師走のタクシーの会話から垣間見える業界の将来
2020.12.26 / コラム感染拡大が止まらない東京だが、12月半ばの週末、都内のタクシーは久しぶりに大忙しだった。この活況にドライバーは売り上げが上がったことは嬉しかった半面、「年末年始は感染者がもっと増える」と感じた。
都内で忘年会終わりの客2人を乗せた。ドライバーはパチンコ好きなので、会話の内容からホールオーナーとメーカーの営業マンであることが分かった。会話の内容からホールの忘年会帰りだった。
車内では来年の機械代の予算は3分の1に削ることを本部長に指示し、稼働の低い店舗は無駄な機械を買わないでベニヤにするなど、と話していた。チェーン店は10店舗クラスで「10年後に半分残ればいい方」と悲観的な内容だった。
先にオーナーを下ろし、営業マンとドライバーの会話が始まった。
「来年は業界が苦しくなる。ホールもおカネを使わなくなるからメーカーも大変だよ。ウチは取引先の大手が買うだけの余力があるのでまだ助かっているけど。パチンコ業界は庶民を相手にしている商売だと思われている。1パチがある業界だからね。でも、4パチ、20スロを打てるお客さんは随分減っている。そういう意味では庶民の遊びではないよ」
「タクシー業界だって庶民は乗りませんよ。おカネに余裕がある人しか乗ってくれませんよ」と応じた。
パチンコもタクシーも庶民とは縁遠くなる業界であることが一致する。
「今までホールさんは売り上げ、粗利の上がる台を買ってくれた。その代表格が凱旋。随分と売り上げに貢献したけど、今後はそういう台は出せなくなった。メーカーとしてはまずユーザーが飛びついてくれるような台を開発しなければならない。開発には1~2年かかるけど、ウチは稼働が取れて客離れが進まない台を出しますよ」
パチンコ好きのドライバーは会話の端々から出てくる機種名でこの営業マンの会社が推察できた。上場メーカーだった。
「業界がどの方向に向かうのかは分からない。でも今残っているお客さんは等価しか打たない。それは自分のクビを閉めていることなのに気づかない。業界が等価に走っていなければ、1円も必要なかった。1円のお客さんでさえ等価しか打たない。一部の大手が等価を止める話もあった。それに対応する機械も作らなければならないが、その話も止まっている」
等価の功罪論については別の機会に譲ろう。
話は自身の仕事に及び始めた。
「大手ホールほどメーカーの営業マンはいらない。大手には情報過多と思われるぐらいたくさんの情報が入ってくる。営業マンが必要なのは地方の情報が入って来ないオーナー。そこでは重宝がられる。昔の営業マンはコンサルティング的役割も果たしていた。こういう使い方をすればこう稼働が伸びる、と。今はコンサル会社のセミナーへ流れている。メーカーもネット販売するところも出てきて営業マンも必要とされなくなった。抱き合わせ用の機械を開発する余裕すらなくなった」
では、最前線の営業マンから見てどういうホールが残るのか?
「今は1/320がMAXタイプになっている。このタイプが強いホールと弱いホールがある。1/200は強くても1/320が弱いホールもある。この両方にお客さんが付いているのが優良店で、1/320にお客さんが付かないホールはいずれ淘汰される。1円が主流でコロナで売り上げを落とし、抜いたホールも然り」
そんな会話をしながらタクシー代は2万円オバー。お釣りの3000円はチップにくれた。まだ、余裕があるメーカーの営業マンと感じた。