[書評]マルハンが人材育成に注いだ情熱

2016.03.17 / 連載

PiDEA編集部がオススメの書籍を紹介していく不定期連載!
第二回 奥野倫充著「マルハンはなぜ、トップ企業になったか?」(2006年 ビジネス社)

社員が退職するのは、いつだって残念なことだ。とはいえ、「どうすれば彼は辞めなかったのか」と考えても、答えはすぐに出てこない。毎日の仕事に追われる中では、辞めていった社員に考えを巡らせる時間も取りづらいだろう。

社員を辞めさせずに、力を発揮してもらうにはどうすればいいか。それを知るには、成功例から学ぶのが一番いい。今回紹介するのは、奥野倫充著「マルハンはなぜ、トップ企業になったか?」だ。

著者の奥野氏は、株式会社船井総合研究所に務める経営コンサルタント。1996年に同社に入社後、2004年にはコンサルティング報酬1億円を達成するなど、多くの業績を残している。本書は、それまで非公開を貫いてきたマルハンの経営哲学を、奥野氏が経営陣への直接インタビューで明らかにする内容だ。初出が10年前のため、情報にはやや古いものもあるが、同社の手法からヒントを得るには十分な価値があるだろう。

本書から伝わってくるのは、人材育成にかける、マルハンの並々ならぬ情熱だ。韓裕社長自ら「今のマルハンを否定してくれる人材を求めている」と語る会社説明会、パートスタッフが正社員を指導することもある教育体制、女性スタッフのための託児所を設ける店舗運営……。マルハンは、すべての社員が夢を持ち、実現へ向けて努力できる環境づくりに全力を注ぐ。時には2年9カ月にわたり新規出店を止めてでも、育成の充実を図ってきた。

なぜマルハンは、ここまで人材にこだわるのか。それは、人材こそが企業の原動力になると、経営陣が確信しているからだ。2006年当時に取り組んでいた株式上場について、韓昌祐会長は「パチ屋と馬鹿にされ続けた社員たちに、上場企業で働いているんだというプライドをあげたい」と理由を語る。16歳で日本に渡り、事業の失敗で2000億円の借金を抱えながらも、社員と協力しながら乗り越えてきた韓会長。そんな同氏だからこそ、社員の幸福と成長を大切にしているのだと実感できる。

PiDEAおすすめ書評, ビジネス社, マルハン, マルハンはなぜ、トップ企業になったか?, 奥野倫充, 書評, 船井総合研究所, 船井総研, 韓昌祐, 韓裕