Wynn Resorts 新型肺炎で運転資金調達, 手元キャッシュ積上へ~1日資金流出8億円
2020.04.10 / カジノ【海外ニュース】
4月7日、Wynn Resortsは、私募社債(Notes, Private offering)の発行を発表。発行価額は6億ドル、条件は満期2025年、利率7.75%条件。
今回のWynn Resortsは、新型肺炎(COVID-19)の影響が本格化して以来、ゲーミング業界で初めての証券市場調達となる。
Wynn Resortsは、調達資金を、会社運営経費に充当予定。
現在、Wynn Resortsを含むゲーミング企業は、売上高がほとんどない状況に直面。資金調達リリースでも、財務、事業への打撃を強調。
2019年12月末のWynn Resortsの財務状態は、ネット有利子負債80.4億ドル(手元現金23.6億ドル, 有利子負債104.0億ドル)。
足元(売上高がほぼゼロの状況下)のデイリーの資金流失は730百万ドル。
Wynn Resortsは、マカオ、米国で全4施設を展開。マカオ2施設(Wynn Palace, Wynn Macau)、米国2施設(Wynn Las Vegas, Encore Boston Harbor)。
事業・財務状況(4月7日発表):
<連結>
・2020年1-3月の売上高は912~969百万ドル, 調整後プロパティEBITDAは58~65百万ドル
(売上高は、ほぼすべて新型肺炎の影響本格化前に発生。その後はほぼゼロ)
・2019年1-3月の売上高は1,640百万ドル, 調整後プロパティEBITDAは484百万ドル
<マカオ>
・営業継続中(2月5日から19日の一時閉鎖期間を除く、)。ただし、入境・渡航規制により、2月初よりほとんど売上高がない状況
・デイリー営業経費2.5百万, デイリー金利負担0.5百万ドル(一時閉鎖期間。その後もほぼ同様)
・3月31日時点の手元流動性:現金・現金投下物1,800百万ドル,クレジットファシリティ74百万ドル
<米国>
・ラスベガスは3月17日より閉鎖。少なくとも4月30日まで閉鎖
・ボストンは、3月15日より閉鎖。少なくとも5月4日まで閉鎖
・デイリー営業経費3.5百万, デイリー金利負担0.8百万ドル
・5月15日まで従業員の雇用と給与支払いをコミット
・3月31日時点の手元流動性:現金・現金投下物1,070百万ドル,クレジットファシリティ41百万ドル
Wynn Resorts 19年度4Q 経常益1.2億ドル,YoY24%減。マカオカジノ閉鎖,毎日250万ドル赤字
2月6日、Wynn Resortsは、2019年度4Q業績を発表。
経常損益(営業利益からネット利息費を減算)は、4Q(10-12月)$118mn,YoY24%減、4Q累計(1-12月)$489mn,YoY27%増。
4Q累計(1-12月)では、2018年1Qに訴訟和解費$464mnの計上があった。その影響を排除すると、2019年度4Qは、YoY42%減益。
主力のマカオ、ラスベガスとも減収減益トレンド。
Encore Boston Harbor(2019年6月23日開業)は、4Qの調整後プロパティEBITDAは、$15mnと小さかった。
マット・マドックスCEOは、マカオの新型肺炎の影響についてコメント。マカオ政府は、2月5日を起点に最低15日間のカジノ施設閉鎖を決定。
「マカオでは、少しの滞在者のために、ホテルや一部のレストランを稼働している。(収益の大半を占めるカジノ閉鎖の結果、)デイリーの営業経費額(バーンレート, 赤字額)は、おおむね毎日240万ドルから260万ドル(3億円弱)。経費の主体は、従業員12,200人の人件費」
2019年度4Q(10-12月)業績:
・売上高$1,653mn,YoY2%減, 調整後プロパティEBITDA $443mn,YoY11%減, 営業利益$227mn,YoY8%減, 株主帰属当期損益$73mnの赤字(前年同期比$465mnの黒字)
<プロパティ別業績>
・Macau=調整後プロパティEBITDA $348mn,YoY12%減
– Wynn Palace=調整後プロパティEBITDA $178mn,YoY22%減
– Wynn Macau=調整後プロパティEBITDA $170mn,YoY2%増
・Las Vegas Total=調整後プロパティEBITDA $80mn,YoY24%減
・Encore Boston Harbor=調整後プロパティEBITDA $15mn(2019年6月23日開業)
2019年度4Q累計(1-12月)業績:
・売上高$6,611mn,YoY2%減, 調整後プロパティEBITDA $1,815mn,YoY11%減, 営業利益$878mn,YoY19%増, 株主帰属当期利益$123mn,YoY79%減
・2018年1Qには、営業費用に訴訟和解費$464mnを計上。それがなくなり、営業利益以下が増益に
<プロパティ別業績>
・Macau=調整後プロパティEBITDA $1,378mn,YoY13%減
