マカオ:中国政府, 8月12日より珠海市で観光ビザ発給再開へ。2週間毎に制限緩和
2020.08.11 / カジノ【海外ニュース】
8月10日、中国政府が、12日より、珠海市(広東省, マカオに隣接)においてマカオへの観光ビザ(個人ビザ-Individual Visa Scheme-, 団体ビザ)発給を再開することが明らかとなった。
マカオ社会文化司長(Secretary for Social Affairs and Culture)の欧陽瑜氏(Ao Ieong U)が記者会見で発表。
珠海市の緩和そのものが与えるマカオゲーミング市場へのインパクトは限定的とみられる。
しかし、今後、広東省、その他地域での観光ビザ発給が進むにつれ、市場は立ち上がる見通し。
中国政府は、2週間ごとにマカオ渡航に関する制限を緩和する流れ。
ビザ・ポリシーは、中央政府の決定事項である。
マカオ市場は、中国本土による渡航ビザ発給が再開され次第、急速に回復するとみられる。回復速度は、世界の中でも最も早いと考えられる。背景は、陸路・水路のアクセスウエイトの高さ(空路でなく、)、近隣住民のカジノ需要の大きさ、など。
カジノ市場は、7月はMOP1,344mn,YoY94.5%減(約179億円)、1-7月計はMOP35,064mn,YoY79.8%減(約4,664億円)であった。
2019年のマカオ訪問者は、3,941万人,YoY10%増。うち、中国本土は71%、香港は19%、台湾は3%、韓国は2%、日本は1%など。
広東省からの訪問者は、全体の33%を占有。
8月11日現在のマカオの入境規制、中国本土からのマカオへの渡航規制は、以下の通り。マカオ市場復活の最大のポイントは、中国本土、とりわけ広東省における観光ビザ発給再開である。
中国政府による規制:
・1月末より、本土住民のマカオへの入境を制限。個人旅行(Individual Visit Scheme)ビザの新規発給、団体旅行ビザとも停止中
マカオ政府のボーダーコントロール(3月25日に導入。その後、一部改訂):
・外国住民(マカオ、中国本土、香港、台湾の住民以外)の入境を禁止
・中国本土、香港、台湾の住民については、
– 過去14日間に海外滞在歴がある住民は入境禁止
– 過去14日間に北京、香港、台湾に滞在歴がある住民は入境可能であるが、14日の医療観察期間(隔離)
– それ以外の住民は入境可能であるが、入境時に感染ネガティブであることを示す証明書(7日以内に発行)を提示
マカオ:中国政府, 8月12日よりマカオ非観光ビザの発給を容認へ。観光用は未定~現地紙
7月30日、マカオ日報(中国語, マカオ有力紙)は、中国政府は、8月12日からの全31省におけるマカオへの非観光用ビザの発給再開を容認したと報じた。
中国各省には、6種類のビザ・スキームがある。個人(Individual visit scheme, IVS)、団体、親戚訪問、ビジネス出張、勉強・仕事、その他の区分。
このうち、個人、団体が観光用の位置づけ。
現在のところ、観光用ビザの再開は未定。
ビザ・ポリシーは、中央政府の決定事項である。
マカオの入境規制、中国本土からのマカオへの渡航規制は以下の通り。マカオ観光市場復活の最大の焦点は、中国本土、とりわけ広東省のマカオへの観光ビザの発給開始タイミングである。
マカオ:カジノ市場 7月YoY95%減, 1-7月計80%減~中国ビザ発給再開待ち。潜在需要大
7月1日、マカオのゲーミング規制当局(Gaming Inspection and Coordination Bureau, DICJ)は、2020年6月のカジノ市場(GGR, Gross Gaming Revenue)を発表。
カジノ市場は、7月はMOP1,344mn,YoY94.5%減(約179億円)、1-7月計はMOP35,064mn,YoY79.8%減(約4,664億円)。
6月までの各月の推移は、1月YoY11.3%減、2月YoY87.8%減、3月YoY79.7%減、4月YoY96.8%減、5月YoY93.2%減、6月YoY97.0%減。
2月以降、カジノ市場はほとんど消失。
