[書評]規制とパチンコの長い付き合い

2016.02.24 / 連載

PiDEA編集部がオススメの書籍を紹介していく不定期連載がスタート!
第一回 下代裕人著「パチンコ 規制と進化の歴史」(2009年 文芸社)


「パチンコの歴史を教えてもらえませんか」

入社したての部下にそう聞かれたら、どう答えるだろうか。正村ゲージ、一発台、風適法、フィーバー機、超特電機……。単語は色々と浮かんでも、それを順序立てて話すとなると、意外と難しい。

自分が身を置いているパチンコ業界には、どんな歴史があるのか。そんな疑問を解決できる一冊が、「パチンコ 規制と進化の歴史」(2009年 文芸社)だ。

著者の下代裕人氏は、早稲田大学卒業後、パチンコチェーン店で釘師として勤務。2008年から執筆活動を始め、これまでに「パチンコ進化論」(文芸社)、「よみがえれ!パチンコ名機」シリーズ(同社)など、パチンコの歴史に関する著作を数多く発表してきた。その中でも本書は、「フィーバー」や「ダービー物語」といった歴代の名機と、法改正との関わりにスポットを当てている。正村ゲージに始まる現代パチンコ機が、時代のニーズや法改正に合わせ、どのように進化してきたか。それが本書のテーマだ。

本書の特徴は、何といっても情報の密度だ。全150ページというサイズながら、パチンコ機18種類、役物20種類を詳しく解説。中でも充実しているのは法令関係で、風営法のパチンコに関連する部分をほぼ全文掲載し、補足を交えて説明している。はじめは面食らうかもしれないが、各章の冒頭に「本章を読むためのキーワード」が書かれているため、読みづらさは感じない。はじめに機種名や法律などの専門用語を理解できるので、途中で考え込むことなく、すっきりと内容を理解できる。

本書から一貫して感じられるのは、古きよき時代への憧れだ。デジパチが主流となった現代に、筆者は「パチンコ本来の遊技性を高めることに貢献したであろうか」と疑問を投げかける。パチンコの歴史を理解しつつ、釘1本が出玉のカギを握っていた時代を追体験できるのも、本書ならではの魅力だろう。

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