業界復活のキーワードは「パチンコがカッコいい」

2019.12.09 / コラム

パチンコメーカーに基板関係の電子部品を納入しているメーカーの関係者が、地元の同級生が集まった飲み会で、パチンコ業界の話を始めた。

「昔はパチンコメーカー担当の営業はウチでは花形だった。今は売り上げはピーク時の半分にまで落ち込んでいる。買ってくれる量が減っているにも関わらず、『もっと安くしてくれ』と無理な注文を言ってくる。冗談で『部品止めてやろうか』という話になったけど、他でも手当てできる部品なのでそれはできないけど…」

財務部ではシンクタンクからパチンコ業界のレポートを買っている。それによると業界天気予報は「雨」。

業界内では業績が落ち込む理由を「等価交換」、「機械代高騰」、「出玉規制」などを挙げるが、レポートの分析では、ユーザー視点から「パチンコはダサい」ということを指摘している。特に若年層ほどその傾向が強く、カッコいいと思う要素がない。だからパチンコには興味を示さない。

ケータイの流行を見れば参考になる。

ケータイが普及し始めた90年初頭はストレートタイプの機種が主流だったが、99年にNECが二つ折りのNシリーズを発売すると、それがカッコいいとなり爆発的に売れた。2000年代に入ると各社が二つ折りを発売し、あっと言う間にケータイ市場を二つ折りが席巻した。

2007年に発売されたiPhoneをきっかけに時代はスマホ時代に突入。次はiPhoneを持つことがカッコいいとなり、二つ折りケータイはガラケーとも呼ばれ、持つことがカッコ悪くなった。日本人は特にiPhoneを持つことがカッコいい、と思う人が多いのでスマホのシェア率は66%がiPhoneという異常な高さを誇っている。



初期のアンドロイドは性能が劣る中、iPhoneのほうが優れていることもあり、周りがiPhoneを持つようになると、同じものを持ちたがる日本人の特性がiPhone大国へと押し上げていった。

ケータイ市場はストレートタイプ→二つ折り→スマホと進化しているのに、パチンコ業界はフィーバーの登場から40年近くも進化が止まっている。

「業界が儲かっている頃は建物の豪華さや奇抜なデザインを競ったが、建物で集客できる時代ではない。パチンコをやること自体がカッコいいと思われるようにしなければならない。パチンコ復活のキーワードは『カッコいい』。ガラケーからiPhoneのような変化がないと若者には支持されない。今のパチンコ業界は巣鴨の赤いパンツを売るマルジのような商売をしている。年寄り相手の商売から脱却しなければ、若者は寄り付かない」とはこの飲み会に参加していた業界関係者の感想。

さらに飲み会の参加者から「パチンコをやりたくてもおカネがない」というのが一致した意見。この20年間以上、デフレと共にサラリーマンの給料は上がっていない。

「今のパチンコが勝てる、勝てないの前に先立つものがない。1パチでも1000円取り戻すのも大変。1パチで負けても飲み代を我慢しなければなくなる」

サラリーマンの少ない小遣いで、そりゃ、おカネのかかるパチンコは打ちたくても打てない。それが2000万人がパチンコホールから消えた理由だろう。

パチンコ復活のキーワードは「パチンコがカッコいい」。業界はこれをどう料理するかだが、案外パチンコとは門外漢のところから新しい発想は生まれるものだ。










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