マカオの入境規制、および、中国本土の渡航ビザ発給停止が響く。本格回復には、とくに広東省のビザ発給が不可欠。
ただし、マカオ市場は、中国本土による渡航ビザ発給が再開され次第、急速に回復するとみられる。その回復速度は、世界の中でも最も早いと考えられる。背景は、陸路・水路のアクセスウエイトの高さ(空路でなく、)、近隣住民のカジノ需要の大きさ、など。
2019年のマカオ訪問者は、3,941万人,YoY10%増。うち、中国本土は71%、香港は19%、台湾は3%、韓国は2%、日本は1%など。
マカオ カジノ市場(Gross Gaming Revenue)の暦年の動向 ・2014年=MOP351,521mn,YoY2.6%減 ・2015年=MOP230,840mn,YoY34.3%減 ・2016年=MOP223,210mn,YoY3.3%減 ・2017年=MOP265,743mn,YoY19.1%増 ・2018年=MOP302,846mn,YoY14.0%増 ・2019年=MOP292,455mn,YoY3.4%減 2016年9月~2018年12月の前年比プラス要素、マイナス要素 |
マカオ:20年2Q雇用調査 ゲーミング産業雇用は高水準維持~ただしジャンケット健全性懸念
7月27日、マカオ政府統計局(DSEC)は、2020年4-6月の雇用調査(Employment Survey)を発表。
ポイントは、
・ゲーミング&ジャンケット業の従業員数は、82,300人(2019年10-12月比3.3%減)
・マカオ全体の従業員数は、401,900人(2019年10-12月比3.1%増)
・失業率は、一般は2.5%(2019年10-12月比0.8 percentage point上昇)、マカオ住民は3.5%(2019年10-12月比1.2 percentage point上昇)
ゲーミング&ジャンケット業の従業員数は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大懸念発生後も高水準で維持されている。
マカオ政府は、ゲーミング・コンセッション事業者(6事業者に発給)に雇用維持を要請。
ゲーミング・コンセッションは、強力な権益であり、2022年6月26日の満期前に、再入札が予定されていることもあり、事業者は、政府の要請に敏感に対応する。
マカオ市場は、中国本土による渡航ビザ発給が再開され次第、急速に回復するとみられる。その回復速度は、世界の中でも最も早いと考えられる。背景は、陸路・水路のアクセスウエイトの高さ(空路でなく、)、近隣住民のカジノ需要の大きさ、など。
一方、ジャンケットについては、財務健全性、事業の持続性が懸念視されている。ゲーミング&ジャンケット業の従業員数の減少は、ジャンケットの縮小を反映している可能性がある。
20年1月30日時点のライセンス・ジャンケットは、95事業者。前年同時点は、100事業者であった。なお、中国の反腐敗対策以前、2013年同時点には、235事業者であった。
2Q(4-6月)のカジノ市場は、MOP3,234mn,YoY96%減(約437億円)、うち、VIP部門(VIP Baccarat)がMOP1,503mn,YoY96%減(約203億円)、マス部門MOP1,731mn,YoY96%減(約234億円)。
2Qは、VIP部門、マス部門とも前年同期比ベースでほぼ同じトレンドで、構成比は、VIP部門46%、マス部門54%。
マカオ:20年2Q 市場詳細統計 YoY96%減。構成VIP46%,マス54%~構成比は前年と同じ
7月16日、マカオのゲーミング規制当局(Gaming Inspection and Coordination Bureau, DICJ)は、2020年2Q(4-6月)のカジノ市場(Gross Gaming Revenue)の詳細統計を発表。
月次ベースの実績は翌月初に発表済みであり、本統計は市場構成を示す情報となる。
2Q(4-6月)のカジノ市場は、MOP3,234mn,YoY96%減(約437億円)、うち、VIP部門(VIP Baccarat)がMOP1,503mn,YoY96%減(約203億円)、マス部門MOP1,731mn,YoY96%減(約234億円)。
