ラスベガス・マカオ展望 Steve Wynn氏「マカオ早い。ラスベガスの需要回帰は不透明」

2020.05.22 / カジノ
2020-05-22

【海外ニュース】

5月20日、スティーブ・ウィン氏(Wynn Resorts創業者, 元CEO)は、米国FOX Businessのインタビューに対応。新型コロナウイルス(COVID-19)からの経済再開、渡航制限緩和後のラスベガス、マカオの市場回復展望を述べた。

その見解は、4月22日のLas Vegas Sandsの経営トップのコメントとおおむね同じ。

同氏は、セクハラ問題により、2018年初にWynn ResortsのCEO職を放棄し、その後にすべてのWynn Resorts保有株を売却した。今回が、それ以来の初のメディア・コメントの可能性がある。

ポイントは、以下の通り。

<企業>
・ラスベガスに拠点を持つ企業のなかでは、マカオ事業を持つ3社が相対的に優位。
・3社とは、Las Vegas Sands, MGM Resorts International, Wynn Resorts International。
・Wynn Resortsは、2008-10年のリセッションを含めて、従業員解雇レイオフを実施せず。マカオ事業のキャッシュフローがその支えだった。

<ラスベガス>
・6月1日にネバダ州が回復フェーズⅡに入った時点でホテルが再開へ。6月15日までにカジノ(フェーズⅢ以降)再開見通しが見えてくるだろう。
・再開後に需要がどれぐらいあるか不明。ロジスティクス問題、および、カジノ営業規制(社会的距離確保など)のインパクトは読めない。
米国:Wynn Resorts 米国施設群の再開後の運営方針~本格,6月以降。低稼働スタート
・市場回復の最初のハードルは、マッカラン国際空港のエアラインの就航頻度。
・IR施設、カジノホテルは、当面、低稼働が続けば、赤字状態を余儀なくされるだろう。

<マカオ>
・市場回復は、ラスベガスよりも早い。渡航制限が緩和されれば、中国の蓄積された潜在需要が表面化。
・その一例は、広州市(マカオに隣接。中国内ゆえに渡航制限の影響なし)のアミューズメントパーク。再開日に2万人が来場。

Las Vegas Sands 経営トップ業況判断~アジアは夏に回復, 米は打撃深刻。アジアM&A関心

4月22日、Las Vegas Sandsが2020年度1Q業績を発表し、経営トップが投資家向け電話会議を開催した。ポイントは、以下の通り。

<会社側の主な発言者>
・Sheldon Adelson 氏 – Founder, Chairman, Treasurer & CEO
・Robert Glen Goldstein 氏 – President, COO & Director
・Patrick Dumont 氏 – Executive VP, CFO & Director

<マカオ, シンガポール, ラスベガス市場について>
・全体
「市場別の回復の順序は、まず、マカオ、次にシンガポール、最後にラスベガスとなろう」
「アジア(マカオ、シンガポール)は、夏から秋、遅くとも10月には高いレベルの利益を確保できるだろう」
「ラスベガスは、アジアと比較し、打撃はより顕著、回復はより遅いだろう」
・マカオ
「5月中旬から下旬、マカオ市場の回復、本土等からの渡航制限が緩されていく観測がある」
「マカオは、夏にかけて段階的に回復していくだろう。巨大な需要が堆積(渡航制限等の結果、)」
・シンガポール
「6月1日(現時点の施設休場期限)の営業再開以降、シンガポールは、夏にかけて営業が回復しよう」
「自国および中国顧客は、急速に回復する。ただし、近隣諸国、マレーシア、インドネシアの訪問者は回復は、夏以降になるだろう」
・ラスベガス
「ラスベガスは、アジアと比較し、打撃はより顕著、回復はより遅いだろう」
「人々は、マスク着用や社会距離の確保などに慣れていない」
「ラスベガスは、空路のアクセスウエイトが高い。エアラインの渡航の回復も懸念される」