– Wynn Palace=調整後プロパティEBITDA $730mn,YoY14%減
– Wynn Macau=調整後プロパティEBITDA $649mn,YoY12%減
・Las Vegas Total=調整後プロパティEBITDA $414mn,YoY11%減
・Encore Boston Harbor=調整後プロパティEBITDA $23mn(2019年6月23日開業)
2019年度4Q末(12月末)財務状況:
・ネット有利子負債$8,040mn(手元現金$2,360mn, 有利子負債$10,400mn)
Wynn Resorts マカオWynn Palace拡張1期20億ドル計画~営業権再入札の前後関係焦点
7月10日、Wynn Resortsは、機関投資家向けイベントInvestor Dayを開催。
今回、マカオWynn Palaceの拡張計画を公表した。
拡張計画はPhase 1, 2の構成。ターゲットROIC(Return On Invested Capital, 調整後プロパティEBITDA / 投資額)は15-20%。年間訪問者数は700-1,000万人。
<Phase 1 – 南区画 概要>
・土地面積3ha
・プロパティ名”Crystal Pavilion”
・ホテル棟は約650室
・初期投資額20億ドル(約2,160億円)
・2021年後半に着工。工期は36ヵ月強
<Phase 2 – 北区画 概要>
・土地面積1.7ha
・ホテル棟は約650室
・投資額、時期は未定
Wynn Palace拡張計画の焦点は、着工時期とマカオのカジノ営業権再入札との前後関係である。マカオ6事業者のカジノ営業権は、2022年6月に満期となる。マカオ政府は、満期前、2021年にも再入札を実施する方針。
政府の再入札の方針は、現時点では未発表であるが、焦点は、既存事業者の再選定における当落、そして、新規事業者の選定の有無である。マカオ6事業者は、いずれも、その売上高の8割あるいはそれ以上をカジノ部門に依存する。カジノ営業権の喪失は、実際上、事業維持をほぼ不可能とする。
なお、Wynn Resortsは、新規エリアでは、日本のみ強調。日本市場を”EXCITING POTENTIAL OPPORTUNITY”とし、”5-STAR URBAN RESORT”の実現に取り組む。
(出所)Wynn Resorts – ANALYST AND INVESTOR DAY, JULY 2019.
Wynn Resorts Encore Boston(6月23日開業)初日来場者5万人, 年間800万人見込み
6月23日、Wynn Resortsは、マサチューセッツ州エバレット市にて、Encore Boston harborを開業。
グランドオープニングセレモニーには、数千人が参加。Wynn Resortsは、初日の来場者5万人、年間では800万人の集客を見込む。
Encore Boston harborまでの開業までの道程は長く、数々の困難に直面した。
2014年9月、州ゲーミングコミッションは、Region A(ボストン広域エリア)のプロジェクトとして、Wynn Boston Harborを選定。その後、落選したグループ(周辺市など)などによる州政府Wynn Boston Harborへの提訴が相次いだ。
2016年7月までに、Wynn Resortsは、マサチューセッツ州の環境対策部門を含む行政許認可のほぼすべてハードルをクリアした。その後、建設工事が本格化した。
2018年1月には、Wall Street Journal報道を契機に、創業CEO(当時)であったSteve Wynn氏のセクシャルハラスメント問題が台頭
2019年4月30日、マサチューセッツ州ゲーミングコミッション(MGC)は、セクハラ問題に関連した適格性調査結果の最終判断を下した。MGCは、3,500万ドルの罰金などを条件に、Wynn Resortsのゲーミング・ライセンスを維持し、Encore Boston Harberの開業を許可した。
直近5月21日、Wynn Resorts、MGM Resortsは、Encore Boston Harborの売買協議中止を発表。
売買協議の背景は、Wynn Resortsは投資回収面の判断、MGM Resorts Internationalは州内競合の回避(ドミナント戦略)と推察される。
両社とも、売買協議中止後、それぞれの地域コミュニティの懸念を火消し、コミットを強調する事態となった。
マサチューセッツ州では、2011年ゲーミング法のもと、3つのIRと1つのスロットパーラーの設置が容認された。3つのIRは、Region A(東部)、Region B(西部)、Region C(南東部)に一つずつの想定であった。現在、IRは、二つのみ許可されている。
2015年6月、スロットパーラーであるPlainridge Park Casino(投資額$250mn)が開業。
2018年8月、コネチカット州境に位置するMGM Springfield(投資額$960mn)が開業(Region B)。