2Qは、VIP部門、マス部門とも前年同期比ベースでほぼ同じトレンドで、構成比は、VIP部門46%、マス部門54%。
2019年(1-12月)のカジノ市場は、MOP292,455mn,YoY3%減(約3兆9,481億円)、うち、VIP部門(VIP Baccarat)がMOP135,228mn,YoY19%減(約1兆8,256億円)、マス部門MOP157,227mn,YoY15%増(約2兆1,226億円)。
2019年の構成比は、VIP部門46%、マス部門54%。
構成比は、中国政府の反腐敗対策以前の2013年には、VIPが66%、マスが34%であった。
コンセッション6事業者のカジノ顧客セグメント別の限界利益(GGRからリベートおよびプロモーショナルアローワンス、GGR課税を控除)の構成比は、VIP部門が約3割、マス部門が7割。
VIP部門は、キャッシュバック・リベート(仲介業者、プレイヤー)負担が大きく、GGRに対する利益率が低い。
2020年6月末のカジノ施設数およびデバイス供給量(稼働ベース)は、施設数41(前年同期末41)、テーブル数5,869台(同6,734台)、スロット数7,595台(同17,638台)。
マカオ:Galaxy 呂志和・議長「1ヵ月以内に入境制限緩和の可能性」~香港間の往来再開へ
6月10日、Galaxy Entertainment Groupは、年次株主総会を開催。
呂志和(Lui Che woo) 取締役会議長が、メディアに対応。主な発言は以下の通り。
「一ヵ月以内に、マカオは、入境制限を緩和する可能性がある」
「同社は、ゲーミングコンセッションに再入札(*)に参加するだろう。政府の方針決定を見守る」
(*)マカオの全社のゲーミングコンセッションは、2022年6月26日に満期。再入札は、満期前に実施見通し
また、同席したフランシス・ルイ(Francis Lui)取締役会副議長は、以下を発言。
「デイリーのオペレーティングコストは、US$2.8mn(3億円)」
「Galaxy Macau 第3期, 4期の工事進行は遅れない」
呂志和氏は、マカオを代表する実業家であり、マカオ政府、中国政府に強いネットワークを有する。
マカオでは、早期に、グレーターベイエリア、すなわち香港、広東省との間のボーダーコントロール緩和発表があるとの期待が高まっている。
マカオ:新型肺炎 25日, 海外渡航歴ある中華圏住民の入境も制限~中華圏住民以外は全面禁止
3月25日より、マカオ政府は、中国本土、香港、台湾の住民のうち、過去2週間に海外渡航歴を持つ住民の入境を禁止。禁止期間は未定。
マカオ政府は、18日より、マカオ住民以外(住民ID保有者以外)のマカオ入境の禁止措置を導入した。禁止期間は未定。
当初、中国本土、香港、台湾の住民、および、非居住外国人労働者(ブルーカード保有者)は禁止措置の例外とした。
19日には、非居住外国人労働者(ブルーカード保有者)の例外指定を取り消した。
ゆえに、現在では、マカオ政府が入境を認めるのは、グレーターチャイナ(中国本土、香港、マカオ、台湾)の住民のみとなる。
2019年のマカオ訪問者は、3,941万人,YoY10%増。うち、中国本土は71%、香港は19%、台湾は3%、韓国は2%、日本は1%など。
マカオ 新型肺炎(COVID-19) 対策
<入境制限> <カジノIR施設運営> |
マカオ:MGTO 年次発表 2019年訪問者数, 3,940万人,YoY10%増~港珠澳大橋が貢献
1月15日、マカオ政府観光局(Macao Government Tourism Office)は、年次プレスカンファレンスを開催し、観光産業政策の2019年レビュー、2020年の目標などを発表。
ポイントは、
・2019年の訪問者数実績(速報)は、3,940万人,YoY10.1%増
・発地別の内訳は
– 中国本土2,700万人強,YoY10.5%増
– 香港730万人,YoY16.2%増
– 台湾100万人強,YoY0.2%増
– それ以外(国際)310万人,YoY2.8%減
