遊技中に失禁した認知症のお客さん

2019.12.11 / コラム

高齢化社会と認知症問題は切っても切り離せない。一昔までは高齢者が自動車免許を持っていることが少なかったので、表立つことはなかったが、頻発するお年寄りが運転する自動車事故は、アクセルとブレーキの踏み間違いによるケースが多く、自動車メーカー各社はその対策車を発売している。

高齢者依存のパチンコ業界もこの認知症問題は身近な出来事になっている。以前のエントリーで認知症のお客さんが自分の打っていた台が分からなくなって、他人の台を打っていた、という事例を取り上げたことがある。

栃木県のホールでもこれと同じことが起こった。農家の仕事は息子さんに任せている80代のおじいちゃんは、昔から毎日のように来る常連さんだ。今でも軽トラを自分で運転してホールに来て1パチを打っている。

客が最初におじいちゃんの異変に気付いた。トイレへ行くのに席を立ち、戻ってきたら自分が打っていた台を忘れ、店内をウロウロすることが増えた。そのことを店長に伝えると、店長は家族に異変を知らせた。

その一件があって、毎日来ていたおじいちゃんが姿を見せなくなった。

2カ月ほど経っておじいちゃんがひょっこりと現れた。息子さんの奥さんを伴って。

奥さんはこの間の事情を店長に話した。

家族も認知症を疑っていて、店長から電話をもらって病院へ連れて行く決心がついた。診察の結果は初期の認知症だった。

医者に大好きなパチンコをさせるべきかどうかを相談した。

医者は「頭の活性化には色々な刺激があった方がいい。家に閉じこもる方が進行も進む。デイサービスでもパチンコやカジノで脳の刺激をしているので行かせなさい」とホール通いを勧めた。

そんな事情で連れてきたが、「ホールで迷惑でなければ遊ばせて欲しい」というお願いだった。

店長はそのお願いを快諾したのは言うまでもない。

軽トラの運転は認知症では危ないので、カギを隠して、奥さんが送り迎えをすることにした。

こうして、再びおじいちゃんはホールに通うようになったが、認知症の進行は続く。1年後、おじいちゃんは自分で軽トラを運転していると思い込んでいるので、帰るときに駐車場で自分の軽トラを探すようになった。

この程度ならさほどの迷惑ではなかったが、遊技中に失禁して布地の椅子までが濡れてしまった。椅子をそっくり替えることにした。

家族はおじいちゃんにオムツを履かせようとするが嫌がるらしい。ホールでも大人用オムツを用意しなければならないか、と思い始めている。

遊技中にお年寄りが倒れて救急車を呼ぶことは珍しいことでもないが、こんな光景はどこのホールでも起きうる。着替えの用意も必要になる時代になって行く。






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