Genting Group マカオ営業権再入札参加の可能性~20年来,悲願。Wynn買収検討も~現地報道
2020.07.30 / カジノ【海外ニュース】
7月28日、マカオ現地メディア(Macau Daily Times)は、Genting Groupが、マカオのゲーミング・コンセッション(カジノ営業権)の再入札に参加する可能性があると報じた。
マカオのゲーミング・コンセッション(カジノ営業権)は、現在、6事業者が保有するが、2022年6月26日に満期を迎える。マカオ政府は、満期前に再入札を実施する方針。
Genting Groupは、2002年に実施されたマカオ・ゲーミングコンセッションの入札に参加し、選定されなかった経緯がある。
また、Genting Groupは、2018年3月にWynn Resortsの買収を通じて、マカオ参入を検討した。なお、その後、Galaxy Entertainment Groupが、Wynn Resortsの株式の5%を取得した。
現在、Genting Hong Kongは、現地子会社Treasure Island Entertainment Companyを通じ、マカオ半島の南湾湖(ナムヴァン湖, Nam Van Lake)に接する土地に、カジノを伴わないホテル、暫定名称“Resorts World @ Macau” を建設中。
同ホテルは、2022年に開業予定。
Genting Hong Kong、Genting Berhadは、リム・ファミリー(Lim Family)をオーナーとする兄弟会社の関係にある。
Genting Hong Kongは、クルーズを主業としつつ、フィリピンの国際IR事業者Travellers International Hotel Group(Resorts World Manilaなど)の株式を49%所有し、持分法対象関連会社とする。
Genting Hong Kongの筆頭株主は、Golden Hopeであり、株式所有は70.8%(Genting Groupのオーナー一族Limファミリーの資産管理会社)。
Genting Berhad(IR事業運営を主業とするGenting Malaysia, Genting Singaporeを連結子会社とする)の筆頭株主は、Kien Huatであり、株式所有は約43%(Genting Groupのオーナー一族Limファミリーの資産管理会社)。
マカオ ゲーミング・コンセッション(カジノ営業権)満期, 再入札
マカオ:DICJ長官就任式 政府,営業権再入札準備に注力中~ホー家3,米系3の行方が焦点
6月10日、マカオゲーミング管理当局DICJ(The Gaming Inspection and Coordination Bureau)のアドリアーノ・ホー・長官の就任式典があった。アドリアーノ・ホー氏は、パオロ・マルティンス・チャン氏の後任となる。
アドリアーノ・ホー・DICJ長官は、スピーチで、オペレーション監視におけるテクノロジーの活用を強調。
一方、経済財政長官の李偉農(Lei Wai Nong)は、ゲーミングコンセッション再入札、ゲーミング法改正に言及。
・マカオ政府は、ゲーミングコンセッションの再入札の準備に注力
・ゲーミング法制改正のパブリックコンサルテーションは、必要な時期に実施へ
4月20日、賀一誠・マカオ特別区行政長官は、2020年後半にゲーミング法改正に関するパブリックコンサルテーションを実施する方針を明らかにした。
同時に、改めて、次回のゲーミング・コンセッション(カジノ営業権)の発給プロセスは、新規再入札であり、自動更新ではないことを強調。
今後、パブリックコンサルテーションの後、コンセッションの満期(2022年6月26日)の前に、再入札が実施されることになる。
ゲーミング・コンセッションの再入札における焦点は、何社分が発給されるか、現有コンセッション保有者の喪失の可能性、新規事業者の参入の可能性。
とくに、スタンレー・ホー氏の逝去が与える、同ファミリーが深く関与する3コンセッション(SJM Holdings, Melco Resorts & Entertainment, MGM China)への影響、そして、米中関係が与える米系3コンセッション(MGM China, Sands China, Wynn Macau)への影響が注目される。
また、ゲーミング法改正は、ゲーミング・コンセッションの再入札に加え、ジャンケット、サテライトカジノなど現行制度の規定が不十分と考えられる領域をクリアにする見通し。
マカオでは、6社(中国系3社、米国系3社)がゲーミング・コンセッション(サブ・コンセッションを含む)を所有しており、すべて2022年6月26日に満期を迎える。
政府は、ゲーミング・コンセッション再入札(更新ではない、)が、現行営業権の満期(2022年6月26日)前に実施する方針。