・2018年10月24日に開通した港珠澳大橋(Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridge, HKZM, 香港、珠海市、マカオを結ぶ)が貢献
・”Macao Tourism Industry Development Master Plan”に基づき、持続的かつ多様性を持つ観光都市を目指す
・”食の創造都市”の戦略を推進
マカオ ゲーミング・コンセッション(カジノ営業権)満期, 再入札
マカオ:DICJ長官就任式 政府,営業権再入札準備に注力中~ホー家3,米系3の行方が焦点
6月10日、マカオゲーミング管理当局DICJ(The Gaming Inspection and Coordination Bureau)のアドリアーノ・ホー・長官の就任式典があった。アドリアーノ・ホー氏は、パオロ・マルティンス・チャン氏の後任となる。
アドリアーノ・ホー・DICJ長官は、スピーチで、オペレーション監視におけるテクノロジーの活用を強調。
一方、経済財政長官の李偉農(Lei Wai Nong)は、ゲーミングコンセッション再入札、ゲーミング法改正に言及。
・マカオ政府は、ゲーミングコンセッションの再入札の準備に注力
・ゲーミング法制改正のパブリックコンサルテーションは、必要な時期に実施へ
4月20日、賀一誠・マカオ特別区行政長官は、2020年後半にゲーミング法改正に関するパブリックコンサルテーションを実施する方針を明らかにした。
同時に、改めて、次回のゲーミング・コンセッション(カジノ営業権)の発給プロセスは、新規再入札であり、自動更新ではないことを強調。
今後、パブリックコンサルテーションの後、コンセッションの満期(2022年6月26日)の前に、再入札が実施されることになる。
ゲーミング・コンセッションの再入札における焦点は、何社分が発給されるか、現有コンセッション保有者の喪失の可能性、新規事業者の参入の可能性。
とくに、スタンレー・ホー氏の逝去が与える、同ファミリーが深く関与する3コンセッション(SJM Holdings, Melco Resorts & Entertainment, MGM China)への影響、そして、米中関係が与える米系3コンセッション(MGM China, Sands China, Wynn Macau)への影響が注目される。
また、ゲーミング法改正は、ゲーミング・コンセッションの再入札に加え、ジャンケット、サテライトカジノなど現行制度の規定が不十分と考えられる領域をクリアにする見通し。
マカオでは、6社(中国系3社、米国系3社)がゲーミング・コンセッション(サブ・コンセッションを含む)を所有しており、すべて2022年6月26日に満期を迎える。
政府は、ゲーミング・コンセッション再入札(更新ではない、)が、現行営業権の満期(2022年6月26日)前に実施する方針。
マカオでは、コンセッション保有者(および、コンセッション保有者とサービスアグリーメントを締結した事業者)のみが、カジノ運営を許可される。コンセッションは、強大な権益であり、6社の企業価値を支える原動力である。
図表:マカオ カジノ運営6事業者のコンセッション 満期日
コンセッション満期日 | 事業者 | 証券取引所 | カジノ施設数 | 獲得順 |
---|---|---|---|---|
2022年6月26日 | SJM Holdings | 香港証券取引所 | 22 | 1 |
2022年6月26日 | Wynn Macau | 香港証券取引所 | 2 | 2 |
2022年6月26日 | Galaxy Entertainment | 香港証券取引所 | 6 | 3 |
2022年6月26日 | Sands China | 香港証券取引所 | 5 | 4(サブ) |
2022年6月26日 | MGM China | 香港証券取引所 | 2 | 5(サブ) |
2022年6月26日 | Melco Resorts & Entertainment | NASDAQ | 4 | 6(サブ) |
注1:カジノ施設数は2020年3月末時点
