高橋正人「業界から産業への夢想」

2015.12.08 / 連載

【水曜】高橋正人のパチンコ運用リアル養成講座

[第77回]「新・時事放談コラム〜多くの立場と都合と意図を読む」心構えは必要

12月当初に日工組から出されると言われた「パチンコ回収リスト」だが、結局は今のところは出ず仕舞となった。客観的に見れば、出なかったと言う結論的言葉になるが、それはただの結果報告に過ぎない。そんな時にふと思う事がある。「出なかった」という言葉だけで、モノを語って、思考していて良いのだろうか?と言う疑問。もう一歩、業界進捗を「深読みする癖」があっても良いのかもしれない(汗)。

■日工組が「出さない」・・・のかもしれない!?
モノの言い方としては、日工組側の都合の様な話になりそうな表現である。つまり、「出さない方が良い」と決めた意思表現になる。あえて「出さない」という言い方もできる。背景には、業界の混乱を招くおそれがあるのか、社会問題化になるおそれがあるのか分からないが、それなりに思慮しての事であると言える言葉表現だ。

■もしくは「出せない」・・・のかもしれない!?
つまり、出したいのに出せないということ。もしくは出すべきなのに出せないということになる。もっと突っ込むならば、自分たちの意思ではなく、他の意見・都合を考慮しているという見方もできる言葉表現になる。こうなると、「日工組の都合」ではない話になるが、私は日工組は、メーカーだけのことを考えているとは思っていないし、現実、業界の先行きは十分考慮しているし、考えていることもまた事実。

■そもそも、そのリストはあるのか?
もちろん出ていない現実があるので、絶対とは言えないがそれはあると私は思っているし確信している。おそらく合計設置台数で100万台〜200万台に及ぶと思われるが、個人的には150万台前後であろうと憶測している。それを「可及的速やかに」、メーカー回収=ホール撤去することになる予定だったのだが、極論的に言うならば、「それなりに準備できたら、リスト機種から順次外していってくださいね」という話で、そもそも「即撤去」とか言っている訳でもないし、パチンコ遊技機の年間販売台数(=ホール購入台数)は、200万台に及ぶ訳で、来年10月頃を目途にしてのスケジュールであれば、そうそう業界混乱を招く事にはならないと思っていた私でもある。逆に言えば、新機種含め、150万台が残っているという言い方もできる訳で、中古市場も多くの混乱を招くこともないだろう。

■パチンコ業界という言葉には「3つのスタンス」が混在している
パチンコ店は許可営業である以上、「管轄行政」がある。風俗営業だけに係わらず、自動車業界も、飲食業界も、インフラ業界もみな同じで、それぞれに管轄行政があり、それによりそれぞれが活動している。次に「販売側」がある。つまり遊技機メーカーだったり、設備メーカーだったり、人材派遣だったり、多種多様な商品がこの世にはあり、必須なモノ、より便利なモノ、無駄なモノ等々、その需要も様々である。そして「ホール」がある。上記それらの環境をすべて飲み込んで、全国1万1千強の店舗が存在している。

つまり、行政・メーカー・ホールの「3者の立場」がある訳で、当然ながら「3者の都合」があり、「3者の意図」がある。それをもって「業界」と呼ぶ訳で、それ自体を否定することはできない。そうである以上「お互いの立場」を理解し、「お互いの都合」を理解し、結果としての「お互いの意図」を把握する心構えは必要ではないのだろうか?

<総評>
本質的には「産業とならなくてはいけない」。そんな時期に突入しているハズなのに、いまだに「業界」という言葉が先行している。「業界」とは、上記3つでくくれるが、「産業」となるともう一つの要素が必須になる。それが「顧客」。つまり打ち手でありファンである。

我々は、いつになったら「業界から産業へ」の会話ができるようになるのであろうか?
我々は、いつになったら「産業構築のために」すべきことの論議を始めるのだろうか?
そんなことを想いながら、未来創造を夢見ている、私の今日この頃である。

 

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高橋正人

パチンコ業界歴30年の大ベテラン。ホールや機械について、すべてを知り尽くしたコンサルタント。現在、有限会社トータル・ノウ・コネクションズ代表取締役社長、株式会社エル・イー・オー代表取締役社長。

水曜, 高橋正人