マカオでは、コンセッション保有者(および、コンセッション保有者とサービスアグリーメントを締結した事業者)のみが、カジノ運営を許可される。コンセッションは、強大な権益であり、6社の企業価値を支える原動力である。
図表:マカオ カジノ運営6事業者のコンセッション 満期日
コンセッション満期日 | 事業者 | 証券取引所 | カジノ施設数 | 獲得順 |
---|---|---|---|---|
2022年6月26日 | SJM Holdings | 香港証券取引所 | 22 | 1 |
2022年6月26日 | Wynn Macau | 香港証券取引所 | 2 | 2 |
2022年6月26日 | Galaxy Entertainment | 香港証券取引所 | 6 | 3 |
2022年6月26日 | Sands China | 香港証券取引所 | 5 | 4(サブ) |
2022年6月26日 | MGM China | 香港証券取引所 | 2 | 5(サブ) |
2022年6月26日 | Melco Resorts & Entertainment | NASDAQ | 4 | 6(サブ) |
注1:カジノ施設数は2020年3月末時点
注2:2019年3月15日、マカオ政府はSJM Holdingsのコンセッション(MGM China Holdingsのサブ・コンセッション)の満期日を、2020年3月31日から2022年6月26日に延長を承認
注3:(サブ)はサブコンセッション。Sands ChinaはGalaxy Entertainmentより、MGM ChinaはSJM Holdingsより、Melco Resorts & EntertainmentはWynn Macauより取得
Genting Berhad 企業集団構成およびIR事業業績
Genting Berhad:3つのエンティティがIR事業推進。日本はGenting Singaporeが担当
Genting Groupでは、3つのエンティティがそれぞれIR事業を推進する。
日本については、日本政府がシンガポールの制度設計を参考とすることから、その実績を有するGenting Singaporeに担当させる方針。
<Genting Berhad(マレーシア)>
・主な施設:NA
・開発計画:Resorts World Las Vegas(米国ネバダ州ラスベガス・ストリップ)
<Genting Malaysia(マレーシア)>
・主な施設:Resorts World Genting(マレーシア), Resorts World Birmingham(英国), Resorts World New York city(米国ニューヨーク州), Resorts World Bimini(バハマ)
・開発計画:Resorts World Gentingの大型アップデート
<Genting Singapore(シンガポール)>
・主な施設:Resorts World Singapore(シンガポール)
・開発計画:Resorts World Singaporeの大型アップデートおよび日本における開発機会追求
Genting Malaysia 20年度1Q 最終赤字104億円~RWG,米英とも閉鎖中。20年中,逆境予想
5月21日、Genting Malaysiaは、2020年1Q業績を発表。
2020年度1Qの調整後EBITDAは89億円,YoY48%減, 株主帰属当期損益は104億円の赤字。
同社の主力は、マレーシアResorts World Genting。欧米に施設展開する。
Gentingグループの日本IR参入については、Genting Singaporeに担当させる方針。同社は、グループ構成員として、Genting Singaporeをサポートする立ち位置。
なお、2019年より、マレーシア政府は、Resorts World Genting(国内唯一のカジノ施設を含む)のGGR課税率を25%から35%に引き上げた。
新型コロナウイルス(COVID-19)による影響および見通しのポイントは、以下の通り。
同社は、2020年は、施設が再開されたとしても、経済情勢、消費マインドの悪化により、逆境と予想。
<マレーシア>
・Movement Control Order(MCO)は、3月18日に開始。政府は、徐々に経済を再開、MCO緩和中
・Resorts World Genting(および、国内リゾート)は、3月18日より現在まで閉鎖中
・屋外テーマパークの開発スケジュールは、MCOの影響を反映し、再設定中
<米国>
・Resorts World Casino New York City、Resorts World Catskillは、3月17日より現在まで閉鎖中
・Resorts World Casino New York Cityの拡張工事は停止中
<英国エジプト>