注2:2019年3月15日、マカオ政府はSJM Holdingsのコンセッション(MGM China Holdingsのサブ・コンセッション)の満期日を、2020年3月31日から2022年6月26日に延長を承認
注3:(サブ)はサブコンセッション。Sands ChinaはGalaxy Entertainmentより、MGM ChinaはSJM Holdingsより、Melco Resorts & EntertainmentはWynn Macauより取得
マカオ:スタンレー・ホー氏が逝去~業界, 家族の勢力図変化, 営業権再入札の行方注目
5月26日、中国中央テレビ(CCTV, China Central Television)は、スタンレー・ホー氏(98歳)が26日に逝去したと報じた。
スタンレー・ホー氏は、1962年にマカオにおけるカジノ独占権を獲得。2002年の市場開放後、SJM Holdingsの経営トップとなった。2009年に自宅における転倒事故を機に、SJM Holdinsgの日々のマネジメント業務から引退。2018年6月12日、SJM Holdingsの株主総会で、経営トップ(会長、エグゼクティブダイレクター)を辞任し、新設された名誉会長のポストに就いた。
スタンレー・ホー氏は、4人の夫人との間に、17人の子息をもうけた(15人が存命)。
夫人、子息のうち、マカオのカジノ産業で大きな存在感を持つのは、
・アンジェラ・リョン氏(第四夫人):SJM Holdingsの共同会長
・パンジー・ホー氏(第二夫人の長女):MGM Chinaの第二位株主。Shun Tak Holdingsの会長
・デイジー・ホー氏(第二夫人の次女):SJM Holdingsの共同会長
・ローレンス・ホー氏(第二夫人の長男):Melco Resorts & EntertainmentのCEO
今後のマカオ、ホーファミリーの勢力図の変化の可能性が注目される。
ポイントの一つは、SJM Holdingsの支配の行方。2009年以降、スタンレー・ホー氏の後継、SJM Holdingsの支配をめぐって、家族間の争いがあったとされる。
直近では、2019年1月23日、パンジー・ホー氏(スタンレー・ホー氏と第二夫人の長女)、ヘンリー・フォック基金(スタンレー・ホー氏の創業パートナー一族)は、SJM Holdingsの支配について協調することで合意したと発表。
マカオ:SJM Holdings 親会社STDMの支配で合意。パンジーホー氏とフォック基金
もう一つは、ゲーミングコンセッションの再入札の行方。現在、ホー・ファミリーは、コンセッション保有3社に大きく関係している。その3社が、再入札後にコンセッションを維持できるか注目される。
マカオ:行政長官 カジノ営業権再入札プロセスに言及~21-22年前半。改めて”更新”否定
4月20日、賀一誠・マカオ特別区行政長官は、2020年後半にゲーミング法改正に関するパブリックコンサルテーションを実施することを明らかにした。
同時に、改めて、次回のゲーミング・コンセッション(カジノ営業権)の発給プロセスは、新規再入札であり、自動更新ではないことを強調。
今後の流れは、ゲーミング産業の中期レビュー・レポートの分析、パブリックコンサルテーション、ゲーミング法改正、ゲーミング・コンセッション再入札の実施となる。
新型肺炎(COVID-19)の影響で、作業は遅れ気味であるが、2020年後半にパブリックコンサルテーションを実施予定。
ゲーミング・コンセッションの再入札における焦点は、何社分が発給されるか、現有コンセッション保有者の喪失の可能性、新規事業者の参入の可能性。
2019年4月19日、崔世安・前行政長官は、政府として、ゲーミング・コンセッション再入札が、現行営業権の満期(2022年6月26日)前に実施されること、延長オプションを行使しない方針を明らかにした。
現在のゲーミング法では、行政長官は、その権限により、ゲーミング・コンセッションの最大5年間の延長が可能。
マカオ:習近平主席, 経済政策言及せず/賀一誠長官, 大湾区構想, MICE, 文化産業育成
12月20日、習近平・国家主席は、マカオ返還20周年記念式典、新マカオ行政長官就任式典に出席し、演説を行った。
