コロナ禍でグランドオープンした地方の駅前小型店舗の現実

2020.08.30 / コラム

今から3年半前、地方の駅前店舗が駅前再開発による区画整理で長期休業に入る。再開発も終わり、グランドオープンの準備も整った。今年4月、新たな建物で満を持して、その日を迎えようとしたが、コロナ禍でオープンを遅らせることになった。

緊急事態宣言が解除され、次のグランドオープンは当初の予定よりも4カ月遅れの8月となった。そして、スロ専が再スタートを切った。

最初のグランドオープンは20年前まで遡る。他県からの初進出店舗で、オープン当初から話題になるほどの高稼働店舗だった。

で、この時期のグランドオープンはどうなのか? 地元のホール関係者がオープンから1カ月の現状を報告する。

「マイジャグⅣを33台、そしてコロナ対策や加熱式煙草エリアを設置するなど満を持してオープンしたものの稼働1割程度の大苦戦が続いています。約20年前開業当時の再来には程遠い状況です。救いは区画整理の助成を受けて建て直せたことでしょうが…」

地方では東京や大阪と違い駅前店(徒歩1分程度)は数えるほどしかなく、まさに郊外大型店中心の時代となっている。

同県のターミナル駅で高稼働を誇っていた駅前店舗2軒でさえも、コロナ禍の回復率は郊外店に比べて劣っている、というから駅前型の厳しさが伝わってくる。

スロ専がある駅は市内でも人口が増加傾向にあるベッドタウン立地にある。にもかかわらず、かつて1日の乗客数が約2万人だった駅は、今は約1万2000人に減少している。

理由は県内最大のターミナル駅へ徒歩12分のところに新駅が完成したからだ。新駅前は広大な土地に大型商業施設の進出やマンション建設ラッシュで発展している。対してスロ専のある駅前は衰退気味の昔ながらの商店街があるだけだ。

そして新駅の1日の乗客数は約1万3000人と抜いてしまった。

さらに新駅から徒歩2~3分のところには、県内ナンバーワン企業の1000台クラスの本館と別館がある。もちろん駐車場は完備されている。

駐車場のないスロ専の集客ターゲットは、まず仕事帰りのサラリーマンだったのだろうが、コロナ禍で寄り道しなくなっている。

スロ専駅の乗降客だったマンモス大学の学生もターゲットだったはずだが、オンライン授業で登校することもなく、下宿生も実家に帰っているのが実情だ。

もちろんコロナ禍のスロ専では昼間の年配客には期待できない。長期休業中に遊技客は一駅先の大型店へ固定化されてしまった可能性もある。

かつては、県内で第3位の乗客数を誇った駅だが、遅すぎた再開発・駅周辺勢力の移行・パチンコ店適正立地の変化・コロナ禍など300台を切るスロ専には悪条件が揃いすぎた。

「20年前に実現できた夢も今となっては儚いものでした」と地元ホール関係者は感想を漏らす。

コロナ収束後の駅前小型店の逆襲を期待したい。




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