顧客の高齢化に伴い、着替えと紙パンツはホールの必需品
2020.12.08 / コラムパチンコの1パチコーナーは団塊の世代を中心とした高齢者で支えられている、と言っても過言ではない。日報でも何度か取り上げてきているが、高齢化する遊技客が避けて通れないのが認知症の問題だ。
認知症が疑われるAさん(68)は、年齢的にはまだ若い部類に入るかも知れない。農業をやっているので、頭はしっかりしているし、足腰も丈夫だ。一仕事終えると自転車に乗ってホールにやってくる。
頭はしっかりしていて普通に会話もできるのだが、尿を漏らすことが多くなり、家人から紙パンツを履かされるようになって暫く経つ。
最初は2回吸収タイプを使っていたが、それでは間に合わないので4回吸収タイプに切り替えた。
家でも紙パンツなので立小便ができず、家では座り小便をするようになっているが、時々ズボンを履いたままお漏らしすることもある。
頭はしっかりしているにも関わらず、下のコントロールができなくなっている。
で、いつも行っているホールでパチンコを打ちながらお漏らししてしまった。4回吸収分を超える量になったため、ベルベット地の椅子を濡らしてしまった。
Aさんが席を立った後、次に座った常連客が「冷たい! 椅子が濡れている。誰かお茶でもこぼしたのか?」と店員を呼んだ。
後でカメラを確認したらズボンを濡らしたAさんがその席から立ち上げって、別の台に移動しているのを確認した。
Aさんは常連で、家族も時々パチンコを打ちに来る。会員証から家の電話番号が分かっているので、家族に事情を話した。
「すぐに行きます」と電話に出たのは娘さんだった。
暫くして、着替えと菓子折りを持って娘さんがやってきた。
「記憶はしっかりしているのに、漏らしてしまうんです。おじいちゃんはパチンコだけが生き甲斐なので、これからも通わせていいですか?」とお願いされた。
そういわれて断ることもできない。
菓子折りは丁重に断ったが、事務所に置いて行った。
娘さんは漏らしても他に濡れないように、カッパのズボンを履かせた。
頭はしっかりしているAさんは「ちょっと待ってくれ」と帰ろうとしない。それもそのはず、確変が掛かったばかりだったあらだ。1回目が終わったばかりで、全部終わらないと帰らない、と頑なだった。
Aさんが帰ったのはそれから1時間後だった。
店長は今回の件で、ホールで着替え用のジャージの上下と紙パンツを男女それぞれ用意した。
文明堂の菓子折りの中には白い封筒が入っていた。「椅子のクリーニング代にして下さい」と1万円が入っていた。
さすがにこれは受け取れないので次にAさんが来店する時に返すことにした。
椅子のベルベット地のカバーを洗うと真っ黒い汁が出た。尿以外に長年のタバコや客の汗の歴史でもある。
顧客の高齢化に伴い、着替えと紙パンツはホールでは必需品と言える時代になった。