習近平・国家主席の演説は、「一国二制度」など政治面が主体で、当初予想されたマカオの経済発展に関する新政策に関する具体的な提示はなかった。また、カジノIR産業に関する言及もなかった。
一方、賀一誠(Ho Iat Seng)・行政長官は就任演説にて以下を述べた。
「グレーターベイエリア構想(香港・マカオ・広東省沿岸部)を推進」
「我々は、MICE、文化クリエイティブ、最新テクノロジー、医療に注力する」
12月12日、ロイターは、習近平・国家主席が、20日にマカオの新経済政策群、金融センター、ビジネスセンター、MICEセンター化を発表するとレポート。
中国政府が、これまで香港に優先的に付与してきた地位と政策サポートを、マカオにも展開する可能性を指摘。
ロイターは、新政策群として、証券取引所(元ベース)の設置、新規の土地の割当などを挙げた。
中国政府は、国営銀行・企業に、マカオにおける金融インフラの設置をサポートさせる方針。
一方、新規に割り当て用地は、広東省珠海の橫琴島で、教育、医療の拡充に利用される見通し。現在、橫琴島は、一部の土地がマカオに供されており、2013年、マカオ大学キャンパスがオープンした。
習近平・国家主席は、18-20日でマカオに滞在し、20日にマカオ返還20周年記念式典、次期マカオ行政長官就任式典に出席した。
12月13日、マカオ政府統計局は、「Analysis Report of Statistical Indicator System for Moderate Economic Diversification of Macao 2018」を発表。
2018年のマカオ経済付加価値において、「Gaming & junket activities」のシェアは50.52%、安定拡大基調が続く。
マカオ:特別行政区トップ人事 両長官「カジノ営業権再入札, 既得権より公益性を重視」
12月1日、中国政府は、マカオ特別行政区の新体制の要職人事を発表。経済財政庁長官には、李偉農(Lei Wai Nong, 50)が任命された。経済財政庁長官は、ゲーミング産業を管轄する。
賀一誠(Ho Iat Seng, 62)を行政長官とする新体制は、12月20日に発足予定。任期は、5年。
なお、現在の体制は、行政長官は崔世安(Fernando Chui Sai On, 2009年就任)、経済財政庁長官は梁維特(Lionel Leong Vai Tac, 2014年12月就任)。
新体制の重要タスクは、カジノ営業権(カジノ・コンセッション)満期(2022年6月)に伴う制度設計、法改正、再入札の事務である。
12月2日、賀一誠、李偉農、両氏がプレスコンファレンスにて以下をコメント。
賀一誠氏
「今後、政府は、ゲーミング法改正案を議会に提出し、議決を得る」
「法改正後、カジノ営業権の再入札の要件、詳細を公表する」
李偉農氏
「ゲーミング産業には、さまざまな主体が関わり、既得権益がある。しかし、政府は、公益性を重視する」
「政府は、現行コンセッション契約(20年前に整備)を精査する。そのうえで、制度を修正、課題を解決する」
賀一誠氏は、親中派であり、中国・全国人民代表大会(国会)の常務委員、マカオの立法会議員および議長などを経験。
マカオでは、過去20年、親中国派が長官ポストを歴任。行政長官は、各界代表の選挙委員会(400人)の投票で決定するが、委員会メンバーは親中派で固められている。
マカオ:政府,カジノ営業権満期に伴う再入札準備~21年実施予想も。日本営業に影響
4月19日、崔世安(Fernando Chui Sai On)・マカオ特別行政区行政長官は、議会にて、カジノ営業権(ゲーミング・コンセッション)の再入札が、現行営業権の満期(2022年6月26日)前に実施されること、すなわち現行営業権の延長オプションを行使しない方針を明らかにした。
続いて、5月11日、梁維特(Lionel Leong)・マカオ特別行政区経済財政庁長官は、カジノ営業権(コンセッション)満期後の方針について言及。ポイントは、
