[書評]「パチンコが本当になくなる日」の鋭い視点

2016.03.31 / 連載

PiDEA編集部がオススメの書籍を紹介していく不定期連載!
第三回 POKKA吉田著『パチンコが本当になくなる日』(2016年 扶桑社新書)

パチンコの遊技くぎ問題が表面化して、1年以上が経過した。今年2月には日工組から遊技機の撤去リストが発表されたものの、期限やメーカーからの補償などは明言されず、問題はまだ収束しそうにない。

事態が複雑化する中、そろそろ情報を整理したいところだろう。そんな時にうってつけの書籍が、3月2日に発売された。POKKA吉田著「パチンコが本当になくなる日」だ。

著者のPOKKA吉田氏は、パチンコ業界誌や遊技機メーカー系シンクタンクを経て、2004年からフリーランスで活動を開始。パチンコ業界を客観的に見つめ、問題点を鋭く指摘する姿勢で支持を集めてきた。2016年2月には業界誌「シークエンス」の編集長に就任し、執筆活動も並行して続けている。

本書は2015年1月の警察庁・小柳誠二保安課長の講話から、2016年2月の撤去リスト発表までの流れを詳しく解説している。内部文書や講話の内容が多数掲載されており、資料としての価値も十分だ。文字の量はやや多いが、専門用語が出た際には必ず解説が入るので、読みづらさは感じない。

本書の特徴は、なんといっても「視点の多さ」だ。警察庁保安課、全日遊連、日遊協、日工組などが入り乱れる遊技くぎ問題は、もはや「誰が悪いのか」という考え方では解決できない。吉田氏はその点を熟知し、団体一つひとつにスポットを当て、それぞれが負うべき責任を明らかにしていく。例えば、遊技くぎの検定基準に「板面に対しておおむね垂直」というものがある。これは長年業界の不問律とされ、警察庁による明文化がされず、各都道府県警にも周知徹底されてこなかった。その結果「盤面に対して完全に垂直でなければならない」という異なる解釈が生まれてしまい、対応するメーカーに混乱をもたらした。

この場合、落ち度は警察庁にあると考えるのが普通だろう。しかし吉田氏は「検定の状態で納品しなかった可能性を払拭できないメーカーに責任があるのは自明」「日常的に釘調整をしているホールにも責任がある」と述べ、業界のそれぞれが反省すべきだと語る。くぎ問題は、パチンコ業界に身を置くすべての人に関係するものだ。その現状を知るために、本書はきっと役に立つだろう。

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