・英国のResorts World Birminghamおよびランドカジノ全施設は、3月26日より現在まで閉鎖中。エジプトも現在まで閉鎖中
・オンラインGentingBetは、営業中
2020年度業績(1-3月)RM=マレーシアリンギット:
・売上高RM1,956mn,YoY29%減, 調整後EBITDA RM355mn,YoY48%減, 株主帰属当期損益RM418mnの赤字(前年同期RM268mnの黒字)
・円換算は、売上高489億円、調整後EBITDA 89億円、株主帰属当期損益104億円の赤字
<セグメント別>
・Leisure & Hospitality
– Malaysia = 売上高RM1,225mn,YoY36%減, 調整後EBITDA RM331mn,YoY40%減
– UK & Egypt = 売上高RM371mn,YoY11%減, 調整後EBITDA RM23mn,YoY44%減
– US & Bahamas = 売上高RM321mn,YoY13%減, 調整後EBITDA RM15mn,YoY78%減
財務状況:ネット有利子負債(2020年3月末):
・ネット有利子負債=RM4,420mn(約1,105億円)
– 現預金計=RM6,513mn, 短期保有有価証券=RM783mn
– 有利子負債=RM11,715mn(借入金RM10,872mn, リース債務RM843mn)
2019年度業績(1-12月)RM=マレーシアリンギット:
・売上高RM10,407mn,YoY5%増, 調整後EBITDA RM2,641mn,YoY8%減, 株主帰属当期利益RM1,395mn(前期RM20mnの赤字)
・円換算は、売上高2,602億円、調整後EBITDAは660億円、株主帰属当期利益349億円
<セグメント別>
・Leisure & Hospitality
– Malaysia = 売上高RM7,067mn,YoY7%増, 調整後EBITDA RM2,048mn,YoY11%減
– UK & Egypt = 売上高RM1,676mn,YoY6%減, 調整後EBITDA RM232mn,YoY27%増
– US & Bahamas = 売上高RM1,469mn,YoY6%増, 調整後EBITDA RM289n,YoY5%減
Genting Singapore 20年度1Q EBITDA 110億円,YoY半減~財務力強調, 横浜RFP参加予定
5月13日、Genting Singapore(シンガポール証券取引所)が2020年度1Q事業概況を発表。
2020年より、シンガポール証券取引所は、四半期決算報告の義務を解除。会社は、四半期のビジネスオーバービュー(事業概況)を発表する。
新型コロナウイルス(COVID-19)についての会社側コメントは以下の通り。
・影響は、1月後半から表面化し、3月末に向かって厳しさを増した
・政府サーキットブレーカー策で、Resorts World Sentosaは4月7日(カジノ部門6日)から6月1日まで閉鎖予定
・営業停止は、さらに継続される可能性がある。再開した場合でも感染防止策は業況回復ペースを緩やかとしよう
日本戦略についての会社側コメントは以下の通り。
・強い財務力は、Resorts World Sentosaおよび海外への成長機会への取り組みを可能とする
・日本では、横浜市のRFCに参加済み。2020年後半の横浜市のRFPに参加予定
(会社は、2019年度決算発表後、日本におけるIR事業コンソーシアムを9-10月に組成したいと述べた)
なお、2月4日、Genting Singaporeは、株主総会を開催。日本IR開発方針の提案が可決された。方針とは、
・一つ、または複数エリアに提案する可能性。ただし、最初の7年間は一つのIRプロジェクトの開発運営のみ
・大都市のみをターゲット。大阪府、横浜市、東京都(これまでに大阪府、横浜市のRFCに参加)
・投資額は、最大100億米ドル(約1.1兆円)
2020年度1Q事業概況(1-3月) S$=シンガポールドル:
・売上高S$407mn,YoY36%減, 調整後EBITDA S$147mn,YoY55%減
・円換算は, 売上高305億円, 調整後EBITDA 110億円
(参考)2019年度4Q累計業績(1-12月) S$=シンガポールドル:
・売上高S$2,480mn,YoY2%減, 調整後EBITDA S$1,190mn,YoY3%減, 営業利益S$863mn,YoY11%減, 当期利益S$689mn,YoY9%減
・円換算は, 売上高1,959億円, 調整後EBITDAは940億円, 営業利益682億円, 当期利益544億円
(参考)2019年12月末 財務状況 S$=シンガポールドル:
・ネットキャッシュ S$3,687mn(現金および現金等価物S$3,947mn, 借入金S$261mn)
・円換算は, ネットキャッシュ2,912億円