高橋正人「ユーザーの声なき健全化」

2015.11.05 / 連載

【水曜】高橋正人のパチンコ運用リアル養成講座

[第73回]ユーザー無視の健全化は成功するか

さて、いよいよ11月突入となった。この2015年の11月には大きな出来事が3つある。その1つは【東京都・金賞品の価格を値上げ】であり、もう1つは【機構調査の終了月】だ。実はもう1つあって、それは「日工組・第二段階」問題と言うのもあるが、こればっかりは現状、確定事案ではない上に、詳細において不明瞭な点が多いので、現状ではコメントは控えたいと思う。そんな11月の中から、今回は【東京都・金賞品の価格を値上げ】に触れてみたいと思う。

■「値上げ」とは・・・
当然ながら交換率のダウンである。そして、その賞品提供価格の「下限値設定」となる訳である。以前の提供価格は、「0.1g金賞品が250玉=1,000円」「0.3g金賞品が375玉=1,500円」「1.0g金賞品が1,250玉=5,500円」。それが11月2日以降は、「0.1g金賞品が280玉=1,120円」「0.3g金賞品が420玉=1,680円」「1.0g金賞品が1,540玉=6,160円」を下限金額とする。すなわち、「12%の値上げ」であり、分岐割数は仕入経費を無視すると11.2割となる。

■その大義とは何か?
その旗は健全化であり、「適切な賞品提供の徹底」である。意地悪な言い方をすると適切でなかったと言う事になる。では、そこにある「適切とは何か?」の問題点であるが、一旦整理しておくと「仕入金額+仕入経費よりも、賞品提供価格が低い」と言う、極端に言うならばダンピングをうかがわせる提供方法が適切ではなく、健全営業に問題がある。・・・となる。

しかし健全化には、いわゆる「釘問題」が裏にあり「一般入賞口問題」もある。それを解決(=実現=一般入賞口に入る=BY値3%以上)するには、如何せん営業粗利が下がると言う現実、もしくは『スタート値を下げる』と言う現実が待っている。それらを解決するには、「交換率変更(賞品値上げ)は渡りに船」なのかもしれない。これにより、「賞品提供」「一般入賞口問題」「粗利確保」の問題が、3点セットで解決出来る事になる。

■果たしてそれが好結果となるのか?
基本的には「ならない!」と言うのが私の見解である。いくつかの理由はあるが、その1つに「顧客無視している思考」がある。つまり、全て「ホール側の都合」を解決するためであって、顧客を増やす根拠は全く感じれないその場しのぎである。せめて本気でやるならば「30玉・6枚」が必須条件であると思う。そうなれば出玉率=100%営業も可能となる訳で、お客側からみたら、打った玉(メダル)の実数が戻ってくるのだから、持ち玉で遊技続行する価値も見いだせるモノである。

更に、東京と言う地域性を考えるならば、「県境近隣」の動向は最も気になるところである。某県では「1年以上も28玉・5.6枚」を下限として全てのホールが対応していたが、県外ホールが「完全等価」による営業を試みたところ、周辺の顧客はゴッソリその店舗に行ってしまった。そして結果は、「等価やむなし」となり、近隣店舗は完全等価営業に戻している現実もある。東京周辺の県では【千葉】【埼玉】【山梨】【神奈川】の4県があるが、少なくとも「同時に追従する」事は無いであろう。それよりも『しばらく経過を注視する』と言う事になるが、何を注視するのか?それは「お客様の動向」になるであろう。

■最大の問題は「貯玉清算」
1玉の価値は、「先月は4円」だったものが、突然「1玉=3.57円」なるのである。昨月は2,500玉の貯玉は1万円になったが、8,928円になっちゃった訳である。さすがにそれは「顧客の資産損失」になる訳で、持っている株の資産価値が12%下がった話とは全く異なり、それをもって「顧客の信頼を得る」なんて、どう考えればなるのだろうか?

だから10月告知して貯玉清算してもらったことについても、「決まった以上仕方ない」のは分かっているが、顧客に対して「損したくなければ清算しろ」と言う上から目線に思われるだろうし、清算して二度と貯玉しない事に繋がる。無論、「貯玉リピート率が高い」と言われる「低玉貸し営業」は、その稼働損失は目に見え難い判断となる事は必至である。また、それらを補う為には、「11月初週の入替」は必須となる訳で、そこに掛かる投資予算もバカにならない上に、投資できなければ、それは即稼働ダウンに繋がる事も、これから知る事となるであろう。

<追記>
いずれいせよ、今後も【健全化】への道は進まねばならないし、行政側もそれを望んでいるだろう。そこには様々な方法・手順があるだろうし、考えねばならない。しかし「行政の責任にするような言い訳」であったり、「誰かのせいにする様な言い訳」は、顧客ファンには通用しない事を、まずは把握して欲しいと願う。今回の交換率変更も一概に悪い事だとは私も思っていない。しかし、ファンを無視する様な押し付けでは無く、対話できるような環境から、次の施策を考えて頂きたいものである。

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高橋正人

パチンコ業界歴30年の大ベテラン。ホールや機械について、すべてを知り尽くしたコンサルタント。現在、有限会社トータル・ノウ・コネクションズ代表取締役社長、株式会社エル・イー・オー代表取締役社長。

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