バブルで弾けたりんくうタウン開発構想と似てきたIR

2020.07.15 / コラム

IRカジノ狂騒曲は、関空の開業に合わせて1988年頃狂騒曲に沸いたりんくうタウンの時と恐ろしいまでに似てきた。

関空から連絡橋を渡った対岸の埋め立て地がりんくうタウンは「現代の宝島」と持て囃され日本を代表する企業グループが次のように構想を発表した。

住友グループの「エクステージ・キャンパス・ネオ・オオサカ」構想
住友商事、住友生命、住友信託銀行、住友銀行の住友グループ4社の構想。タワー1が地上60階以上高さ250m以上、タワー2が地上30階以上高さ150m以上の超高層ビルで、総工費2000億円以上をかけて1995年春までに完成予定と発表。

伊藤忠・サントリーなど14社の「ゲート・シティ」構想
伊藤忠商事、第一勧業銀行、JR西日本、サントリー、日本長期信用銀行など有力14社の構想。65階建て、高さ260mの超高層ビルを中心に国際文化情報交流都市を建設、総事業費は2000億円の予定。

日本生命グループの「グローバル・フェスタ」構想
日本生命を中心に三和銀行、西武セゾングループ、マリオットホテル、高島屋、南海電鉄、サントリーなど大手7社の構想。直径210m高さ60mの世界初の透明ドーム「クリスタルドーム」を中心に56階建て、高さ210mのツインホテルと30階建てのツインオフィスビルを計画し、総投資額は1200億円を予定。

三菱・近鉄グループの「グローバル・コミニケーションプラザ」構想
三菱・近鉄両グループ12社の構想。50階建て、高さ210mの超高層ビルを中心にホテル、ショッピング施設、イベント空間を備えた施設を計画し、総工費は1000億円 を予定。

三井不動産の「ワールド・インテリジェント・シティ」構想
三井不動産、デザック、千代田生命、神戸製鋼、三井不動産販売の大手5社の構想。50階建て、高さ240mの超高層ビルと40階建ての高層ホテル、5000人収容の国際会議場などを計画し、総工費は950億円を予定。

朝日住建の地上50階建てビルやホテル建設構想
朝日住建、三井信託銀行など8社の構想。50階建て、高さ205mの超高層ビルと30階建てのビルを中心に4000人の会議施設を持つ都市型ホテルなどを計画し、総投資額は1500億円で完成は1993年を予定。

芙蓉グループ・松下電器産業 の「リブル・シェール」構想
丸紅、富士銀行、松下電器産業、久保田鉄工など大手10社の構想。ホテル、オフィスビル、研究開発、貿易などそれぞれの機能を持った4棟のビルを計画し、総工費は1000億円を予定。

大阪府企業局が整備した埋め立て地は、開港前夜、一大国際交流都市を建設する構想が各企業グループから構想が発表されたものだった。

各企業グループの計画では高層ビル群が林立し、10万人が働き、遊ぶ都市…。地元は「現代の宝島」の誕生を思い描いた。しかし、バブルの崩壊によって全てが弾け飛んだ。進出を予定した企業は軒並み撤退。府は長年誘致策に苦しみ、建設費が財政を圧迫する「負の遺産」と化した…。

加熱する開発構想に冷や水を浴びせたのが、バブル崩壊だった。

熱心に手を挙げていた企業はこぞって撤退を表明。関空が開港してもりんくうタウンの開発は凍結され、空き地が目立った。前述した銀行や会社も統廃合され名前すらない会社もある。

この時の状態と同じ匂いを感じるのがIRカジノだ。

世界的なコロナ禍で日本に進出表明していた名だたるオペレーターはトーンダウン。中でも横浜当確が確実視されていたラスベガスサンズが撤退を表明したことは、衝撃だった。

日本の投資は採算が合わないということだが、そもそも5000億円とも1兆円とも言われる巨額投資が、世界的コロナ不況で10年ぐらいでは回収できる見込みがなくなってきた。カジノ収益を支えるVIP客である共産党幹部やその取り巻きたちが習近平の腐敗撲滅によって賄賂を断たれ、VIPルームから姿を消して久しい。

IRに参入を表明していた日本企業でもそれどころではない。

「長崎のハウステンボスはなくなりましたね。HIS本体がボロボロ。海外、国内旅行共に4月の売り上げは97%減。旅行客がいつ回復するかメドも立たない。店舗も3分の1にあたる90店舗を閉鎖います。カジノどころじゃなくなるぐらい経営危機に立たされています」(経済紙記者)

りんくうタウン構想と一緒で日本のIRカジノは、コロナという見えない難敵によっていとも簡単にやられてしまった。

大阪・夢洲にカジノができたとしても、相当規模が小さくなるような予感がする。最後の頼みの綱であるMGMに逃げられたらIRカジノそのものが塩漬けになる。







オリジナルサイトで読む