・改めて、”更新(Renewal)”ではなく、”新規入札(New Public tender)”を実施する方針を強調
・政府は、現在、入札実施に向けた法的な準備を進めている(ゲーミング法および関連規制の改正など)
・入札、すなわち事業者選定では、マカオの観光レジャーセンター化への貢献、ノンゲーミング強化などに重点を置く
一方、5月に入り、マカオのゲーミング法専門家であるJorge Godinho氏(マカオ大学・法学部客員教授, リーガルコンサルタント)は、”新規入札”が2021年に実施されると予想。
マカオでは、コンセッション保有者(および、コンセッション保有者とサービスアグリーメントを締結した事業者)のみが、カジノ運営を許可される。コンセッションは、強大な権益であり、6社の企業価値を支える原動力である
再入札の焦点は、コンセッション数の増減、現有コンセッション保有者の退出、新規事業者の参入、など。
マカオのカジノ営業権の”新規入札”は、日本におけるIR区域整備計画の選定認定(国による都道府県等と事業者の決定)の時期と一致する可能性がある。その場合、マカオの現行カジノ営業権保有者は、その喪失リスクを抱えた中で、日本参入営業を展開せざるを得ない。
ゲーミング・コンセッションに関して、現行法、契約(政府-事業者間)が規定するポイントは以下の通り。
・現行コンセッション満期後、新規コンセッションは、フレッシュな入札プロセス(Public Tender)を通じて付与
(政府は、繰り返し、”更新”ではない点を強調)
・現行ゲーミング・コンセッションは、最大5年間の延長が可能
(2019年4月、政府は延長しない方針を表明)
・政府は、2017年より、現行ゲーミング・コンセッションを早期償還できる権利を持つ
(現在まで、政府は権利行使について言及なし)
・現行ゲーミング・コンセッション保有者は、それを喪失した場合、カジノ施設を、対価なしに、マカオ政府に移管する義務
(カジノ施設の喪失は、事業性の観点から、自動的に全施設の喪失を意味する)
2017年央、政府高官は、初めて、”新たな入札(New Tender)”という表現を用いた。その発言は、現コンセッション保有6事業者に激震を与えた。
それまで、政府関係者は、”更新(Renewal)”と表現し、6事業者はそこに満期後も現状維持のニュアンスを感じ取っていた。
政府が”新たな入札”と表現したことで、事業者再募集・選定、入れ替えのニュアンスを読み取ったわけだ。
マカオ 開発動向
マカオ:政府 LRTタイパ線,12月10日開業。港珠澳大橋に続く交通網拡充~三菱重工が施行
12月10日、マカオ政府は、LRT(Light Rapid Transit)タイパ線を営業開始。マカオ初の軌道交通。
営業開始区間は、タイパ線と呼ばれる。長さは9.3Km、11駅の構成で、両端はタイパ・フェリーターミナル駅から海洋駅(オーシャン駅)。タイパ・フェリーターミナル、マカオ国際空港、コタイ地区IR群を結ぶ。
タイパ線の工事は、2012年に開始し、2018年3月からテスト運転のフェーズにあった。建設費用は、約110億マカオパタカ(約1,500億円)。
なお、LRT全体計画は、21Kmでマカオ半島線を含む。マカオ半島線は、ルート調整段階。マカオ政府は、タイパ線とマカオ半島線の接続を2024年までに実現したい意向。
12月10日、三菱重工業は、グループの三菱重工エンジニアリングが、マカオ政府に、LRT向け全自動無人運転車両システム(Automated Guideway Transit:AGT)の建設工事を完成させ、9月にマカオ政府に引き渡したと発表。
2011年3月3日、三菱重工業は、伊藤忠商事と共同で、LRT一式を受注したと発表。受注額は46億8,800万マカオパタカ(約630億円)。受注範囲は、駅舎と土木工事を除くLRTシステム一式で、APM車両(110両)、供電設備、通信システム、軌道工事、検修設備、ホームドア、料金機械など。
ちなみに、同システムは、東京都の「ゆりかもめ」と同じ。
