業界人必見 パチンコを題材にした文芸小説『パチンコ』発売

2020.07.10 / コラム

アメリカで100万部のベストセラー、AppleTVがドラマ化へ

世界初?パチンコを題材にした文芸小説『パチンコ』発売

7月30日、文藝春秋よりそのものずばり『パチンコ』...

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世界初? パチンコを題材にした文芸小説『パチンコ』発売

7月30日、文藝春秋よりそのものずばり『パチンコ』という名前の文芸書が出版される。 いったいどのような作品なのか? 作中で「パチンコ」や「パチンコ業界」はどのように描かれているのか? 担当編集者である永嶋俊一郎氏と同書プロモーション担当の大矢靖之氏に話を聞いた。 

 

PiDEA編集部(以下略.編):まず初めに、この『パチンコ』という小説がどういった内容なのか教えていただけますか?

永嶋俊一郎氏(以下略.永):いわゆる大河小説と言えるでしょう。1910年、日本が韓国を併合した年から物語は始まって、1人の女の子が生まれます。その子の家は貧しいんですけど、羽振りのいい、やり手風の男と恋に落ちて、子を身ごもるが、やがてその男は大阪に妻子がいることがわかる。……というところから始まって、4世代にわたる、在日コリアンの苦難や成功のストーリーが描かれます。波乱万丈です。

非常に面白い本だということでアメリカでは100万冊売れたベストセラーになりました。

戦中や戦後の混乱の時期をたくましく生きた女の人を描いた作品でもありますので「おしん」に似ている、といった声も聞きますね。あと、個人的には山崎豊子(編注:「白い巨塔」「華麗なる一族」などの原作者)さんの『大地の子』などの作品が日本でいうと近いかなと思います。

非常にフラットな視点で描かれている

編:そういった、どちらかというと「カタめ」な小説のタイトルが「パチンコ」だということで、これは珍しいなと思って、今回、取り上げさせていただくことになったわけですが。

大矢靖之氏(以下略.大):そうなんですけれど、パチンコ業界の方に対してプロモーションをかけてみよう、というのは正直念頭にありませんでした。今回お話があったときも、「パチンコを職として担っている方々に、この小説をどう受け取ってもらえるのか」という迷いがあって……。

永:ただ、パチンコという仕事に対して非常にフラットな視点で描かれている小説だというのは言えますね。歴史的な事実として、在日コリアンの方々は、日本で暮らす中で差別を受けていた。就ける職業というのも限られていて、その1つがパチンコ産業でした。パチンコというのが、彼らにとってどういうものだったのか、ということがちゃんと取材して描かれています。

普通に存在している1つの業界として描かれていて、それ以上の過剰な意味は付け加えられていません。面白くするためにダークサイドを誇張して書いたりしそうなものですが、それもありません。非常にフェアに、真摯に世界を捉えて描かれているのではないかと感じます。

大:この小説では、たくさんの人間の生き様というのが魅力たっぷりに描かれているのですが、そういう意味で言うと、そのなかでもパチンコ店で働く人々が大変立派かつ善良に描かれている、と言ってもいいかもしれませんね。

私自身もこの小説を読んで、パチンコという身近に、それこそ地元にもたくさんあったお店が一体どういった歴史を辿ってきたのか。そういう見方が補強されましたし、実際に働いている人々に対して、リスペクトを持つようになりました。それがこの本に教わった一番大きな部分ですね。

 

パチンコを「家」にしている方に読んでほしい

編:パチンコ業界の人々にこの本を紹介するわけですが、特にどういった点をアピールしたいですか?

大:ネタバレになってしまうので少しぼかした言い方になってしまいますが、物語の終盤で、夜のお仕事をしていた女の子が入院してしまうシーンがあります。そして病室で、先ほどの話でいうと4世代目に当たる、主人公格のパク・ソロモンという男の子と会話をするわけです。そこで最後に女の子が男の子に「またね」と声をかけます。その後に男の子の方は勤めていた金融業界を去り、父親の後を継いでパチンコ業界で働くことになります。

日本語訳では明示されていませんが、実はここは原文では「Go home」となっていて、パチンコ業界こそが彼の帰っていく「ホーム」なんだよ、と示唆しているようにも読み取れるわけです。

それと同じように、パチンコを「家」にしている業界の方やユーザーの方がたくさんいらっしゃると思うんですね。そのような方々に、「自分たちのパチンコのことが描かれている、こんな本があるんだよ」「これ面白いよね」と話題になってくれるように、これを通じてコミュニケーションが生まれるような本になったらいいなと思います。

永:編集者として、本を作るときにはどういう層が読むかな、というのをまず考えます。それによってどれくらい刷るかとかが決まってくるわけですね。

ターゲットとしてまずは海外文学に興味のある読者というのを考えました。それから、マイノリティーに対する差別の問題とかに関心のあるリベラルな層、アカデミックな層、あるいは韓国のカルチャーに興味のある若い女性だとか、そういう人に届けたいと。

ですが、さっきも言った通り非常に面白い本で、誰にでも訴えかけるような裾野の広さがあります。なので、そこを皮切りに同心円状に読者が広がっていけばいいなと思っていました。パチンコ業界の方々が興味を持ってくれて、そこがまた広がりの1つのきっかけになってくれるのであれば嬉しいですね。

 

本来の〝小説〟の形をした小説

編:「面白い」ということですが、実際のところ、どういった特徴がある本なのでしょうか?

