マカオ:Melco Resorts Studio City運営会社の増資引受,最大5億ドル~第2期計画の行方注目

2020.07.09 / カジノ
2020-07-09

【海外ニュース】

7月7日、Melco Resorts & Entertainmentは、子会社であるStudio City International Holdings(Studio City運営会社)による新株発行の引き受けを発表。

Studio City International Holdingsは、4.5億ドル以上、最大5億ドルの新株式を発行。Melco Resorts & Entertainmentは、他の引受先が購入しない部分すべてを引き受ける。

現在、Melco Resorts & Entertainmentは、100%子会社MCO Cotai Investmentsを通じ、Studio City International Holdings株式の54.1%を所有。今回の増資引き受けで、株式所有率が上昇することになる。

Studio City International Holdingsは、Studio City第2期の開発計画がある。第2期のプロジェクト予算は、12.5億ドルから13億ドル(約1,300~1,400億円)が想定されている。
現在、第2期は、初期の設計・プランニングを終えた段階にある。

Studio City International Holdingsは、土地利用権におけるマカオ政府との契約により、2022年5月31日までの開発終了を求められている。ここまでの作業過程、現状を踏まえると、期日までの開発完了は、不可能と判断される。その際、マカオ政府が開発期間延長を認めない場合、土地の権利、建物を没収される可能性がある。

今後のMelco Resorts & EntertainmentのStudio Cityのオーナーシップへの方針、StudioCity第2期へのコミットメントが注目される。

Studio City International Holdingsは、Silver Point CapitalとOaktree Capitalにより2006年に設立された(両社の合弁であるNew Cotai Holdingsを通じ、)。2011年、Melco Resorts & Entertainment(Melco)が3.6億ドル(約400億円)を投じ、株式の過半を買い取った。

その後、Melco社が少数株主保有分を買い取る方向で、協議を重ねてきたが、バリュエーション面で折り合いがつかなかった経緯がある。

マカオ Studio Cityの概要
<第1期>
・開業:2015年10月
・投資額:32億ドル
・土地面積 13.1万㎡
・建物:延べ床面積は全体予定70.7万㎡、うち第1期は47.7万㎡
・カジノフロア 約46,000㎡。テーブル292台、スロット957台
・ホテル 1,600室、リテイル 35,000㎡
<第2期 計画中>
・プロジェクト予算は、13.5億ドルから14億ドルを想定
・ホテル2棟(計900室)、ゲーミングエリア
・ウォーターパーク、飲食、リテイル、MICE、シネプレックスなど

 

Melco Resorts ”The House of Dancing Water”を半年ほど休場, 再構築~コロナ環境を活用

6月18日、Melco Resorts & Entertainmentは、”The House of Dancing Water”を、6月18日から2021年1月まで一時休場すると発表。

休場期間中、同社は、クリエイティブディレクターのフランコ・ドラゴーヌ氏(Franco Dragone)と新たな発想で、ショーをリニューアルする方針。また、新たなショーでは、ローカルタレントの開発を重視する方針。

マカオでは、渡航規制により、域外からの入境者がほとんどいない状況。

カジノIRジャパン:マカオに関する記事

”The House of Dancing Water”は、2010年の開場後、累計600万人超の入場者を獲得。
同社は、シルクドソレイユなどで大型演劇ショーを手掛けたフランコ・ドラゴーヌ氏を招聘し、中華圏のローカル色を織り込み、約5年の準備期間を費やした。
ショーは、専用劇場であり、総投資額は2.5億米ドル(約270億円)。

Melco Resorts 20年度1Q 経常損2.3億ドル~横浜ファースト,100億ドル投資提案を継続

5月14日、Melco Resorts & Entertainment(MLCO, 米国NASDAQ上場)が2020年度1Q(1-3月)実績を発表。

1Qの経常損益(営業利益からネット利払費を減算)は、$227mnの赤字(前年同期$124mnの黒字)。

コロナウイルス(COVID-19)の影響を把握するため、月別の調整後プロパティEBITDAは、1月1.5億ドル, 2月0.5億ドル, 3月0.2億ドルであった。

4月(売上高がグローバルでほぼゼロ環境)のデイリー・コスト額は、マカオでは220万ドル。平常時の300万ドル、2月時点の250万ドルからコスト削減を推進。

ローレンス・ホーCEOの経営に関する主なコメントは以下の通り。
「クレジットラインの設定やCrown resorts株式売却で、バランスシート改善に努めた」
「手元流動性の維持、投資継続の観点から、四半期配当を停止する」
「コスト管理の一方で、従業員の長期的な開発にはフルにコミット」