2019年6月、Encore Boston harbor(投資額$2.6bn)が開業予定(Region A)。
州政府(Massachusetts Gaming Commission)は、Region Cに、三つめのIRを承認するオプションを有する。
米国マサチューセッツ州Encore Boston Harborの概要
・土地:13.3ha |
Wynn Resorts 米国MA州 適格性調査の結論~免許維持, 罰金。セクハラ問題収束
4月30日、米国マサチューセッツ州ゲーミング・コミッション(The Massachusetts Gaming Commission MGC)は、同社創業者(旧CEO)Steve Wynn氏のセクハラ疑惑に関連したWynn Resortsの適格性について最終判断を下した。
MGCは、調査、判断に約一年の時間を費やした。これにより、Wynn Resortsのセクハラ疑惑に伴うゲーミングライセンスの適格性問題が収束したことになる。
MGCの判断の結果、Wynn Resortsは、ゲーミング・ライセンスを維持し、予定通り、Encore Boston Harberを6月に開業できることになった。
ライセンス保持の条件として、Wynn Resortsに課された義務は、
・当局への3,500万ドルの罰金。Wynn Resortsの経営執行部が、Steve Wynn氏のセクハラ問題を適正に取り扱わなったことを問題視
・独立監視機関の設置
・経営執行部、従業員に対するハラスメント防止教育
また、現CEOのMatthew Maddox氏は、従業員の内部告発を調査しなかったことを理由に、50万ドルの罰金を支払う。
1月28日、Wynn Resortsは、1月25日にNevada Gaming Control Board(NGCB)が同社創業者(旧CEO)Steve Wynn氏のセクハラ問題の調査結果および同社に対する懲戒処分案を決定したと発表。
調査は、Wynn Resortsの関係者の一部が、セクハラ問題を認識していたものの、是正行動を起こさなかったと結論付けた。
NGCBは、同社の営業ライセンスの制限、取り消し、あるいは、同社従業員に対する処分を検討せず。ただし、NGCBは、同社に対して、罰金を科す考えを示した。
その後、2月26日、米国ネバダ州ゲーミングコミッション(The Nevada Gaming Commission)が罰金額が2,000万ドルで決定したと公表。経営に大きな打撃を与える額ではないが、事前の市場観測(数百万ドル)を上回り、事象の深刻さを改めて示す格好となった。
Wynn Resorts創業者Steve Wynn氏のセクハラ問題は、2018年1月26日のWall Street Journal報道が起点となった。そこから、米国ネバダ州およびマサチューセッツ州、マカオのゲーミング当局がライセンスの適格性に関する調査を開始。
2月6日には、Steve Wynn氏は、CEOを辞任。3月21、22日にはSteve Wynn氏は所有するWynn Resorts株のすべての売却を発表。
ゲーミング事業は、当局のライセンスが前提となり、その剥奪は事業消失、すなわち企業価値の喪失を意味する。
Wynn Resorts 豪Crown買収協議中止~マカオ営業権満期視野に日本, APAC進出急ぐ
4月8日、オーストラリアのCrown Resortsが、Wynn Resortsと経営権の異動を伴う可能性がある協議を進めるとリリースを公開。
4月9日、Wynn Resortsは、SEC(米証券取引委員会)に、Crown Resortsとの協議を認めるリリースを提出。
同じ4月9日、Wynn Resortsは、SEC(米証券取引委員会)に、Crown Resortsとの協議打ち切るリリースを提出。
各種報道によれば、協議は、Wynn ResortsによるCrown Resortsの買収であった。Crown Resortsの時価総額は、71億ドル(約8,000億円)。
情報漏えいが、協議の打ち切りの一因となった。
Wynn Resortsは、地理的な事業拡張を目指したとされる。収益柱であるマカオのコンセッション満期(2022年6月26日)を意識した動き。その対策は、マカオ事業の継続(コンセッション新規獲得)、日本やオーストラリアを含むアジア太平洋地域(APAC)への新規参入である。
Wynn Resortsは、現在、米国(ネバダ州ラスベガス)およびマカオで事業を展開するが、営業利益の85%はマカオ由来である。
マカオのゲーミング・コンセッション(6社が保有)は、すべて2022年6月26日に満期を迎える。マカオ政府は、現行コンセッション満期後、次期コンセッションを新規入札(New Pulic Tender)を通じて付与する方針を強調(更新の概念はない)。
長年の株主間紛争は和解~Steve Wynn氏、Elaine Wynn氏、ユニバーサルエンターテインメント
