どっこい生きている1パチなしの単店

2020.12.03 / コラム

とあるホール取材で業界誌の駆け出し記者時代にタイムスリップしたかのような感覚になった。

ホールの建物は2階に寮があるタイプで、90年代初頭のものだ。そんな古い建物の事務所にセーター姿のオーナーがいた。

総台数は300台クラス。当時としては標準的なもの。

取材に行ったのは平日3時。スロットコーナーには活気がある。いい意味で予想外だった。

「都会に比べてこの地区は遊ぶ場所がホールぐらいなのでお客さんの減り方はまだまし。お客さんは農業、漁業、土木関係者なので雨の日は朝から稼働がいいけど、農繁期になると稼働は下がる。今はコロナ前の8割まで回復している。戻って来ない2割はお年寄りと会社からパチンコを止められている人たちなのでもう諦めている」とオーナーが話し始めた。

独立して13年。その前は兄弟でホールを運営していて、兄が社長、本人は専務という立場だった、というから業界歴は30年以上になる。

このホールのパチンココーナーに1パチはない。お客さんからも「なぜ1パチを置かないのか」と聞かれることもあったが、オーナーの「1パチは嫌い」の一点張りで4円だけで営業を続けている。

「子供のころから1円なんて見たこともない。1円をやるならゲームセンターになり、その分、経営がしんどくなる」とポリシーを貫く。

4円だけでパチンココーナーを運営しているが、さすがにパチンコの稼働は厳しいものがあるが、それをスロットコーナーがカバーしている。

スロットに依存しているということは完全に6号機に移行した時の不安もよぎる。

「凱旋は6台あって撤去日に撤去したけど、この地区は元々ジャグラーが強い。5号機ジャグラーが完全撤去になった時は営業方法も変更することを考えている。今は内税で50枚払い出しで5.6枚交換だけども、ジャグラーも全台6号機になる時は、外税で47枚払い出しで5枚交換にすることも検討しています」

チェーン店のように機械の使いまわしができない単店は機械代が重くのしかかる。特に未だに続く抱き合わせ販売では単店は苦しめられる。欲しい台が欲しい台数買えない。

メーカーも販売台数が限られているためにどうしても購買力のある大手が優先される。

そんな状況でも単店が生き残れているのはこの地区に大手ホールがないこと。娯楽がパチンコ以外にないことなどが挙げられる。何よりオーナー自ら毎日事務所に出てお客さんの顔を見ながら重要な仕事は自分でこなしているからだ。

コロナ休業中は内装を改装するなど余力があるところも見せた。






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