コロナ禍で見直される寮
2020.08.18 / コラム厚生労働省によると、新型コロナの感染拡大に関連した解雇や雇止めは、見込みを含めて7月末で約4万人。7月だけでも約1万人増えた。業種別ではホテルや旅館の宿泊業や製造業、飲食業が目立つ。で、観光や飲食業を辞めた人たちが流れているのが、食品加工場が多い。食品関係はコロナ不況とは関係がないため人手はいくらでも必要だ。
コロナ不況が長引けば失業者はさらに増える。そして、職を失うと共に、住むところも失う。
中部地方のホールでバイトをしている女子大生(3年生)は、昼間はコンビニ、夕方から遅番でホールに入っていた。地方出身で生活費は自分で稼いでいた。
ホールは休業要請が出て1カ月以上休業に入った。給料は6割補償してくれたが、たちまち困るのは家賃の支払いだ。
窮状を店長に話すとホールでは使わなくなっていた寮があることを思い出した。それが使えるように会社に掛け合ってくれた。
2階建てで全12室もあった。
会社はどうせ空いているから、と快く使うことを許可してくれた。電気、ガス、水道をすぐに開栓した。卒業するまで寮を使っていいことになった。
ただ、12室もあって住んでいるのは彼女1人だ。物騒なので会社はタイマー設定で全室の電気を点けた。
雇止めがある時代に寮があると強い。
もう一人女性のバイトが入り、寮に入った。
その女性は旅館で仲居を永らくやっていた。旅館は住み込みだったので、旅館の廃業と共に行き場と住むところを失っていた。
寮があるパチンコ店は理想的でもあった。
「仲居さん仲間が職を失っています。仕事もなかなか見つからずに生活保護の申請手続きをしている人もいます。給料は最低時給でもいいから寮のあるところで働きたい、と思っていました。パチンコ店に転職したい仲居さんはまだまだいますよ」
旅館の仲居さんは気配りができて接客も上手なのでホールは適材適所でもある。
かつてのパチンコホールは寮があるのが一般的だった。それは訳ありの人を受け入れやすくするためでもあった。その日から住むところが確保できる。
中には強盗の指名手配犯がいたり、大物政治家の娘が駆け落ちで男と潜り込んだりと多士済々の面子に溢れていた。
それが大卒新卒を採用するようになると、訳ありの人の受け皿だった寮を廃止するようになった歴史がある。
そして、コロナ禍で寮が見直されてきている。