・2018年3月、創業CEOであったSteve Wynn氏が、所有株式全株を売却し、CEOを退任
・その前後に、長年の懸案であったElaine Wynn氏、ユニバーサルエンターテインメントとの紛争が決着
(Steve Wynn氏が売却前の主要株主構成は、Steve Wynn氏が11.8%、Elaine Wynn氏が9.4%)
・3月8日、長年の懸案であったWynn Resorts社ら(ボードメンバーを含む)、ユニバーサルエンターテインメントとの訴訟は和解
<元妻であるElaine Wynn氏との紛争>
・Elaine Wynn氏は、自身の株式の権利をSteve Wynn氏に預託する契約(売却制限、議決権)を締結
・過去6年間、Elaine Wynn氏は、預託契約の無効を主張(ユニバーサルエンターテインメント株式の強制償還後)
・2月9日、Steve Wynn氏は、Elaine Wynn氏所有のWynn Resorts株式に対するコントロールを放棄すると発表
<ユニバーサルエンターテインメントとの紛争>
・2012年2月、Wynn Resortsは、当該調査レポートを根拠に、ユニバーサルエンターテインメント(UE)所有のWynn Resorts株式(発行済株式数の19.6%)の強制ディスカウント償還を実行
・その後、UEは、強制ディスカウント償還の無効を主張し、Wynn Resorts社らを提訴
・2018年3月8日、和解が成立。Wynn Resorts社は、2018年3月末までに、UEに、26億3,200万ドルを支払った。一方、UEらは、Wynn Resorts社らへの訴訟を取り下げた
Wynn Resorts 日本における営業活動
市 RFC提出者数を発表~IR事業7者, 開発事業3者。開発事業で1社脱落~Wynn Resorts 提出
・12月24日、横浜市は、定例記者会見にて「IR(統合型リゾート)の実現に向けた民間事業者からのコンセプト提案募集」提出者数を発表
① 日本型IRの実現に関すること:提出者7者(参加登録7者)
② 開発事業に関すること:提出者3者(参加登録4者)
③ 関連産業に関すること:提案15件(11月15日期限)
・11月8日、テレビ神奈川は、参加登録6者名をレポート。ラスベガス・サンズ, ウィン・リゾーツ, ギャラクシーエンターテインメント, メルコリゾーツ&エンターテインメント, ゲンティン・シンガポール, セガサミー
・横浜市は、RFCを経て、2020年春に実施方針を策定、事業者選定へ
・RFC参加, 提案は、2020年に実施予定の事業者選定には影響しない
Wynn Resorts 12月15日, 横浜オフィス業務開始~横浜注力。東京から場所変更
・12月11日、ウィン・リゾーツ社は、横浜市における事務所設立を発表。15日に業務開始
・同社は、当初、東京に事務所を開設する予定であったが、横浜注力を決定し、設置場所を変更
・代表は、クリス・ゴードン氏
<日本 横浜オフィス概要>
名称:ウィン・リゾーツ・デベロップメント・ジャパン合同会社
所在地:〒220-8120 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1横浜ランドマークタワー18階
業務開始日:2019年12月15日
RFC ”IR事業者カテゴリー”6者登録~Wynn Resortsも対応
・11月8日、テレビ神奈川は、独自取材をソースとし、横浜市のRFCへの登録状況をレポート
・同レポートによれば、登録者は、ラスベガス・サンズ, ウィン・リゾーツ, ギャラクシーエンターテインメント, メルコリゾーツ&エンターテインメント, ゲンティン・シンガポール, セガサミー
・11月7日、第1回[横浜]統合型リゾート産業展に出展するIR事業者が発表された。前記の6者と一致
・10月16日、横浜市は「IRの実現に向けた民間事業者からのコンセプト提案募集」(RFC)を公表
・RFCの提案募集は3カテゴリー。”日本型IRの実現”, “開発事業”, ”関連産業”
・同レポートは、”日本型IRの実現”と考えられる。このカテゴリーの登録には、海外IR実績要件が付された
大阪撤退, 関東への集中を公表~横浜市と東京都を追及, LVS同様
・10月中旬、Wynn Resortsは、メディアに対して、大阪府市を撤退し、関東エリアにフォーカスする姿勢を公表
・Wynn Resortsのこれまでの発言より、関東エリアは、横浜市と東京都を意味すると考えられる
・大阪府市の発表(9月20日)、その後の各社公表より、大阪府市RFCに継続参加する海外IR事業者は以下3者
– Galaxy Entertainment Group
– Genting Singapore
– MGM Resorts International + オリックス
・大阪撤退、関東フォーカスを表明した海外IR事業者は以下3者
– Las vegas Sands(横浜市・東京都)
– Melco Resorts & Entertainment(横浜ファースト)
– Wynn Resorts(横浜市・東京都)