【WEB特集】300万台超の撤去機はどこに行く?(前編)

2020.12.10 / ホール

「凱旋」がカギを握る不法投棄問題
〜倉庫にねむる業界バッシングの火ダネ

コロナ禍でホールの稼働と粗利を支えてきた「ミリオンゴッド-神々の凱旋-」が11月、大阪府を除く全国で撤去された。総設置台数は約6万台、設置店舗数は6000軒といわれる旧規則最強の主力機を21世紀会の取り決めに従い、90%以上のホールが取り外した。
それは目先の利益よりも、業界人としての責務や将来への希望を優先したホールの英断ともいえる。

しかし、そうした思いに水をさし、かつバッシングにもつながりかねない火ダネがくすぶり続けている。それは倉庫に保管された大量の撤去機と、それを排出処理する際に懸念される不法投棄、野積みの問題である。

1994年に埼玉県寄居町で起きたパチンコ台の野積み問題は当時、マスメディアの格好のターゲットとなり、激しい業界バッシングを引き起こした。その後、国内では改正リサイクル法も施行(2001年)され、環境問題に対する意識は当時と比較にならないほど高まっている。
そうした中で、再び不法投棄を出せば、社会的に大きな非難を浴びることは明らかだ。

 

〝指定業者以外の業者〟へと流れる可能性がある「凱旋」

旧規則機が新規則機へ完全に入れ替わるのは2021年11月30日。その日までに排出される遊技機は弊誌の推計で300万台を優に超える。その内訳は、ホールや運送業者などの倉庫に保管されている旧規則機が約112万台(パチンコ73万6747台、パチスロ38万2542台/全日遊連が6月に公表した「遊技機の保管状況調査」より)、検定・認定切れにより年内に撤去される遊技機が約20万台、そして2021年1月から11月末日までに撤去される遊技機が200万台強である。

これだけの台数が排出される過程で、不法投棄を出すことなく適正に処理を進めていくことはできるのか。
現在、遊技機の適正処理の判断基準となるのは、「遊技機リサイクル推進委員会」(全日遊連、日遊協、日工組、日電協、全商協、回胴遊商6団体共管)が制定した「使用済み遊技機の管理及び解体処理に関するガイドライン」に則って処理をすることである。この基準を満たしていると認められている指定業者は、日工組の広域回収システムに加盟している処理会社4社と、遊技機リサイクル協会に加盟している13社、および選定会社17社の合計34社である。

これらの指定業者であれば適正処理は担保される。しかし、それ以外の業者に出せば、高く売れる液晶を抜いた後に不法投棄や野積みを行なったり、「闇スロ」のルートへ流れたりする可能性もある。
そして、今回撤去された「凱旋」はそうした〝指定業者以外の業者〟へと流れる危険性をはらんでいるのである。

 

買取り価格のギャップへの不満や疑問

日工組の広域回収システムに最も早く加盟したユーコーリプロの関係者がこう話す。

「『凱旋』は日工組非加盟のユニバーサルブロス製のため、日工組広域回収システムには乗らない対象外の遊技機です。弊社にも『凱旋』買取りの依頼がありますが、非加盟の遊技機はメーカー様から処理費や運送費をいただけないので、加盟メーカーの遊技機と同等の価格で引き取ることは不可能なのです」

ホール側にすれば、できればメーカーによる下取りを望み、業者に売るならできるだけ高く買ってもらいたい。しかし、大量に撤去された「凱旋」に関しては、現状では当該メーカーによる下取りのアナウンスもなく、一方で処理業者が提示できる買取り価格はホールの希望を大きく下回るというのだ。


実際にホール現場の話を聞いてみた。
「メーカーからの下取りや買取りのアナウンスは一切ありません。このままだと売却は付き合いのある販社になると思います。できる限り高く買い取ってほしいと伝えていますが、あまり期待はできないようです」(都内のホール店長)

「今は倉庫に置いていますが、近いうちに満杯になるので処理業者に引き渡す予定です。適正処理は企業としての責務だと思いますので、買取り価格が100円であっても、逆にこちらが費用を支払うことになってもそれは仕方がないと思います。ただ、この台は高値で下取るけど、この台は下取りも買取りもできないといった対応には矛盾を感じます。苦しい経営状況の中でも自分たちは業界団体による撤去という要請に従ったのですから、その台の廃棄についてもこれ以上ホールに負担がかからないように、納得のいく取り決めをしてほしいです」(中国地方中堅ホールの統括部長)

「以前から取引のある信頼できる処理業者に売却しました。液晶が使えるというので買い取ってもらいましたが、二束三文です。1万円程度で下取りをしてくれるメーカーもあることを思えば大きな落差ですね。下取りがあるかどうかは、メーカーの方針に従わざるを得ないのかもしれませんが……。問題はこの後に控える『沖ドキ』の撤去です。液晶が付いていないので売れないでしょうから、逆にこちらが処理費を支払うことも覚悟しなければいけないでしょうね」(首都圏に20数店舗を展開する大手ホール役員)


買取り価格のギャップに不満や疑問を持ちながらも、企業の社会的責任として適正処理を心がけようとするホール。しかし、「高額買取」をうたって液晶を抜き、その後のゆくえがあいまいという回収業者も存在する。
甘言につられて売却し、それが不法に投棄され社会問題化すれば、業界のイメージダウンはもちろん、その台の機歴から排出ホールが特定されることになる。


後編へ続く>

 

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