「取り組みの成果を広報していく段階に入った」趙埼玉県遊協理事長の提言

2020.06.19 / 組合・行政

「これだけ市民の間に根づいた商売であるにもかかわらず、実態が世の中に知られていない」

世の中で事が起きるたびに、いつも制度のすみっこに追いやられ割りを食うのが我々の業界だ。業界として、堂々とした情報発信が必要なのではないか。埼玉県遊協理事長の趙顕洙氏が、小誌のインタビューにてパチンコ業界全体の広報活動に関する見解を語ってくれた。

 

 

趙氏は株式会社三慶商事(埼玉県を中心に9店舗のパチンコホールを営むほか介護事業なども展開するホール企業)の代表取締役も務めている。経営者として、今回の新型コロナウイルス禍で受けたダメージを最小限に抑えるべく、資金繰りに奔走しているという。

「やっとつい最近、(コロナ対策による特別融資の)書類が受理されたところです。実はセーフティネットの追加業種に指定される前から窓口の担当者さんとお話をしていて、『出たらいの一番に行くからね!』と段取りをつけてあったんです」

そこまで尽力して迅速に申請を進めたのに、現時点(インタビュー日:6月19日)で、まだ融資は実行されていない。どれくらいの資金が得られるのかも不透明なままだ。そこには、パチンコ業界全体としての「社会からの認知不足」が理由としてあるのではないか、と趙氏は考える。

「(融資を実行してくれる)商工中金と政策金融公庫は、パチンコ業界相手にお金を貸すのが初めてなんですよ。審査の際も、『三店方式ってなんぞや?』というところから話が始まる。ちゃんと法律に則っていてやましい業界ではないということを示すやりとりがとても大変。書類も膨大だし、面談も何度もあるんです」

面談の際には「依存問題の対策はどれくらいやっていますか?」「反社会勢力の駆逐する取り組みはどんなことをやっているのですか?」ということまで訊かれたという。パチンコに対する融資を本当にやってもいいのか…? そう自問しためらっている政府職員の保身が透けて見える。

「この事業を続けて行く上では、やはり『社会性』が大切なのではないかと実感しました。お客さん、雇用、収めている税金、出入りする業者さん、……地域経済の縮図といってもいいたいへん重要な産業なのに、世の中に知られていない。極論ですが、パチンコ業界は社会貢献活動にこれまでたくさんのお金を投じて来たけれど、それは一時のものにしかならなかったんじゃないですか? それだけではなく、そのお金を、もっと世間に対する広報に使ったほうがよかったんじゃないでしょうか?」

世間からの冷たい目に対して、そうですよね、そう見えるかもしれませんよね、といったグレーな返答をしてはいけない。法に則った真っ当な営業をしていることを、堂々と発信していかなければならない。そういう態度が習慣となっていれば、記憶に新しい八代弁護士のひどい誤解に基づくコメントにも効果的な対応が取れたのではないか。

「今回のひるおび、八代弁護士の事件はいい教訓になりました。テレビ局に抗議をして、結果的にTBSからの謝罪はありましたが、八代弁護士に謝罪させることはできなかった。これ、本当はBPO(放送倫理・番組向上機構)に訴え出るともっと効果的だったんじゃないかという話が後から出て来たんです」

パチンコ業界の対応は遅くも不十分でもなかったが、詰めが甘かったということなのだろう。しかし、これから業界が主体となって、世間の誤った理解を問いただすこと、正しい情報を発信していくことを続けていけば、自然とノウハウも蓄積されていくはずだ。

「数年前はまだ問題が解決したとは言い切れませんでした。業界の中でももめていて。その状況で情報発信というのは難しかったかもしれませんが、今は違う。依存問題なども含めて、出玉性能を下げるとか、これだけ尽力してきたわけです。禊が済んだ、という状況なのではないでしょうか。反論攻勢に出る、とまで言ってしまうとそれはまだかな、と個人的には思いますが。でも、もうそろそろ始めてもいい」

パチンコに関わる言論や言説に目を光らせて、おかしいと思ったら口ごもらずに声を上げる。広報というのは組合や組織が一丸となって取り組むべき課題であるが、業界に携わる一人ひとりが日常の中でできることもたくさんあるだろう。一人ひとりがあげた声が、著名人などを巻き込んだ大きな流れとなって世の中を動かす。その例を最近、我々も見たばかりではなかっただろうか。

 

趙理事長には、コロナ化における中小ホールの危機と展望について、他にも多くを語っていただいた。その模様は、7月15日に発行される、PiDEA167号の誌面にてお伝えする。併せてご覧いただきたい。

埼玉県遊協理事長, 広報活動, 特別融資, パチンコ業界, インタビュー, 持続化給付金, 八代弁護士