1円戦争とコーヒーレディー

2019.09.30 / コラム

ホールでトップセールスだったコーヒーレディーが野球場のビールの売り子に転職した。ホールを辞めた理由はタバコだった。服にタバコの臭いが染みつくのが嫌だった。友達が球場でビール売りをしていたこともあり、コーヒーからビールに代わった。

コーヒーのトップセールスの腕は、ビール売りでもすぐに通用した。声を掛けるテクニックや常連の顔を覚える能力が場所は違えども発揮できた。

ビール売りは売ったら売っただけ歩合が付くので、時給換算だと4000円にもなった。対戦カードによっても売り上げが変わるが、最高時給は6500円にもなった。

ただし、かなり体力がいる。満タンだと15キロのタンクを背負って球場の階段を上ったり、降りたりの連続だ。

ナイターだと夕方4時に球場入りして、試合前から売り始める。売れ始めるのは6時の試合開始から30分が経過したあたりから。その後の2時間が勝負となる。試合が白熱するとビールの売り上げも上がる。

狙い目はサラリーマンの団体客だ。例えば、10人で来ていたらそのグループだけで10杯は売れる。金曜日、土曜日はサラリーマングループが多いので売り上げが上がる曜日でもある。

ビール売りからタレントに転身したおのののかがいるように、今やかわいくてスタイルがよくなければ採用されない業種になっている。やはりかわいい子の方が、売り上げが上がるからだろう。売り上げが上がらないと配置転換があり、売店に異動がある、という。

能力次第で稼げるビールの売り子も年中働けない。プロ野球のシーズンオフには仕事はない。で、コーヒーレディーからビール売りになった子は、来年4月からの全面禁煙に伴い、ホールに戻って来る、という。

一つの朗報だが、ホール向けのコーヒー販売会社は4パチ稼働の低下で、軒並み売り上げを落として、撤退する会社も少なくない。

「MAX機が全盛のころは笑いが止まらないぐらいコーヒーが売れました。1パチが主流になってからは全然売れません。1パチのお客さんから玉300個キツイ。撤退を申し出るとホールの方で補填するから残ってくれ、と言われるケースもあります。100円の紙コップ自販機を導入したらコーヒーレディーの売り上げが半減して撤退したケースもあります」(コーヒー販売関係者)

コーヒーレディーが売り上げを上げるのは4円だけで、あるいは4円の比率が高いホールだ。コーヒーレディーはホールのスタッフよりもお客さんと会話することが多いが、異口同音に「ここはよく回る」と言う。

「オーナーさん自身が4円はもうダメだと諦めていて、1円で客を飛ばすと雷を落とす。1円は4円のオマケだったのに、なんか本末転倒ですね。経営感覚が鈍っていますね」(同)

1円戦争で撤退を余儀なくされるコーヒー販売会社の次の一手は、4円で稼働を上げているホールの既存業者の切り崩しだ。

「ウチにはこれぐらいかわいい子がいます」と写真を見せながら「かわいい子がいると若いお客さんが来ますよ」と畳みかける。

稼働のいいホールならまだおいしい商売なのだろう。







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