経営陣の日本に関するコメントは以下の通り。
・ローレンス・ホーCEO
「日本は、引き続きコアフォーカス。横浜ファーストの姿勢は変わらない」
「2019年12月、横浜RFCを提出した後、横浜市との協議を進めている」
「横浜市は、マカオ以外では、最も魅力的なデスティネーション」
「コロナウイルス(COVID-19)の中、日本のローカルチームは横浜市との作業に従事」
「横浜市には、100億ドル(1兆円超)がターゲットとなる」
~Las Vegas Sands社の日本撤退を踏まえ
「日本IRのゲームのルールは確立しており、ここ1-2年で変わったわけではない。競争が少なくなっても、提案における投資額は減らさない」
・エヴァン・ウィンクラーPresident
~日本のIR区域整備計画の認定有効期間が最初10年と設定されていることに対して、
「我々は、複数のエリアで事業を展開してきた。その中、ある規制管轄区でライセンス有効期限が設定されて場合でも、政府の良きパートナーであれば、結果として、期限は延長され、事業が継続できると考えるに至った。日本に関しても、そのように考えている」

2020年度1Q業績(1-3月) $=米国ドル:
・売上高$811mn,YoY41%減, 調整後EBITDA $55mn,YoY86%減, 営業損益$150mnの赤字(前年同期$191mnの黒字), 株主帰属当期損益$364mnの赤字(同$120mnの黒字)
<プロパティ別営業損益>
・Altira Macau=$15mnの赤字(前年同期$10mnの黒字)
・Mocha=$2mnの赤字(前年同期$4mnの黒字)
・City of Dreams=$7mnの赤字(前年同期$158mnの黒字)
・Studio City=$57mnの赤字(前年同期$48mnの黒字)
・City of Dreams Manila=$4mnの黒字,YoY81%減
・Cyprus Operations=収支均衡(前年同期$3mnの黒字)

2020年度3月末 財務状況 $=米国ドル:
・ネット有利子負債 $3,272mn
・手元流動性:現金・現金等価物 $1,163mn,短期有価証券 $363mn, 短期制限付預金 $55mn
・有利子負債:借入金 $4,648mn, オペレーティングリース負債 $83mn, ファイナンスリース負債 $122mn

(参考)2019年度業績(1-12月) $=米国ドル:
・売上高$5,737mn,YoY11%増, 調整後EBITDA $1,574mn,YoY14%増, 営業利益$748mn,YoY22%増, 株主帰属当期利益$373mn,YoY10%増
<プロパティ別営業利益>
・Altira Macau=$27mn,YoY20%減
・Mocha=$16mn,YoY25%増
・City of Dreams=$655mn,YoY31%増
・Studio City=$222mn,YoY18%増(Melco Resortsの株式所有率=54%)
・City of Dreams Manila=$100mn,YoY18%減
・Cyprus Operations=$17mn(前期$13mnの赤字)(Melco Resortsの株式所有率=75%)

Melco Resorts 手元資金拡充策を発表 Crown Resorts全株売却, 損失230億円を容認

4月29日、Melco Resorts & Entertainmentは、二つのファイナンシャル・アレンジメントを発表。内容は、① Crown Resorts所有全株式(発行済株式の9.99%)の売却, ② 銀行シンジケートとリボルビングクレジット枠の設定

新型肺炎(COVID-19)による事業停滞の中、手元資金を拡充させる動き。
Crown Resortsの株式売却は、取得価額の37%ディスカウント(約230億円の損失)。新型肺炎(COVID-19)による株価低迷、売却損を受け入れる判断。

Melco Resorts & Entertainmentの2019年12月末のネット有利子負債は、30億ドル(キャッシュ14.3億ドル, 有利子負債43.9億ドル)。

① Crown Resorts所有全株式(発行済株式の9.99%)の売却
・売却価額385億円(2019年5月の取得価額の37%ディスカウント)
・売却先は、Blackstone Groupの不動産ファンド

② 銀行シンジケートとリボルビングクレジット枠を設定
・期間は5年間, 枠はHK$14.85 billion(2,042億円)
・枠のうち、HK$13.65 billion相当は、2015年6月にドイツ銀行香港支店と締結したクレジットのリファイナンス
・2015年6月のクレジット契約は、HK$3.90 billionのタームローン(満期:2021年6月29日)。HK$9.75 billionのリボルビングクレジット枠(満期:20208年6月29日)

2019年5月30日、Melco Resorts & Entertainmentは、CPH Crown Holdings(Crown Resorts創業家であるJames Packer氏の持ち株会社。Crown Resorts株式の約47%所有)から、オーストラリアのCrown Resortsの株式19.99%を取得すると発表。取得総額は、約17.6億豪ドル(約1,333億円)。

Melco Resorts & Entertainmentは、2019年6月6日に10%分の株式を取得を完了し、9月末までに残り9.99%を取得する方針とした。しかし、その後の当局による調査を受けて、残り9.99%の取得をペンディング。

