消費税増税の本質的な問題を解説します

2019.03.02 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(203) Prime AIセミナー(6)

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。今週3/8(金)、東京上野のオーラムにて開催される「primeAIセミナー」に登壇いたします。今回のメインテーマは新基準機および6号機への完全移行に向けて今できることの提示となっており、サン電子株式会社情報戦略部の長谷川武亮氏、有限会社TKC代表取締役の高橋正人氏のお二人とともに「遊技機に頼らない営業戦略」についてお話しする予定となっています。

そこで短期集中にてこのセミナーで私の担当する内容についてお伝えしており、今回は「消費税増税への対応」についてお伝えいたします。

前回は預かり消費税を加えての正しい損益計算および消費税が10%になった時に利益がどのように変わるかを確認しました。前回の試算では「今のままでは大きな減益になり、営業損失になるかもしれない」ことがわかりました。

消費税はあくまで消費者が負担するものであり、事業者は預かっているだけのはずです。損益計算時に最初から売上から控除して計算すればよいのですが、パチンコ業界では大多数が内税処理をしており、税込み売上から損益計算をしていることで預かり消費税の問題認識が薄かったといえます。消費税増税の本質的な問題は支払う総額が増えることではなく、貸玉料金に含まれているお客様から預かる消費税が大きく増えることだという認識が必要なのです。

さて前回で現状を確認したので、今回は「どうすればこの状況を打破できるか」をお伝えします。そしてこれはシンプルに考えれば、以下の3つの方法があります。
① 売上を上げる
② 利益率を上げる
② 費用を下げる
これらいずれかの方法、もしくは複合で増加する預かり消費税の負担をするということです。

① 売上を上げる
「売上を上げる」とはいってもそう簡単にできることではないです。ここでは、
・外税化
を考えます。税込み総額の売上を上げて預かり消費税を除いた税抜売上がこれまでの総額売上になるようにします。(図①)



なお外税化には、
・貸玉個数を減らす方法(1,000円228玉、46枚)
・1,100円で250玉、50枚の貸し出しにする方法
の2種類があります。ただし設備費用等問題もあるので、現実的には外税化を考える場合は貸玉個数を減らす方法を選択するでしょう。

② 利益率を上げる
「利益率を上げる」対処法を考えた場合は、
・出玉率を下げる
・損益分岐割数を変更する
の2種類があります。出玉率を下げるには遊技機メンテナンスでの対応となり、損益分岐割数での変更では、これまでよりも1.1倍の分岐割数に設定すればよいことになります。
この場合は原価率を下げることになるので、預かり消費税その他の経費は変わりませんが粗利が増えることになり、増税分を捻出することになります。(図②)




③ 費用を下げる
「費用を下げる」場合は、
・固定費を下げる
・ロスコスト(売上、利益につながっていない費用)を下げる
を考えます。販管費を増税影響分だけ下げる努力をすることになります。(図③)




以上、対応として考えられる3案を提示しました。どれも実際に行えば増税の影響回避には効果を発揮します。しかし増税は数字上のことだけではなく、お客様の心理状態にも影響を与えます。

図④をご覧ください。
(編集部注※上部ウインドウをご覧ください)


過去、消費増税時には必ず民間消費支出が落ち込んでいることが分かります。消費税の増税では収入は変わらずに支出が増えることになるので、パチンコに限らずすべての購買で消費マインドが冷え込むのです。
そうなると、
・消費金額を増やす施策は難しい
・出玉を少なくすることは難しい
と考えられるので、外税化や出玉率削減は、一時的には効果があっても中長期的な見方では避けるべきではないか、と思います。
やはりここは今一度のコスト削減努力をすべきだと思います。その中でも一番は遊技機購入費となるでしょう。もちろん2021年2月までにほぼすべての設置遊技機を取り換えなくてはなりませんが、その財源確保のためにも「利益の出る(残る)企業体質」にしていかなければなりません。

消費税増税の対応は、まずは「預かり消費税」をしっかりと認識することが大事です。「消費税増税の本質的な問題は支払う税金が増えることではなく、貸玉料金に含まれているお客様から預かる消費税が大きく増えること」です。

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■ PrimeAIセミナー開催
2018年3月8日(金)、東京上野オーラムにてPrimeAIセミナーが開催されます。今回はメインテーマを「新基準機、6号機完全移行に向けて、今できること」とし、サブテーマは「迫る消費税率引上げ、備えは待ったなし!!」としています。
<登壇予定者>
サン電子株式会社 情報戦略部 長谷川武亮氏
有限会社TKC 代表取締役 高橋正人氏
アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹


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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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