、ウィズコロナの中でパチンコをやらない人にも見た目に安全性をアピールできますし、店の環境が大きく変わるチャンスになります。環境を重視したコンパクトで個性的なホール作りという意味で、中小ホールのメリットは大きいでしょう」

多様な機種が出せる環境が整い始めた遊技機市場に、2021年は管理遊技機やメダルレスという新たな選択肢が増える可能性を渡辺理事は前向きに語った。


後編へ続く

 

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