その後、2020年2月6日、Melco Resorts & Entertainmentは、2020年の投資方針を、コア・アセット集中、ノンコア・アセット見直しとすると発表。コアは、マカオ、フィリピン、キプロスの既存施設、そして、日本(横浜市にフォーカス)への営業努力とし、ノンコアにオーストラリアCrown Resortsの株式追加取得を含めた。

Crown Resortsは、主力のメルボルン(ビクトリア州)、パース(西オーストラリア州)で施設を所有し、現在、シドニー(ニューサウスウェールス州)においてIR施設を開発中。

2017年5月, Melco Resorts & Entertainment, Crown Resortsとの提携解消:

・2017年5月8日、Melco Resorts & Entertainmentは、Crown Resortsが保有する自社株式すべてを買い取ると発表
・5月15日に一連の取引が完了した後、Crown Resortsは、Melco Resorts & Entertainmentの株主を保有しない
・今回の取引を契機に、アジア、日本への展開における協業合意(The joint venture arrangement)を終結する
・Melco Crown Entertainment(現Melco Resorts & Entertainment)の創業から2015年末まで、Melco International Development、Crown ResortsはそれぞれMelco Crown Entertainment株式の34.3%を所有するイーコールパートナーであった

 

Melco Resorts 新型肺炎受け投資方針見直し~日本営業継続, 豪Crown株式追加取得中止

2月6日、Melco Resorts & Entertainmentは、新型肺炎の影響を受け、2020年の投資方針を、コア・アセット集中、ノンコア・アセット見直しとすると発表。

コアの位置づけは、マカオ、フィリピン、キプロスの既存施設、そして、日本(横浜市にフォーカス)への営業努力とした。

ノンコアの位置づけには、オーストラリアCrown Resortsの株式追加取得を含めた。

これにより、Melco Resorts & Entertainmentは、CPH Crown Holdingsと合意していた、Crown Resortsの追加取得を停止し、取締役の派遣もしないことになった。

2019年5月30日、Melco Resorts & Entertainmentは、CPH Crown Holdings(Crown Resorts創業家であるJames Packer氏の持ち株会社。Crown Resorts株式の約47%所有)から、オーストラリアのCrown Resortsの株式19.99%を取得すると発表。取得総額は、約17.6億豪ドル(約1,333億円)。
Melco Resorts & Entertainmentは、6月6日に10%分の株式を取得を完了し、9月末までに残り9.99%を取得する方針とした。しかし、その後の当局による調査を受けて、残り9.99%の取得をペンディング。

当局の調査とは、2019年8月に持ち上がった、オーストラリア・ニューサウスウェールス州ゲーミング管理当局(The New South Wales Independent Liquor and Gaming Authority)による、Crown Resortsへのライセンス適性調査。

2020年1月21日、当局は、Crown Resortsの幹部に対するヒアリングを実施。Crown Resorts側は、ネガティブな疑念を否定。
1月24日、Crown Resortsは、当局の調査への対応すべく、マネジメントチーム再編を発表。
2月24日には、公聴会が開催予定され、Melco ResortsのCEOであるローレンス・ホー氏も調査対応が求められていた。

当局の調査対象は、主に以下の二つの事象。
・Crown Resortsが違法行為に関与するマカオのジャンケット業者との取引していた可能性
・Melco Resorts & EntertainmentによるCrown resorts株式19.99%取得方針に関連し、Melco Resortsの大株主としての適性

Melco Resortsの適性調査のポイントは、Melco Resortsが、スタンレー・ホー氏および関連会社と重要な関係を持つかどうか。当局は、Crown Resortsへのゲーミングライセンス付与の条件として、スタンレー・ホー氏および関連会社と重要な関係を持つこと禁じる規定を設けていた。

Melco Resortsの創業CEOかつ最大株主であるローレンス・ホー氏は、スタンレーホー氏の子息である。

2019年8月、Melco Resortsは、自社および親会社であるMelco International Developmentの取締役、マネジメントは、スタンレー・ホー氏から完全に分離しているとコメントを発表。

Crown Resortsは、主力のメルボルン(ビクトリア州)、パース(西オーストラリア州)で施設を所有し、現在、シドニー(ニューサウスウェールス州)においてIR施設を開発中。

Melco Resorts & Entertainment 親会社よりキプロスCoD Mediterranean開発社株を取得

6月24日、Melco Resorts & Entertainmentは、Melco International Developmentとの間で、Melco International Development が所有するICR Cyprus Holdings全株の取得について合意したと発表。

Melco International Developmentは、Melco Resorts & Entertainmentの親会社(Melco International Developmentの所有比率55%)であり、ローレンス・ホー氏を筆頭株主(ローレンス・ホー氏の所有比率55%)とする。

