【WEB特集】300万台超の撤去機はどこに行く?(後編)

2020.12.18 / ホール

 

 

不法投棄の過去の反省を⽣かし
反社会的⾏為を阻⽌せよ

2002年、栃⽊県⿅沼市と宇都宮市で野積みされた約21万台のパチンコ台が撤去された。翌03年にも福島県双葉都で約6万台が撤去された。いずれも使⽤済み遊技機の処理に困った一部の業者が起こした、⻑年にわたる放置、不法投棄だった。この問題はその度に社会問題化し、最終的にはメーカー団体などが費⽤を出し合って撤去・処理を⾏った。

こうした前例を受けて、パチンコメーカーの団体である⽇本遊技機⼯業組合(⽇⼯組)は2003年に無料で使⽤済みパチンコ台を回収・リサイクルできる「遊技機回収システム」を構築した。これによってホールは遊技機を排出するにあたって、処理費や運送費を負担することなく、かつ買取り⾦額を受け取る形で適正処理に排出できるようになった。

ホールが個別に処理業者を選定して排出すれば、適正処理が担保されないばかりか、怪しげなブローカーに流れる可能性もある。野積みや不法投棄が反社会的⾏為と認識されている今、過去のような事案を再び引き起こさないために、まずはこのシステム活用を前提に考える必要があるだろう。社会的責務を背に、製造者であるパチンコメーカーが中⼼となって構築したシステムの活用だ。

この「遊技機回収システム」とともに、メーカーが処理費を負担するのが遊技機リサイクル協会の運営するシステムである。同協会のシステムには趣旨に賛同するメーカー(別表参照)をはじめ多くの遊技業組合も参加している。そして、こうした適正処理への意識は地⽅へも伝播。業界関係者が団結し、今年11⽉に構築した「九州回収システム」に対して、警察⾏政も講話で「過去の反省が⽣かされた取り組み」と評価、その上で「旧規則機の適正かつ計画的な廃棄処理についても抜かりなくお願いする」と付け加えている。

 

2002年、鹿沼市に野積みされた大量の廃パチンコ台

 

年明けに集中する撤去機は液晶⾮搭載機

旧規則機の完全撤去まで1年を切った12⽉18⽇現在までに、機種の中でも廃棄量的に⼤きな⼭となる約6万台の「凱旋」が撤去されている。同機については本特集前編でも伝えた通り、⽇⼯組のシステムにも、遊技機リサイクル協会のシステムにも乗らない⾮加盟メーカー製である。また、当該メーカーからは今のところ買取り・下取りのアナウンスも出ていない。そのためホールは付き合いのある販社や処理業者へ引き取ってもらい、液晶に価値がある有価物としてなるべく⾼く買い取ってもらおうと腐⼼している。それでも加盟メーカー製の遊技機に⽐べれば買取り価格は低いようで、「あまり期待できない状況」という。中には、「いずれ下取りをしてもらえるのではないかと思って倉庫に保管している」というホールも多数ある。

凱旋撤去後、次なる廃棄の⼤きな⼭は年明けの「沖ドキ」「ハナビ」「ジャグラー系」などの⾮液晶搭載機である。この3機種を合わせると10万台を超え、撤去される台数としては凱旋を⼤きく上回る。そして、ホールにとって最も深刻なのは、液晶⾮搭載機は「買い⼿がつきにくい」という問題である。

 

非加盟&液晶⾮搭載機は買い⼿がつきにくい

日工組の指定処理業者であるユーコーリプロは⾔う。

「11月入ってからホール様より非加盟メーカーのパチスロの処理についての問い合わせが多数あります。⽇⼯組の加盟メーカー製の遊技機であれば、メーカー様が処理費や運送費を負担してくださるのでホール様の要望に応えて買い取ることができますが、非加盟メーカー製の遊技機だけを多数買い取って欲しいと依頼されても困ってしまいます。もちろん非加盟メーカーの遊技機も液晶を始めとする有価物としての価値はありますが、処理費や運送費を考えると収支が合わないのが正直なところです」

しかし、加盟か⾮加盟か、メーカーが処理費を⽀払っているか否かは、⼀般的なホールではほとんど認識されていない。排出される遊技機は加盟・⾮加盟にかかわらずグロスで処理業者などに買い取ってもらうケースが⼤半だからだ。つまり非加盟の遊技機の割合が増えると全体の買取り価格が下がり、場合によっては買取りできないという問題が⽣じるのだ。とりわけ液晶非搭載機については有価物としての価値も低いので買い手がつきにくくなるのだ。

こういった懸念に対して、12月に6号機初のジャグラーを販売する北電⼦では、新台販売時の下取り実施を明確に打ち出している。さらに同社は遊技機リサイクル協会にも加盟し処理費を負担している。パチスロメーカーもホールの要望に応えようと動き出している。

 

すべてのメーカーが適正処理システムへの加盟を

中部地区のホール店⻑がこんな疑問を投げかける。

「21世紀会の決議に従い旧規則機を撤去すると決めた時点で⼤量の廃棄台が出てくるのは分かっていたわけでしょう。普通であればすでに業界団体やメーカー企業が何か策を打っていると思いますよね。メーカーの下取りも組合システムによる買取りもなく、個々のホールに処理を任せれば、適正なルートから外れる危険性があるのも分かるはずです。それを今頃になって不法投棄への懸念を指摘されるようでは業界⼈として⼼が痛いです。仮に怪しげな処理業者が不法投棄でもしたら、パチンコ業界の問題として⾵当たりはますます強くなるわけですから」

⼀⽅、関東地区の中堅ホールの経営者はこんな思いを打ち明ける。

「ジャグラーも沖ドキもホールに⽋かせない機種であり、売上と稼働に貢献してもらった機種です。しかし排出する際はそれぞれ対応が異なる。⽚⽅はしっかり下取りがあって、もう⽚⽅は自分たちで交渉して買い取り先を見つけないといけない。不公平とは分っていても、そこはメーカーの企業姿勢の違いと諦めて、必要な機種であれば買わざるを得ません。メーカーとして下取りが難しいのであれば、ホールの負担なく処理できるよう何らかの方法を検討してもらえると有難いです」

また、九州の⼤⼿ホールの部⻑はこう訴える。

「⼀番望んでいるのはメーカーによる下取りや買取りです。それがなければ処理業者による⾼価買取りを希望します。すべてのメーカーが何らかのシステムに加盟してもらえれば、買取りを断られた遊技機でもシステムに加盟している処理会社に依頼すれば引き取ってもらえるという点では安⼼です」

多くのホールが望む公平で公正な買取りと適正な処理システム。すべてのメーカーや関連団体、業者が結束してすぐにでも同システムに参加・活⽤しなければ、冒頭のような光景が今度はパチスロの不法投棄となって再び繰り返されることになるのではないか。

 

●メーカーのリサイクルシステム加盟状況

栃⽊県⿅沼市, 宇都宮市, 野積み, 社会問題化, ⽇⼯組, 遊技機回収システム, 九州回収システム, 液晶⾮搭載機, 沖ドキ, ハナビ, ジャグラー系, 下取り, 買取り