Steve Wynn氏 – セクハラ問題およびWynn Resortsにおける紛争

Wynn Resorts 米国MA州 適格性調査の結論~免許維持, 罰金。セクハラ問題収束

4月30日、米国マサチューセッツ州ゲーミング・コミッション(The Massachusetts Gaming Commission MGC)は、同社創業者(旧CEO)Steve Wynn氏のセクハラ疑惑に関連したWynn Resortsの適格性について最終判断を下した。
MGCは、調査、判断に約一年の時間を費やした。これにより、Wynn Resortsのセクハラ疑惑に伴うゲーミングライセンスの適格性問題が収束したことになる。

MGCの判断の結果、Wynn Resortsは、ゲーミング・ライセンスを維持し、予定通り、Encore Boston Harberを6月に開業できることになった。

ライセンス保持の条件として、Wynn Resortsに課された義務は、
・当局への3,500万ドルの罰金。Wynn Resortsの経営執行部が、Steve Wynn氏のセクハラ問題を適正に取り扱わなったことを問題視
・独立監視機関の設置
・経営執行部、従業員に対するハラスメント防止教育

また、現CEOのMatthew Maddox氏は、従業員の内部告発を調査しなかったことを理由に、50万ドルの罰金を支払う。

1月28日、Wynn Resortsは、1月25日にNevada Gaming Control Board(NGCB)が同社創業者(旧CEO)Steve Wynn氏のセクハラ問題の調査結果および同社に対する懲戒処分案を決定したと発表。

調査は、Wynn Resortsの関係者の一部が、セクハラ問題を認識していたものの、是正行動を起こさなかったと結論付けた。

NGCBは、同社の営業ライセンスの制限、取り消し、あるいは、同社従業員に対する処分を検討せず。ただし、NGCBは、同社に対して、罰金を科す考えを示した。

その後、2月26日、米国ネバダ州ゲーミングコミッション(The Nevada Gaming Commission)が罰金額が2,000万ドルで決定したと公表。経営に大きな打撃を与える額ではないが、事前の市場観測(数百万ドル)を上回り、事象の深刻さを改めて示す格好となった。

Wynn Resorts創業者Steve Wynn氏のセクハラ問題は、2018年1月26日のWall Street Journal報道が起点となった。そこから、米国ネバダ州およびマサチューセッツ州、マカオのゲーミング当局がライセンスの適格性に関する調査を開始。
2月6日には、Steve Wynn氏は、CEOを辞任。3月21、22日にはSteve Wynn氏は所有するWynn Resorts株のすべての売却を発表。

ゲーミング事業は、当局のライセンスが前提となり、その剥奪は事業消失、すなわち企業価値の喪失を意味する。

長年の株主間紛争は和解~Steve Wynn氏、Elaine Wynn氏、ユニバーサルエンターテインメント

・2018年3月、創業CEOであったSteve Wynn氏が、所有株式全株を売却し、CEOを退任
・その前後に、長年の懸案であったElaine Wynn氏、ユニバーサルエンターテインメントとの紛争が決着
(Steve Wynn氏が売却前の主要株主構成は、Steve Wynn氏が11.8%、Elaine Wynn氏が9.4%)
・3月8日、長年の懸案であったWynn Resorts社ら(ボードメンバーを含む)、ユニバーサルエンターテインメントとの訴訟は和解

<元妻であるElaine Wynn氏との紛争>
・Elaine Wynn氏は、自身の株式の権利をSteve Wynn氏に預託する契約(売却制限、議決権)を締結
・過去6年間、Elaine Wynn氏は、預託契約の無効を主張(ユニバーサルエンターテインメント株式の強制償還後)
・2月9日、Steve Wynn氏は、Elaine Wynn氏所有のWynn Resorts株式に対するコントロールを放棄すると発表

<ユニバーサルエンターテインメントとの紛争>
・2012年2月、Wynn Resortsは、当該調査レポートを根拠に、ユニバーサルエンターテインメント(UE)所有のWynn Resorts株式(発行済株式数の19.6%)の強制ディスカウント償還を実行
・その後、UEは、強制ディスカウント償還の無効を主張し、Wynn Resorts社らを提訴
・2018年3月8日、和解が成立。Wynn Resorts社は、2018年3月末までに、UEに、26億3,200万ドルを支払った。一方、UEらは、Wynn Resorts社らへの訴訟を取り下げた
 

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