永:この本がアメリカで100万部も売れたのは、普遍的な「移民文学」として読まれたのが大きいと言われています。どの国からどの国に行ったということに関わらず、やっぱり国を移った人というのは共通の経験をしていると思うんですね。故郷というものがないということ。今住んでいる場所で、差別や迫害を受けたり、そこまでいかなくてもアウェイ感を感じたりすること。その経験が普遍性を持って描かれていて、大きな共感を呼んだのだと思います。

在日コリアンの問題だったり、他にもセクシュアリティとか家族のあり方とか、色々なテーマが絡まり合っている物語なのですが、だからといって政治的になりすぎていないのも特徴だと思います。そういうことを批評したり論じたりするのはどちらかといえばノンフィクションの仕事だと思っていて、この本はフィクションですから。そういった社会の難しい問題に翻弄されながらも地べたで生きる人々を、何かの意味を背負わせるというよりも、普通に働いて普通に生きている人々としてしっかりと描いている。それが逆に、読者の中でいろんな考えを触発するのだと思います。

大:そうですよね。それぞれの章の最後の部分とか、とてもあっさり終わってしまうエピソードも多いのですけど、余分なことが語られないぶん、それぞれの人物に共感できるというか。余韻が感じられる物語ですね。

永:今はこういう小説は減っていますね。作者のミン・ジン・リーさんはバルザックに代表されるような、19世紀の文学に影響を受けているそうです。いまはミステリーとか恋愛小説とか、小説のジャンルが非常に細分化されていて、それぞれの形というのが確立していますが、この『パチンコ』という小説は、そういった枝分かれ以前の、1つの太い幹だった時代の小説、いわば〝本来の小説〟の形をした小説です。

そういった小説の持つ面白さというのは今は忘れられがちですが、本当はこんなにも面白かった。実はこういう作品を探していたんですよ。

 

「何か1つの大きな問題を打ち出すというよりは、大きな流れの中のいろんな人のありようを1つのパッケージの中で描いている」と語る永嶋さん(写真右)。そのパッケージにつけられたラベルが「パチンコ」だった。

 

編:小説の世界で、特にこの本のような、文芸寄りの小説の世界で「パチンコ」がテーマになった例というのは過去にあるのでしょうか?

永:私は聞いたことがないです。ひょっとしたら初めてなのではないでしょうか。ミステリー小説とかではあったかもしれませんが。

大:あったとしても、登場人物が身をもち崩す時の小道具として扱われているものがほとんどじゃないでしょうか。

永:数ある博打のうちの1つ、ということでしょうね。パチンコというものが意味を持ったモチーフとして描かれている例は、多分ないと思います。

編:そういう意味では、パチンコ業界にとっても大きな出来事ではないかと思います。

永:作中では、自分ではどうすることもできない運命や社会の動きに翻弄される登場人物を象徴する比喩としてもパチンコが使われていますね。出てくる場面は必ずしも多いわけではないんですけど、それをあえてタイトルにしたのは、そういう意味があるんじゃないかと思います。

あとは、単純に語感もいいですよね。キャッチーで面白い言葉ですよパチンコって。

 

「わしの若い頃はこうだったんだぞ」

編:日本人の視点で読んでしまいますが、当然パチンコ業界には、在日コリアンの方が数多くいらっしゃいます。

永:そうですね。在日コリアンの方々には読んでいて身近に感じることがたくさんあるのではないかと思います。私が個人的に、エンタメとして面白くなってきたな、という部分で、キムチを作る商売が徐々に軌道に乗ってくるところがあるんですけど、そこで「そういえば親戚のあの人がキムチを作ってたな」とか、なんどか出てくる牛骨のスープとかを懐かしんでくれたりするのではないかと思います。「わしの若い頃はこうだったんだぞ」という風に。

在日コリアンや、韓国、北朝鮮との関係は今も難しい問題です。そういった時勢だからこそ、意義のある本なのではないかと思います。

もちろん、それを脇においても、非常に面白い本です。

編:私も実際に、非常に楽しんで読ませていただきました。

永:たまには小説でも読んでみるか、とふと思った時に、業界の方が手に取ってみる本としてお勧めできると思います。

 

 

株式会社文藝春秋 翻訳出版部 部長
永嶋俊一郎さん(写真右)

Q.『パチンコ』で一番好きだったシーンは?
A.「来たな」と思ったのはキムチ作りの商売が軌道に乗ってくるところですね。スロースターターな小説で、じっくりと物語が動き出す展開ですが、最初に盛り上がりを見せたと思うのがそこでした。「合わないな」と感じても、まずはそのあたりまで読んでみてほしいです。

株式会社文藝春秋 プロモーション部
大矢靖之さん(写真左)

Q.『パチンコ』で一番好きだったシーンは?
A.最終盤、病気になってしまった女の子と4世代目の主人公がお別れをするシーンはものすごいやりとりだと思います。そのあと、父親にパチンコ業界に戻ることを伝えるのですが、そのときの「こんな顔は見たことがなかった」という父親との会話は、とても感慨深いものがありました。

 

ミン・ジン・リー著、池田真紀子訳『パチンコ』(上・下)は7月30日発売。詳細の確認・予約はこちらから。

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