LRTは、新タイパ・フェリーターミナル(Pac On ferry terminal, 2017年6月開業。タイパ・フェリー線は、2007年10月以降、臨時ターミナルであった)、港珠澳大橋(Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridge, HKZM)に続く、マカオの交通インフラの拡充の位置づけ。
香港-マカオの交通アクセスについては、2018年10月24日に、香港、珠海市、マカオを結ぶ、港珠澳大橋(Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridge, HKZM)が開通。
港珠澳大橋は、全長55Km(主体部分36Km)と世界最長の海上橋であり、香港、珠海、マカオを結ぶ。工費は、全体で約1兆6,000億円、メイン区間は約8,000億円。
専門家は、港珠澳大橋は、2022年には年間500万人前後を輸送し、訪問者拡大に大きく貢献すると予想。
港珠澳大橋は、香港-マカオ間の移動を30~45分(橋の走行時間)。香港-マカオ間の片道バス料金は、HK$160~190とフェリーと同水準に設定された。
港珠澳大橋のマカオ側のチェックポイントでは、IR事業者の共同シャトルバスが、二つのフェリー乗り場まで運行(フェリー乗り場からは各社別のシャトル)。
港珠澳大橋の開通まで、香港-マカオ間の移動は、実際上、海路(高速フェリー:海上の移動時間は1時間強)に限定された。
マカオへの訪問者数は、2018年には3,580万人(YoY9.8%増)。うち、交通路別には、陸上路が62%、海上路が29%、空路が9%であった。
マカオ:コタイ地区IR開発アップデート~Lisboa Palace,20年2H開業。計画策定3施設(新規土地利用)
10月3日、SJM Holdingsの副議長CEOであるAmbrose So Shu Fai氏は、Grand Lisboa Palaceの開業時期について、直近見通し2020年下期が変わっていないことを強調した。
同プロジェクトは、天候不順を含む様々な困難により、進行が遅れてきた経緯がある。
コタイ地区では、2007年8月のThe Venetian Macao開業から2018年2月のMGM Cotaiまで、10の大型IRが開業した。
現在、建設作業が進行中の新規開発計画(新規土地利用)は、Grand Lisboa Palace。Grand Lisboa Palaceの開業により、コンセッション6社すべてがコタイ地区に進出することになる。
Grand Lisboa Palace(SJM Holdings)
・建設作業は、2014年2月に開始
・2020年下期の開業見通し
<施設概要>
・総開発費=390億香港ドル(約5,500億円)
・延べ床面積=約52万㎡(加えて、駐車エリアは約7.7万㎡)
・ホテル=合計2,000室(Grand Lisboa Palace, Palazzo Versace, Karl Lagerfeld)
・MICE、飲食、ショッピング、カジノなど
一方、計画策定フェーズ(新規土地利用)は、Galaxy Macau第3期&4期, Studio City第2期, Wynn Palace拡張1期がある。
Galaxy Macau 第3期&4期(Galaxy Entertainment Group)
・近く正式計画を公表へ
<施設概要>
・開発費=430億香港ドル以上(約6,020億円以上)
・延べ床面積=100万㎡レベルを想定
・ホテル=約4,500室
・MICEは3,700㎡、アリーナ16,000席、飲食、カジノなど
・ファミリー・エンタテインメント、MICEを強調
Studio City第2期(Melco Resorts & Entertainment)
・プロジェクト予算は、13.5億ドルから14億ドルを想定
・ホテル2棟(計900室)、ゲーミングエリア
・ウォーターパーク、飲食、リテイル、MICE、シネプレックスなど
Wynn Palace拡張1期-南区画(Wynn Macau)
・初期投資額20億ドル(約2,160億円)
・土地面積3ha
・プロパティ名”Crystal Pavilion”
・ホテル棟は約650室
・2021年後半に着工。工期は36ヵ月強