生活保護需給率全国トップの西成点描

2020.11.21 / コラム

全国でも生活保護需給率が突出して高いのが大阪市西成区だ。西成区の人口12万人に対して、世帯の3分の1超の約2万6000世帯、住民の5人に1人が生活保護を受給している。生活保護でパチンコを禁止にした兵庫県小野市(人口5万人、生活保護受給120世帯)と比較しても極めて高いことが分かる。

西成区は大阪のディープスポットとも言われている。JR新今宮駅の南側は「あいりん地区」と呼ばれるドヤ街があり、日雇い労務者やホームレスの街でもある。

「生活保護を申請するなら審査が緩い大阪市へ行け」と言わんばかりに、周辺自治体が片道分の交通費を渡して、受給希望者を事実上「たらい回し」するケースまで出ている。ちなみに、西成区には19軒のパチンコ店が営業している。

生活保護支給日には西成区役所や銀行やコンビニATMには生活保護受給者で長蛇の列となる。引き下ろしたおカネを握りしめてそのままパチンコホールへ向かう。稼働率が普段より1.5~2倍にアップするのが西成地区の特徴。“生活保護稼働”は最長で1週間ほどは続く。

支給日の日はパチンコ店内で人間模様が交錯する。行政側から生活保護受給者がパチンコ店に立ち入っていないかを調査する監視役だけではなく、借金の取り立てがパチンコ店に張り込む異様な光景が展開される。

「西成の商圏に1000人のパチンコユーザーがいるとすれば、400人は生活保護です。西成のホールは生活保護で成り立っているといっても過言ではありません」と話すのは某ホールの店長。

生活保護ユーザーとは判別するのは簡単。支給日に酒を飲んで出来上がっているユーザーは間違いなく生活保護受給者。

「生活保護受給者はタン、ツバを吐くのは当たり前。他人のICカードを盗んだり、負けた腹いせに他人に八つ当たりしたり、便器を壊すのは日常茶飯事です。でも、彼らによって稼働、売り上げが上がることも事実。会社から売り上げなどのノルマを課せられている以上、生活保護でもホールとしてはありがたい」と本音も垣間見える。

日本維新の会が生活保護受給者のパチンコやギャンブルを禁止する生活保護法の改正案を2016年12月に参院へ提出している。生活保護費でパチンコが禁止したら、現地のホール関係者はどう受け止めるのだろうか?

「うちの固定客は40人で、支給日には70人に増えます。つまり30人は生活保護受給者ということになりますが、その30人がいなくなれば、店は閉店に追い込まれます」(西成ホール店長)というように、生活保護受給者で西成のホールが成り立っているようだが、状況は概ねどのホールの同じ。このホールでも4割が生活保護受給者だ。

ただ、生活保護受給者は4円、20円の高レートで打つ客はいなく、1円、5スロなどの低レート客ばかり。生活保護でパチンコが禁止になっても影響を受けるのは低レートコーナだ。
 
この界隈で流行っているのが居酒屋カラオケだ。中国人などの比較的若くてきれいな経営者が店をやっているので、この界隈のおっちゃんたちを虜にしている。生活保護で消えるのもこうした飲み代だ。



また、生活保護を受けている人は医療費がただになるため、西成区で開業している病院は、生活保護受給者が最大の上客となっている。医療費が無料なので、気軽に病院へ行けることに付け込んで、病院は必要のない医療行為までやって保険点数を荒稼ぎしている。生活保護受給者によって、パチンコ店と同じように儲かっているのが病院なのだが、こっちはあまり問題視されない。






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