ICR Cyprus Holdingsは、キプロス共和国において、City of Dreams Mediterraneanを開発する現地法人(コンソーシアム)。株主構成は、Melco International Developmentが75%、残りは地元企業Cyprus Phassouri(Zakaki)など。
Cyprus Phassouri(Zakaki)は、キプロス共和国のCNSグループ傘下。CNSグループは、不動産、通信、酪農、農業、鉱業など多角的に展開。

取得は、株式交換、すなわちMelco Resorts & Entertainmentが自社株式をMelco International Developmentに付与、であり、バリュエーションは3.75億米ドル(約410億円)。

シティ・オブ・ドリームス メディテレーニアン(City of Dreams Mediterranean)概要

開発主体:ICR Cyprus Holdings(コンソーシアム:Melco Resorts & Entertainment(75%, 譲渡完了後), 地元資本Cyprus Phassouri Zakakiなど(25%)
投資規模:全体計画は5億ユーロ(約650億円)
ライセンス:期間30年(最初の15年は独占)

<メインIR施設>
場所:リマソール
施設:ホテル500室(five-star), カジノ(面積7,500㎡,テーブル100台以上,スロット1,000台以上), レストラン(11店), リテイルモール, エンタテインメント, ウェルネスセンター, スポーツセンター, 国際会議センター(9,600㎡)など
開業予定:2021年
雇用創出:建設期間中4,000人, 開業後2,500人(正規雇用)

<暫定カジノ施設 Cyprus Casinos, “C2” (メイン施設開業2021年に営業終了)>
投資額:EUR13mn(約17億円)
場所:リマソール
施設:建物面積 4,600m²、うち、ゲーミングエリア 1,300m²(テーブル33台-VIP含む, スロット 242台), 飲食
開業:2018年6月28日
雇用:運営 593名(営業終了後、メイン施設へ移籍)

<サテライト・カジノ施設(4ヵ所)>
施設:3つのスロットパーラー, 1つのテーブルを含む小型サテライトカジノ
場所:ニコシア, ラルナカ, ファマグスタ, パフォス
開業予定:2018年, 2019年

 

<参考>マカオ政府ゲーミングコンセッション方針:カジノ営業権再入札プロセス~21-22年前半。”更新”否定

4月20日、賀一誠・マカオ特別区行政長官は、2020年後半にゲーミング法改正に関するパブリックコンサルテーションを実施することを明らかにした。
同時に、改めて、次回のゲーミング・コンセッション(カジノ営業権)の発給プロセスは、新規再入札であり、自動更新ではないことを強調。

今後の流れは、ゲーミング産業の中期レビュー・レポートの分析、パブリックコンサルテーション、ゲーミング法改正、ゲーミング・コンセッション再入札の実施となる。
新型肺炎(COVID-19)の影響で、作業は遅れ気味であるが、2020年後半にパブリックコンサルテーションを実施予定。

ゲーミング・コンセッションの再入札における焦点は、何社分が発給されるか、現有コンセッション保有者の喪失の可能性、新規事業者の参入の可能性。

2019年4月19日、崔世安・前行政長官は、政府として、ゲーミング・コンセッション再入札が、現行営業権の満期(2022年6月26日)前に実施されること、延長オプションを行使しない方針を明らかにした。
現在のゲーミング法では、行政長官は、その権限により、ゲーミング・コンセッションの最大5年間の延長が可能。

マカオでは、コンセッション保有者(および、コンセッション保有者とサービスアグリーメントを締結した事業者)のみが、カジノ運営を許可される。コンセッションは、強大な権益であり、6社の企業価値を支える原動力である。

図表の通り、マカオでは、6社(中国系3社、米国系3社)がゲーミング・コンセッション(サブ・コンセッションを含む)を所有しており、すべて2022年6月26日に満期を迎える。

図表:マカオ カジノ運営6事業者のコンセッション 満期日

コンセッション満期日 事業者 証券取引所 カジノ施設数 獲得順
2022年6月26日 SJM Holdings 香港証券取引所 22
2022年6月26日 Wynn Macau 香港証券取引所
2022年6月26日 Galaxy Entertainment 香港証券取引所
2022年6月26日 Sands China 香港証券取引所 4(サブ)
2022年6月26日 MGM China 香港証券取引所 5(サブ)
2022年6月26日 Melco Resorts & Entertainment NASDAQ 6(サブ)

注1:カジノ施設数は2018年12月末時点
注2:2019年3月15日、マカオ政府はSJM Holdingsのコンセッション(MGM China Holdingsのサブ・コンセッション)の満期日を、2020年3月31日から2022年6月26日に延長を承認
注3:(サブ)はサブコンセッション。Sands ChinaはGalaxy Entertainmentより、MGM ChinaはSJM Holdingsより、Melco Resorts & EntertainmentはWynn Macauより取得
 

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